Last Up Date 2003/02/10
第5章 小説
第3条 主題・題材・題名
第1項 主題・テーマ・中心思想

 始める前に。これまで書いてきたこと──特に文章に関することは、「テクニカル」な部分です。しかし、この主題(テー マ)に関しては、「メンタル」な部分があります。それは主題が小説の根幹をなすものであり、「自分自身の表現」を表していることでもあるからです。つま り、「主題」=「自分」でもあります。
 では、まず「主題」とは何であるか、そこから考えていきましょう。「主題」とは文章の主軸、芯となるものです。主題なき文章は文章とは言えません。それ は、ただの文字の羅列にすぎません。「主題」があって始めて文章と言えるのです。「始めに主題ありき」ですかね(苦笑)。

 主題とは、その文章で伝えたいことなのです。これは小説だけに限りません。論文であろうと新聞であろうと落書きであろ うとも、それは変わりません(著者に伝達の意志がある限り)。『「超」文章法』でも、その重要性を訴え、「メッセージは8割の重要性を持つ」と書いていま す。このメッセージこそが、ここでいう「主題・テーマ」です。

 とかく、人は他人から影響というものを受けやすい。
 それは社会の中で人と接する限り、仕方ありません。自分一人で生きているわけではなく、他人に依存・共存しているから。 しかし、他人をま ねる、もしくは模倣[もほう]するというのはどうでしょう。平たく言えば、パクリ≠ナしょうか。そういったものについて、少し。
 その前に、私のなりの『影響』と『模倣』を述べたいと思います。
 『影響』とは、自分以外の言動・思想・理念、あるいは社会の動向を受けて、それを自分なり≠フ解釈・理解し、自分のものとした上で表現し たもの。他人のものを基礎としながらも、そこから新しい、自分だけの発展を見せているもの、と言えます。言い換えれば、スーパーで材料を買って、レシピを 見ながらも、自分の好きな味付けにした料理と似ていますね。
 『模倣』とは、自分以外のものをそのまま切り貼りしただけのものを表現したもの。言い換えれば、スクラップを自分の作品だ、と言っているの と同じです。
 例を挙げれば、『影響』とは日本における中国・朝鮮ですね。古代では、これらの国の影響を受けて文化や政治が成り立ち、それを国風文化以 降、日本的なものに変化させて自分の中に組み込んでいきました。振り袖や箸などは、まさに中国からのものです。一方、『模倣』とは日本における欧米──特 に米国──です。明治以降──特に戦後──、日本は欧米の技術を取り入れて発展してきました。ですが、明治・大正は欧州、戦後は米国至上主義と言うべきで しょうか、ヨーロッパ・米国のものはすべて良いという風潮がありました。明治・大正期は日本風に変化させましたが、戦後はそのままアメリカ文化を日本に組 んでいきます。簡単に言えば、猿まねです。
 『模倣』自体はさして悪いことではありません。絵や音楽、映画、あるいは小説、これらは様々な人の作品を模倣して、その中から自分らし い″品を創るモトを発見することができるのですから。
 一番やってはいけないことは、他人の作品をただ切り貼りしただけの作品です。確かに、完全なオリジナルというのは至難の技に近い。ですが、 自分らしさ≠フ見えない作品を自分の作品≠ニ呼べるのでしょうか。猿まねの作品では、誰も何もそこから感じることはありません。
 絵でも音楽でも小説でも、猿まねの作品で上手[うま]く見せることも、面白く見せかけることもできます。それで多少の評価を得られるかも知 れません。しかし、そこに何が残るというのでしょうか。
 芸術の根本たる『創造』に反する行為だと、私は思っています。
 練習や向上という意味で、『模倣』というのはいいでしょう。ゼロから創り出すことは神さま≠ュらいにしかできはしません。ですが、完成 した作品≠ナ『模倣』をするべきではありません。
 言い忘れていたが、ここで言う『模倣』はものまねやパロディーとは意味合いが違います。しかし、たとえ、ものまねやパロディーでもここで言 うことは適用するはずだと、私は信じています。
 最後に一言。
 作家を目指す方々へ。あなた方が本気で作家を目指すなら、文章の書き方を学び、小説とは何かを感じ取り、『創作』とは何かを理解すべきで す。そうすれば、その辺にいる名前だけの作家よりも素晴らしい作家になるはずである。決して、ネット作家であっても、職業作家には負けませんから。
 ……ホント、最近はウソ作家が多くて(愚痴です)。

 これは私が書いたエッセイ「模倣と影響」です。本当は小説の方がいいのですが、世に出ている小説では読んでいない方が いますし、自分の小説でもいいのですが、私のスタンスとして自分の小説に関して「テーマ」を言わないことにしていますので。

