Last Up Date 2003/02/19
第6章 世界観
第2条 世界の構成要素
第1項 民族

 社会において人間がいなければ始まりません。それで、その人間なのですが、面白いもので、同人種、同国民、同民族、同 郷人と共通するものがあると、いやに親しげになります。だから今、バルカン半島や中央アジア、中東、アフリカなどで紛争が絶えないわけなんですが。いくら 自由のアメリカって言っても、チャイナタウンとかリトルトーキョーとかハーレムみたいに同人種、同民族が集まるのと同じです。

 民族とは何か。意外に難しい問題です。たとえば、人種ならハッキリします。私達東洋人は黄色人種──もうちょっと言え ば、モンゴロイドです。中東・ヨーロッパ人はラテン系、スラブ系、ゲルマン系、セム系、ハム系などと分かれていますが、基本的には白色人種──コーカソイ ドとくくられます。アフリカ人は黒色人種──ネグロイドに分類されます。
 同じような分け方に「語族」というものがあります。たとえば、英語を母国語にしている人々はどんな人種・国民であれ、同じ英語圏の語族として扱われます (白人だろうと黒人だろうと)。
 しかし、民族は違います。区分の仕方としては、習俗を同じにする人種と規定されているそうです。でも、これも正式には正しいとは言えません。三省堂国語 事典には、

【民族】(名) 同じ言語・宗教をもつ、〔多くは〕同じ人種の集まり。

とあります。これは正しくて間違いなんですよ。先程挙げたバルカン半島の国々は民族が違うことで争っているわけです。し かし、彼等は同じスラブ系で(実際は印欧系もいるのですが。セルビアとアルバニアの争いもそれが一因だったりします)、東方正教会なわけで、しかも言語も 同じはずです。いや、細かく分類すれば宗教は違うんですけれど。何が違うと言えば、細かく分類された民俗宗教的正教なのです。
 それに現在、多くのハーフやクォータがいます。彼等を民族で分類することも難しいですし。

 民族というものはひどく曖昧です。ではなぜ、その曖昧な「民族」を構成要素の一つに入れるのか。
 一つ例に、ユダヤ民族を挙げましょう。現在(2003年現在)、パレスチナが問題になっていますね。あれ、何が問題かと言えば、随分因縁があります。
 話は遡ること紀元前16世紀頃、ヘブライ人(イスラエル人、つまりユダヤ人)はパレスチナ地方に定住していました。しかし、一部は豊かさを求め、エジプ トへと渡りました。しかし、エジプトは彼等に圧制を敷き、前13世紀、モーゼに率いられてエジプトを脱出しました。これがユダヤ教・キリスト教に出てくる (旧約聖書に載っている)「出エジプト(エクソダス)」です。
 その後、前11世紀にはパレスチナにヘブライ王国を建国し、有名なダビデとソロモン王が登場します。しかし、その王国はソロモン王の死によって南北に分 裂してしまいました。北はイスラエル王国に、南はユダ王国になるわけです。
 ですが、そのイスラエルは前722年にアッシリアに滅ぼされ、ユダも前586年に新バビロニアに滅ぼされます。この時、ユダヤ人はバビロニアに連れて行 かれます。世に言う「バビロン捕囚」です。のち、バビロニアがアケメネス朝に滅ぼされると、ユダヤ人達は帰国を許されます。
 これでめでたしと思いきや、アレクサンドロス大王率いるマケドニアに征服され、その後、ローマ帝国に支配されます。この時代に、キリスト教が成立するわ けですが、気にしないことにしましょう。これによってユダヤ人は次第に各地へ分散していきます。
 時代は中世に入って、ユダヤ人はキリスト教が嫌う商業に従事し始めます。面白いことなんですが、当時のキリスト教は人が作ったものを別の人へ売る、つま り、流通産業や金融業を忌むべきものと考えていました。ですから、その禁忌のないユダヤ人が入り込めたわけです。
 ここからが凄いんです。そういうわけで各地に散らばり始めたユダヤ人ですが、キリスト教との対立や利益問題、差別問題で至るところで差別され始めます。 中世・近代のユダヤ人差別を調べたらきりがありません。一番有名なのが、第2次世界大戦時のユダヤ人大量虐殺(ホロコースト)でしょう。これがある意味 で、パレスチナ問題のきっかけとなります。
 大戦終了後、ユダヤ人はイギリスと秘密裏にかわしていた条約がありました。それはパレスチナをユダヤ人居住区にすることを確約したものです。また、アメ リカの援助もあり、彼等はパレスチナに移住しました。
 しかし、それをそれまで居住していたアラブ人が許すはずもなく、ドンパチすることになってしまいました。それが大戦後、何度となく繰り返されてきたパレ スチナ紛争です。

 話は長くなりましたが、なぜ、民族が構成要素の一つか。それはユダヤ民族の例のように、さまざまな歴史の変遷を辿って おり、重要なファクターでもあるからです。また、個人でも大富豪と呼ばれる人々の多くはユダヤ人ですし、彼のアインシュタインもまたユダヤ人でした。意外 に、ヨーロッパの歴史においてユダヤ人は各所に出てきます。そんなこともあり、民族は重要な要素なのです。
 それに最近の紛争は民族問題ですしね。ホント、民族ってのは曖昧なくせに洒落にならないんです。

 他にも民族が歴史に影響を与えた例として、ゲルマン民族の大移動があります。この大移動によってローマ帝国にゲルマン 民族が多数侵入し、ローマとゲルマンの戦いが起こるわけなんです。しかし、ローマは多くのゲルマン民族の傭兵で軍隊が成り立っており、それではローマは勝 てるはずもなく、西ローマ帝国は滅びるのは必然です。
 ここで面白いのがイスラム帝国。なぜ面白いかと言えば、彼等は宗教と言語で結びついていたため、民族差別が少なかったのです。確かに、アラブ帝国(ウマ イヤ朝)はアラブ人と非アラブ人イスラム教徒、非アラブ人非イスラム教徒と区別していましたが、イスラム帝国(アッバース朝)では民族に関わらず、イスラ ム教徒であれば同じ権利を有していました。これは中東の独自性の1つですね。

 このように「民族」は社会のファクターの1つなのです。多くの世界は民族が重要になってきます。多くのファンタジーは その辺を無視して国家のみを考えますが、それは間違いです。もっとも、魔族などの異種族を異民族・異人種のファクターとして考えるなら、話は別ですが。
 近年、『ロード・オブ・ザ・リング』で有名な『指輪物語』ですが、あの物語はこの問題を人間・エルフ・ドワーフ・ホビットという異種族という形で、見事 に解消しています。現在の(ライトノベルズ)ファンタジーは、そのデッドコピーのデッドコピーをしているため、異種族の意味がステータス上の意味でしかな くなってしまいました。これについては、もっと考える必要があります。

*このページに書かれていることは、壬桜華の私見であり、必ずし も絶対とは言えません。
最終的には、ご自身で判断してください。


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