チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…
 
急に目が覚めた。
 
部屋は静かで枕もとの時計が時を刻む音しか聞こえない。
 
それにしても嫌な夢を見ていたような気がする、今は一体何時くらいだろう。
 
明け方ならこのまま起きていようと思い手探りで枕もとの時計を掴む。
 
寝ぼけ眼で目元を擦りながら時刻を確認してみる、午前二時…
 
まだ真夜中だ、二度寝したほうが良いだろう。
 
こう言う時は布団に包まったままぼんやりしてるに限る。
 
薄暗い闇の中目を閉じてより深い闇へどっぷりと沈み込んでいく。
 
そのまま溶けて自分自身も闇になる、ドロドロと体が溶け出していく感覚。
 
それは本当に自分の想像なのだろうか。
 
もしかすると本当に世界は闇に包まれていて自分はそれに溶け出しているのかもしれない。
 
瞼を閉じれば世界はドロドロと溶けて一つになる。
 
そして瞼を開けばそれは急速に凝縮して元の形に戻る。
 
ひょっとするとこの体もこの世界も闇で出来ているのかも知れない。
 
瞼を開けると闇が固まって形になるから開いた隙間に光が見えるのだ。
 
闇は黒い、黒って言うのは全部の色をごちゃ混ぜにした色だ。
 
だからこの世界の持つ色っていうのは凝縮した闇から染み出しているものかもしれない。
 
影もそうだ、どこかで聞いた話だけど人間の脳味噌ってのは影も自分の一部と認識しているんだって。
 
影ってのは凝縮した闇が漏れ出したものだ、きっとそうに違いない
 
世界が闇でも構わない、それに埋もれている今はまどろんでなんだかとても心地良いから。
 
 
 
雀の囀りが聞こえて目が覚めた。
 
なんだか、とても眠い。
 
そう言えば真夜中に一度目が覚めたんだっけ。
 
なんだか妙なことを考えながら眠りに落ちた気がする。
とりあえず時刻を確かめるために時計を探すとなんだか妙なことに気が付いた。
 
色が薄い、何時もとなんら変わり無い筈なのに。
 
物の表面の色がなんだかとても薄くて真っ白に近く感じる。
 
気のせいだろうと思い枕もとの時計を手元に手繰り寄せようと掴もうとすると。
 
また妙なことに気付く、手がドロドロしてて時計が中々掴めない。
 
あぁ、そう言えば今日はまだ瞼を開けていない、目を閉じたままだ。
 
しかし、なら自分はどうやって視覚しているのだろう。
 
目を開けろ、そうしないと元に戻れない。
 
早く、一体何処に、どうやれば目を開けることができるんだ、分からない。
 
ゲル状の体を蠢かせて四苦八苦してみたが一向に元に戻れない。
 
一体どれ程の時間がたったのだろうか。
 
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…
 
枕もとの時計が時を刻み続ける。
 
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…
 
もう体を蠢かせる力も。気力も無い。
 
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…
 
こんなのはきっと悪い夢だ。
 
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…
 
そうに違いない。
 
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…
 
その証拠に目を開ければすぐに…
 
チッ、チッ、チッ、チッ、チッ…
 
急に目が覚めた。
 
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