 では、このエッセイは何が言いたいのか。「模倣と影響」です(苦笑)。いえ、そのままなので。もう少し詳しく言えば、 「創作における模倣と影響の違い」というのが言いたいこと(テーマ)です。そのテーマにのっとって文章が構成されています。
 そのテーマを描くために、最初に「とかく、人は他人から影響というものを受けやすい」という命題を出しています。これを読んだ人に、「人は影響を受けや すいのに、オリジナリティーなんてあるの?」という疑問を持たせようとしています。
 次に、「影響」と「模倣」の提起をし、模倣と影響がまったく異なる次元であることを明らかにしています。そして、具体的な例として「日本の文化」の影響 と模倣を挙げています。
 さらに、反論であろうことに対して、「模倣」自体は悪いことではない、問題なのは模倣をオリジナルだと謳うことだ、と言っています。
 結論で、完全な創作は難しいが、それでも「自分」を感じさせる作品を創作することはできる、と述べています。

 ここで一貫して主張しているのは、「模倣と影響」というテーマです。それはこのエッセイのどこを切っても現れてきま す。まさに文章のDNAというべきものです。もちろん、直接的表現と間接的表現の違いはありますが、小説もどこを切り取ってもDNAが存在するはずです。
 小説がいまだに『本』という形で残っているのは、この「主題」が人によって違うからではありません。科学的にテーマを検証していくと、実は同じ「テー マ」を扱っている作品は多いです。

 では、何が違うのでしょうか。言っておきますが、次に述べる「題材」でもありません。また、「テーマ」と「モチーフ」 の組み合わせでも。違うのは、テーマをどう見るか、どう結論づけるか、その判断の違いなのです。
 たとえば、「愛とは何であるか」というテーマがあるとします。そうすると、「素晴らしいもの」「相手を信じること」「守り抜くこと」「そんなものはな い」「裏切られるもの」と、様々な意見が出ますよね(苦笑)。でも、どれが正しいかなんて分かりません。だって、答えは一人一人違うのですから。ですか ら、恋愛ものって今でも人気があるのですが。
 ですから、よりよい作品を書きたいと願うなら「考える」ことです。あるテーマに対してステロタイプの答えでは、ハッキリ言って面白くありません。
 一つ例を出せば、近年問題になっている「命とは?」というのがありますよね。青少年犯罪でかなり問題視されています。仮に「命」をテーマに小説を書くと します。そこで「命とは尊いもの」「命は大切」「命を大事に」「命を殺してはいけない」など、そういったステロタイプをもとに書いても、ハッキリ言って説 教です。それも根拠のない。バカな大人が言う言葉です、本当に(苦笑)。
 もちろん、検証した結果、そういう結論に達しても問題ありません。考えた場合とステロタイプでは、完全に結論へ至る過程が違いますから。識者がよく上記 の言葉を口にしますが、それは一体どんなことを根拠にしているのか聞いたことがありません。根拠のない理論は学問の分野では、まったく意味がないというの に(彼らはそれを知っているはずです)。しかし、根拠のある言葉はどんなものでも説得力を持ちます。
 私は「命とは尊いものではない」と思っています。人間であろうと動物であろうと虫であろうと、同じ命の価値しかないと。どれも価値なんてありません。価 値があるとしたら、自分が望む自分にどれだけ近付いたか、付加的に、他人にどう評価されているか、です。自分が自分を良いと思えなければ、自分自身が価値 を認められませんし、その上で他人が認めなければ社会的に価値はありません。要するに「自分がどうあるか」ってことです、命の価値って。ですから、命=尊 いにはならないのです。
 人によっては「哲学」が必要と言いますが、「考えること」が哲学というならそうなのかも知れません。

 ちなみに、普通、作家は読者に対し(というか、誰に対しても)、「テーマ」が何であるか言いません。それはテーマは読 者が見つけだすものであり、たとえ、それが作家の考えるのと違うものであっても、それが読者自身が見つけた「答え」ならば間違いではないのです(もちろ ん、そうでないと考えている作家もいますが)。
 物事において白黒をつけられることや解答が一つしかないというのは、ほとんどありませんから。本来、それを教えるのが国語の役割の一つなんですが……文 章講読はハッキリ言って答えを求めますから、ねえ(苦笑)。
 テーマは自分で見つける。それが小説の面白みの一つかも知れません。

*このページに書かれていることは、壬桜華の私見であり、必ずし も絶対とは言えません。
最終的には、ご自身で判断してください。


次のページへ

トップページへ

Copyright(C)2002, Kankodorido All Rights Reserved.