Last Up Date 2002/12/27
第1章 日本語
第1条 日本語の特徴

 まず、文章の書き方を知る前に、その根本である「日本語」を知る必要があります。何事も本当に修練したければ、その精 神と歴史を知る必要がある、と私は思っています。そうして始めて物事を「理解した」と言えるのではないでしょうか。ですから、私たちが日常使っている日本 語は理解しているのではなく、ただ利用しているにすぎないのです。だから、日本人だけでなく、多くの人々が自分の母国語を教えようとすると、経験則でしか 教えられないのでしょう。
 ここでは、大学レベル(国文・日本語・日本文学などの学科レベル)のようなことは言いません。そこまで知る必要もありませんし、知りたければ自分で調べ た方が早いですし。ですから、一般教養レベルでとどめておきましょう。

 では、私たちが普段何気なく使っている日本語とは何か。
 日本の標準語であり、日本で使われている共通言語です……あ、石投げないで(苦笑)。
 日本ではそう感じませんが、他の国では複数の共通語をもっている国があるんです。例えば、インドなどは恐ろしいほどの共通語と地方語があります。簡単に 挙げると、公用語としてヒンディー語、準公用語として英語、その他に憲法公認語(憲法によって地方公用語として認められた地方語)が十七語存在します。カ ナダなども英語とフランス語が公用語ですし。
 そういう意味では、日本は基本言語が一つというのは大変便利なのです。同じ言語を使う人間は意思の疎通が計りやすいですから。現在、世界各地で起きてい る紛争・民族問題の一因は言語が通じない、意思を理解できないことがあります。キリスト圏とイスラム圏の争いは宗教問題とともに、言葉による意思の疎通が できていないことも問題があるのかも知れません。
 また、言語学的に「標準語」と「共通語」という二種類の言語(?)が存在します。日本で言えば、日本語が標準語の役割をなし、俗にいう東京弁が共通語の 役割をなしてます……って言っても分かりませんよね。
 まず、そもそも標準語と共通語とは何なのか、から始めましょう。分からないことがあれば、辞典で調べましょう(笑)。

【標準語】(名)その国の標準として認められる言語。多くは文化・政治の中心地や首府の言語。(『三省堂国語事典』第三版特装版 三省堂 一 九九二年第二十刷)

【標準語】国語の規範として認められる言語。(『旺文社国語事典』改訂新版 旺文社 一九八七年重版)

【標準語】一国の規範となる言語として、公用文や学校・放送・新聞などで広く用いられるもの。日本語では、おおむね東京の中流階級の使う東京 方言に基づくものとされている。(『広辞苑』第五版 岩波書店 一九九八年十一月十一日第五版第一刷)

 と、たいていの辞書はこのような表現になっています。三つの辞書から引用したのには理由があります。こうして見ると、 標準語は「国語(国家)の規範となる言語」であることは理解できるでしょう。それに付属して、首都(東京)の方言が標準語として認定されていることも。
 それを覚えておきながら、先に共通語の意味を調べてみましょう。

【共通語】(名) @全国どこにでも通じることば。A世界のどこの国でも通じることば。(『三省堂国語事典』第三版特装版 三省堂 一九九二 年第二十刷)

【共通語】@国内の広い地域で通じることば。A世界の多くの国々で通じる言語。(『旺文社国語事典』改訂新版 旺文社 一九八七年重版)

【共通語】いくつかの言語や地理的方言をもつ言語社会において、その全域にわたって通用する言語や方言。(『広辞苑』第五版 岩波書店 一九 九八年十一月十一日第五版第一刷)

 どの辞書でも、結局のところ、言いたいことは同じです。共通語とは「ある一定の地域・国家で通用する言語」であること は疑いようがありません。
 日本では、東京弁が標準語であると述べました。それでは、その東京弁とは何なのでhそうか。東京弁とは、博多弁や大阪弁のような方言の一種です。どんな 方言かと言えば、説明が難しいですけれど、およそ「だ」「である」調が東京弁とほぼイコールだと考えて下さい。たぶん、それで間違いないです(なんとも、 いい加減な)。「〜じゃん」「〜じゃない?」「〜だろ」といった言葉遣いも東京弁で、TVなどで使われているフランクな言葉遣いが東京弁と言えるのではな いでしょうか。
 東京弁というものは厄介なもので、おそらく想像している「下町」言葉ではなく、「山の手」言葉のことです。つまり、武士階級の言葉なのです。それについ て少し。江戸時代、参勤交代によって多くの大名が江戸に住むことになり、それと同時に、お付きの武士・従者なども一緒に江戸に来ました。「山の手」という のは、それらの大名屋敷があった場所のことです。そのため、各地の方言が入り混じることとなりました。今でも山の手と言えば、金持ちの土地ですしね。
 つまり、全国の方言が混合したものが「東京弁」です。一般的に日本語と言われているのは、この「東京弁」のことなのです。のち、明治時代に入って全国で 通用する言語が必要となたっため、首都であり、政治機関の集中する東京の方言が「共通語」として選ばれたわけです。
 ここで思い出して下さい。広辞苑で「標準語」の条項を調べると「おおむね東京方言に基づく」とありました。
 では、標準語と共通語は同じじゃないの? 辞書を見る限りでは、同じと取られても仕方がありません。なにせ言語学上でも、この二つの厳密な分類は難しい とされていますから。と言うか、同じだったりするんですよね(苦笑)。いえ、現在の言語学では標準語と共通語は違うというのは通説です。ただ、「標準語」 と「共通語」は「Common Language」の訳語として造語されたもので、初期は同じものとして扱われていたのです。そのせいで、今でも「標準語」と「共通語」の意味が混合して いるわけです。
 それでは、具体的に何が違うのかの説明に入りましょう。
 「標準語」とは理想的言語のこと。つまり、その一定の国家・地域でもっとも理想とされる言語。言い換えれば、実質的には存在しない言語ということ。『国 語学大事典』によると、標準語は理想であり、人為的に造られたものとしています。そのため、標準語には厳しい規範が存在し、その言語の価値を高めるための ものともされています。
 一方、「共通語」は逆に現実的な言語であるとされています。つまり、実際にその地域・国家で全域に通用する言語として使用されている言語のこと。『国語 学大事典』は、共通語は現実であり、自然の状態であるとしています。また、緩い規範が存在し、現実のコミュニケーションの手段である、と書いています。
 ですから、(米国式)英語は世界の「共通語」になりえても、「標準語」にはなりえません。世界各国で通じても、その国の規範にも理想言語にもならないわ けですから。共通語は一種コミュニケーション・ツールである、とも言えるでしょう。

