
リンボウ先生のキッチン
英国のお菓子
1・ルバーブジャム
2・ショートブレッド
3・サマープディング
4・ブレッド・ン・カスタード
1.ルバーブジャム
この詳細については、前述の「イギリスはおいしい」に譲って、そっちをご参看願いたい
のだが、ここでは簡単に(とはいえ、むろんちゃんとできるように)述べます。
{材料}
ルバーブ
白砂糖
ショウガ
レモン
ルバーブはまず、外側のあまりに筋ばった汚いところはひと皮むいて、ザク切りに切って
おく。そのルバーブをホーローの鍋に入れ、白砂糖、おろしショウガ(これは日本人の好
みからいうと入れないほうがおいしく感じられるかも知れぬ。少なくとも私は好かないが、
イギリス人はこのジンジャー風味を好むのだね、不思議なことに)、レモンを入れる。
これを、直接火にかけないで、「火の脇においてゆっくりゆっくり煮る」のがポイントで
ある(とイギリスの料理本に書いてある)。けれども、暖炉の装置のない日本ではこの理
想的な煮方は困難だろうから、ガスの火で煮ることにするけれど、弱火にするということ
をきっと忘れないでください。
ルバーブジャムは、きわめて上品な色と味わいをもつ、上等なジャムであるのに、どうい
うわけか現代イギリス人はあまり作らないようだ。しかし、私としてはもっとも愛好する
ジャムの一つにほかならない。


2・ショートブレッド
ショートブレッドについては拙著「ホルムヘッドのなぞ」に詳細に述べてある
ので、この作り方を知りたいという向きは、ぜひ本屋へ足を運び、一冊お買い
求めいただきたい。しかし、それではあまりに姑息な著者と思われるのも遺憾
なゆえ、少々端折ったダイジェスト版をお目に掛ける。
いや、なに、これでもまったく不都合はないのである。
{材料}
砂糖=100グラム
バター=200グラム(無塩バターはいけない。普通の有塩バターのみ可)
薄力粉=300グラム
(ベーキングパウダー入りの薄力粉"セルフレイジングフラワー"があればなお
よろしい。この場合はレイジングパウダーは不要)
ベーキングパウダー=茶匙1杯
まず、砂糖も粉もベーキングパウダーもいっぺんにボウルに入れ、スプーン等
でザッザッと混ぜる。次によく冷やしておいたバターをナイフで小さく切り、
粉の中に落としてから指先で、力をいれてよくこなす。
バターが次第にフレーク状にこなれたら、平らなボード等の上にあけ、よくニ
ードする。端的にいえばまあ、こねるわけですが、簡単にいうと、掌でぐいっ
とのばしては二つに折り、またぐいっとのばす動作を繰り返すわけです。ただ
し、右の分量では、パラパラ、カサカサという感じで「これが果たしてうまく
固まるだろうか・・・」と懐疑の念にとらわれるに違いない。しかし、信じて、
ともかく熱心にニードすべし。必ずや、夜明けはやって来る。とはいえ、パン
を作るわけではないので、こねくりまわしてはいけない。
ショートブレッドの場合は、少なくとも1分以上ニードする。するとバターが溶
けて砂糖の粘りの合わさって、全体が耳たぶのようなねっとりした生地になる
であろう。経験上、こうなるまでには、バターの温度、手の温かさ、室温にもよ
るが、まず3分くらいはかかるだろう。(このニードという動作に関してはまた
拙著「イギリスはおいしい」の“釣魚大全荘の昼下がり”に述べた「スコンの
作り方」を参照してください。)
かくて生地が耳たぶほどの固さになったら、今度はその生地を大きな玉っこ
ろにペタペタっと丸めます。
では焼こう。
まず、バターをまんべんなく塗りつけた上に、軽く粉をふったパイ型の中に
この生地のボウルを入れて、1センチくらいの厚さになるまで、手で平らに
伸ばす。そして全体にフォークで穴をしっかりと開け、オーヴンに入れて、
170度で15分、その後150度で15分ということになっているのである。
ただし、オーヴンによっては一定ではないので、この時間はだいだいの
目安とお考えいただきたい。
生地の厚さによっても焼き時間は違ってくるわけであるが、およそのところ
「5ミリについて15分」とこうお考えください。
さて、無事焼き上がったが、ここで出してはいけない。
10分ほど、オーヴンの中の余熱でじっくりとさます。こんなところにちょっと
した秘訣があるのでしょう。じりじりと我慢のできないくらいの時間がたった
と思われる頃(実際は10分ですよ)、オーヴンから出し、すぐさまナイフの
背で軽く押して、放射状に8等分ほどの筋を入れる。
気をもたせる美女のごとく、ここまで終えてもまだ食べられないところがミソ
なのである。この状態ではなにせフニャフニャであるからして、このあと室温
で2時間(!)ほどかけてゆっくりさますのである。そこではじめてサクッとし
た、あのショートブレッド独特の「黄金の歯ざわり」が生まれるのである、
お分かりですね。
3・サマープディング
こりゃまた簡単なお菓子で、しかも、とりわけ夏の暑い時には冷たくて爽やかで誰にも
