2 海中で活動するには
近代の潜水艦は海中で三次元を自由に行動出来なければならない、
そのためには次の条件を満たすことが原則的に必要になる。
@ 洋上から海中へ、また洋上へと、潜行、浮上の操作が確実に繰
り返し可能であること。
A 海面下の水圧に耐ええる構造であること。
B 水中操縦性の安定、すなわち海中で変針、変速、変深が容易に
出来ること。
C 感覚、いわゆる聞く話すなどの情報通信、海中より洋上を観測
するの手段(潜望鏡)を持つこと。
D 攻撃、防御の手段を持つこと。
これらの要目を相互に満足させるために、洋上を行動する通常の艦
艇と比べ、艦型は局限され、結局予備浮力は小さく、機構は多様かつ
複雑になっている。
潜水艦の最大の武器はご存知の魚雷であり、これをもって敵の水上
艦艇を攻撃し戦果を挙げることを主任務とするが、其の戦法は水中深
く潜航し隠密裏にして、敵の不意を突くことである。そのために潜水
艦は水上艦艇とは全く異なった動きを強いられる。
それは、飛行機が上昇、下降運動をするが如く、潜水艦も水中深く
潜行したり、また浮上出来る運動性を持つことで、まさに此れ3次元
の行動である。これは、水上艦艇では絶対に真似できない、潜水艦だ
けのお家芸なのだ。
三次元運動するものには飛行機があるが、これらは翼に生じる揚力
により上昇、下降を行うが、潜水艦の場合は艦内のタンクに、海水を
注排水することで生じる沈力(重力)浮力を利用し、潜航や浮上の運動
をするのである。これが両者の違いであるが、さらに飛行機はよほど
の高空を飛ばない限り圧力に左右される事はない、しかし、潜水艦に
おいては、この圧力、即ち潜航中の船体にかかって来る水圧が大きな
問題になってくる、これが飛行機と潜水艦の大いに異なる点である。
而して、この水圧の大きさは如何なるものか例にとれば、潜水艦が
水深100mの海中で、潜航時にうける水圧は、1平方mあたり実に100t
もの力を受ける事になるのだ。
此の恐るべき水圧に耐えながら、飛行機の如く自由に三次元の運動
をするためには頑丈な船殻が必要である事は勿論、潜航や浮上を容易
にするための、強力な注排水装置及び複雑な操舵装置等が必要になっ
てくる。
水中を自由に行動する潜水艦には、水上艦艇とは異なり多くの舵を
もっている。
まず原則として、大型潜水艦が有する舵は左右運動のための主舵で
ある縦舵が艦尾水面下に、また水上航行の時は水面上に出ている上部
縦舵という補助舵が各1枚、上下運動のための横舵が艦尾両舷に各1
枚、潜航時に使う潜舵が艦首両舷に各1枚の、合計6枚の舵をもって
いた。
船体は内殻と外殻の二重構造になっており、この内外殻間は注排水
区画と燃料タンクに充てられ、多くの区画に分かれていた。此の区画
に注排水する事により浮沈運動を行うのであるが、そのため艦内には
各部所に通じる、諸々の配管類と管制装置が艦内ところ狭しと設置さ
れている。又水中を潜航しながら行動する潜水艦に於いては、水上艦
艇と違い、艦橋などの外部構造物が水の抵抗を受けることから、その
対策として艦外の突出物は最小限とどめ、艦橋の流線型化などのよう
に、極力抵抗の減少が求められた。