 閑話休題。
 日本語は「漢字」「ひらがな」「カタカナ」「ローマ字」の四種類の語種で構成されています。これは誰もが知るところでしょう。また、日本語の発音は 「あ・い・う」などの五十音の清音──このうち、「あ行」は母音と呼ばれ、「や行とわ」は半母音と呼ばれている。その他は子音と呼ばれている──、「が・ ぎ・ぐ」などの濁音、「ぱ・ぴ・ぷ」などの半濁音、「きゃ・きゅ・きょ」などの拗音〔ようおん〕、「っ」の促音〔そくおん〕、「ん」の撥音〔はつおん〕、 「か゜・き゜・く゜」の鼻濁音(今では、ほとんど意識されていません)、「ー(のばす音)」の長音があります。
 日本語の発音は原則として母音で終わります。「Ka」「Hu」「Ryo」など、すべて「a,i,u,e,o」のどれかで終わります。実際に声に出しても 分かるでしょう。音を伸ばすと、最後に残るのは母音ですから。例外的に「ん」は母音ではありませんが、英語のように子音で終わることは絶対にありません。 日本語は言語学的に調べると、結構面白いらしいのですけれど、その辺りは言語学の人に任せましょう。
 さて、日本語の文法の特徴を並べてみます。しかし、ここに挙げたのは一例だけで、すべてではありません。

(1) 人称による変化がない(例:英「I」─「know」、「she」─「knows」日「私」─「知る」、「彼女」─「知る」)。
(2) 名詞に複数形は存在するが、文法にはまったく影響しない。また、女性名詞・男性名詞の区別がない(フランス語などには女性名詞・男性 名詞が存在する)。
(3) 文末に動詞がきて、全てが決定する(英語のように「I go ……」ではなく、「私は……へ行く」になる)。
(4) 名詞を修飾する語句が名詞の前にくる(「赤い花」のような形)。
(5) 年月日を始めとする時間表示、場所、宛名、姓名は大きい方から書いていく(例:2003年1月1日 山田太郎 東京都千代田区な ど)。
(6) 用言(動詞・形容詞・形容動詞)の活用は簡単であるが、敬語表現が複雑。
(7) 数詞は数名詞で区別し、その読み方は複雑(個、本、回、枚、匹、丁、坪、口、合など)。

 と、このような具合です。日本語はインド=ヨーロッパ系言語(英語、フランス語、ドイツ語、サンスクリット語など)や シナ=チベット系言語(中国語、タイ語、チベット語など)などとはまったく異なった系統言語です。それだけではなく、世界的に見ても日本語は系統不明で独 立した言語だと言われています。こういう状況では、日本人の祖先はどこにあるの、と聞きたくもなりますね(苦笑)。学術的にも言語そのものについても面白 い言語だと思います。
 いろいろ見ても、どうも大陸系とは異なるようです。ちなみに、お隣の朝鮮語(北朝鮮・韓国)も言語としては系統不明で独立しています。 昨今の研究で は、日本語とタミル語(だったかな?)に何か関係があるとか言っているのですが、詳しいことは知りません(笑)。いえ、専門ではないので。
 そう言えば、何が面白いのかを言っていませんでしたね。それは例えば、インド=ヨーロッパ系(印欧系)人種は中央アジアにいたアーリア系人種が起源で す。それが西に移動したのがヨーロッパ民族となり、南に移動したのがインド民族になったわけです。簡単な説明ですけど。
 日本人は、もとからアジア大陸にいた古モンゴロイドと今のモンゴル辺りから下ってきた新モンゴロイドが混血して形成された人種です。なので、普通は周辺 のシナ=チベット系かアルタイ系になるわけですよ。しかし、日本語は語法的にはアルタイ系に属するのですが、語彙[ごい]的には南方系の要素もあって、 まったくもって不可解な言語なわけです。
 文字の系統としては漢字圏に属してます。これは文字(漢字)を輸入し、さらにひらがなとカタカナは漢字から創られたためです。現在確認されている最古の 漢字使用は四世紀頃とされています。ひらがなもカタカナは発明当初、女性やこどもの使うものとして男性は使っていませんでした(例外的に、『土佐日記』が ありますけど)。漢字の力強さが男性的であり、ひらがなのしなやかさが女性的だという理由らしいのですが。
 本格的に日本語を研究すると、なかなか面白いのですけれど、ここでは先述したとおり、文章を学ぶ上で教養的な部分に限定しておきましょう。日本語の概要 は以上のようなことになります。

*このページに書かれていることは、壬桜華の私見であり、必ずし も絶対とは言えません。
最終的には、ご自身で判断してください。


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