好まれる。
{材料}
l 食パン半斤 (サンドイッチ用スライス、耳は取っておく)
l 赤いフルーツ各種(ストロベリー、ラズベリー、ローガンベリー、赤スグリ、黒スグリなど、
l いずれも缶詰でよい)675グラム
l グラニュー糖100グラム
まず、750cc入り程度のボウルを用意する。耳を取ったパンの形を包丁で切り整え、そうで
すね恰も地球儀でも貼り合せるように、ボウルの内側になにかこうぴったりと貼り込む感じで
隙間なく並べる、分かりますか。
いっぽう、果物のほうは右記のうち3種類くらいをソースパンにざっとあけて、そのまま火に
かける。その際、砂糖もいっぺんに入れちまう、と、そうそう缶詰のシロップもここへ一緒に
入れてしまうわけです。もし缶詰じゃなくて生の果実だったら砂糖を倍くらい入れてよいので
すよ。
これで準備は完了。まず煮たフルーツのシロップを大さじ4−5杯くらい別にとって、それは
それで冷蔵庫に入れておくことを忘れずに。これは後に、色つきが十分でないところに色を
つけるための用意です。
ここにボウルの内側をすっかりパンでおおった「容器」がありますね。ここにこの煮たフル
ーツをざっとあける。シロップも全部入れてしまう。それから、さらに上にパンで蓋をし、そ
の上からお皿を被せるなどして軽く重しをしておくというわけです。
そこからが気の長いイギリス流だと思うのだが、そのボウルにラップをかけて冷蔵庫に入れ、
静かに8時間(!)以上置く。つまり、作ったその日に食べるのじゃなくって、前の日に作って
おいて、翌日の昼に食べるとか、そういうペースでなくちゃいけない。
ゼラチンもなにも入れなくとも、果物には天然のペクチンが含まれ、なおかつパンの粘着力
もあずかって、これが自然と固まって崩れないので不思議です。充分に寝かせ冷やしての
ち、冷蔵庫から取り出し、大きな美しい皿の上でボウルを静かにひっくり返す。すると目も
鮮やかな紅の半球形プディングができている。もしこのときに色つきが不十分でなおパンの
白いところが残っていたら、かねて用意の別置シロップを刷毛で塗って、全部等しく赤い色
にするというのが秘訣です。
食べるときは大きなスプーンなどでぐいっと掬って小皿に盛りわけ、真っ白な生クリーム(た
だし甘くない)をかけて食べるのが、これまた夏のイギリスの風物詩ともいうべきもので・・・。
4・ブレッド・ン・カスタード
パンとカスタードクリームを使った、おやつ用のお菓子である。カスタードクリームは
本式につくるとたいへん面倒くさいものなので、ここはひとつ、イギリスのバードとい
うメーカーの“カスタードパウダー”を使用し、簡単にイングリッシュ・カスタードソース
を作ることにしたい。これは缶入りのと箱入りのとあるけれど、たぶん日本でも売って
いる筈と思います。はたしてこれがカスタードのあの黄色いソースになるんだろうか、
と怪しまれるようなピンキッシュオレンジ色の粉末である。
{材料}
l パン・一人あたりサンドイッチ用に薄く切った食パン一枚分
l 牛乳・約500cc
l カスタードパウダー大さじ2杯
l バター、サラダ油、干しブドウ適宜
ボウルにカスタードの素の粉末をそれぞれ大さじ2杯くらいずつ入れる。甘さは各人
の好みに従うけれど、概して甘味は極く軽いのがイギリス式の本格であることを肝に
銘じて頂きたい。しかし、この最初に粉末を少しの牛乳で溶く時だけは、どういうわけ
か砂糖を入れないというまく溶けてくれないのである。つまり、粉末と牛乳だけをいく
らかきまぜても、変にコキコキした感じで容易に混ざらないのが、砂糖をいれたとたん
やわやわと溶けるのを見ると、たいへんミステリアスなものがあります。どうでもよい
けれど・・・。
これがよく溶けたなら、残っている牛乳のほうに戻してやる。これをたえずかきまわし
ながら弱い火でよく煮る。この際、カスタードの中に干しブドウを入れて、一緒に煮て
おくことにしよう(つまり干しブドウが柔らかくなるように)。ゴトゴトしたクリームになら
ぬように、少し薄めのトロトロのカスタードクリームが望ましいでしょう。
これが出来上がる頃を見計らい、パンにとりかかる。食パンを耳のついたまま、一口
サンドイッチくらいの大きさ、つまり1枚を6等分したものに切りそろえておく。そこで
フライパンに同量のバターとサラダ油を入れて、弱い火で溶かす。パンが油を吸うの
で多めに入れるべし。フライパンにパンをパッパッと素早く置き、焦がさぬように、両
面が狐色になるまで弱い火で、こんがりと焼くのであります。
きれいなお皿に一人6切れ(1枚分ですね)を並べ、上から件の干しブドウ入りカスタ
ードソースをかける。好みによって、軽くシナモンやナツメグをかけてもよい。あった
かくて、ほんのり甘くて、しかもこの上なく簡単に出来て、おいしいお菓子です。
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