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愉快な裁判官 速読度 ☆☆☆☆



この本を書いたのは、寺西裁判官という現役の裁判官の方です。

裁判官と言えば、みそのように頭がお猿さんの人間と別世界の方でしょうし、司法試験に受かったエリート中のエリートだと思います。

ところで、この寺西判事補の事件についてご存じの方も多いと思います。ある集会に参加され、処分を受け、その処分の違憲性について争った事件です。大方の予想通り、寺西裁判官は負けてしまったのですが、この本は最高裁が示した判決に対する反論と彼の物の考え方について書かれています。

残念な事に、私には裁判官の知り合いもいません。そのせいか、なかなか裁判官の方たちの私生活などを知ることもできません。ところが、この本を読んでいると裁判官の方たちの生活ぶりが分かります。

少なくとも世間の標準と比べると、冷遇されていると言われている裁判官ですらも高給取りであり、身分の保障も行き届いているようです。 このこと自体は、とてもすばらしいことの様に思います。最高裁判所の方針に逆らった判決を出したとしても、生活や身分の保障がされているため、各裁判官はきちんとした判決を出すことが可能なのですから、私の様な人間も気にせず裁判を受けることができそうです。

そして、リベラル派と考えられている裁判官が給料の査定が低くされることから、最高裁に反抗することができないと嘆く事に対して、寺西裁判官はそれなら裁判官をやめろと書かれていますが、それはその通りだと思います。私もそんな給料で左右される様な人間に高いお金を税金で養ってほしくありませんし、是非やめて頂きたいと思います。

大体、上司の言うことに逆らえば、冷遇されることは実社会では珍し事ではありません。それが嫌ならば、きれい事など言ってはいけないことも、当たり前の事でしょう。まして、冷遇されたとしても、高給取りなのですから、そんな泣き言を言うくらいならば、裁判官という社会的にも高い地位につく資格などはないと、みそは思います。

また、寺西裁判官が自分の信念を貫き判決を出す所は、面白く読めました。次々に自分が出した判決が覆されるが、それでも信念を貫き、そしてその点について、最高裁判所も彼に人事上の嫌がらせという事を行わないあたりは、基本的に日本の司法行政が不適切な運用をされていない事の証なのかもしれません。

ところで、この本のメインである寺西判事補事件の反論ですが、これは少しおかしいんじゃないかなー、とみそは思いました。別に、彼がどんな信条を持ったとしても、そしてそれがどんなにすばらしい物であろうが、なかろうが、それは彼の自由だと思います。

でも、集会に参加し、発言するのは辞めてほしいなーと思います。 裁判官でなければ、何を発言しようが、どこで発言しようが、ご自由ですが、裁判を受ける立場になることができるかもしれない立場にあるみそとしては、変な集会に出て発言する裁判官に判決を出して頂きたくありません。

個人的には、彼が参加した集会の趣旨は理解できる物ですし、別に悪い物だとは思いません。

でも、もしこれがオウム真理教の集会や自由主義史観を奉ずる人たちの集会であれば、私はその裁判官の人間性を疑います。そんな人が真実を見抜く目を持っているのか、また公平な裁判を行えるのかは、極めて疑問です。

また、所謂保守派と呼ばれる方たちからしても、「盗聴法」反対の集会に出られた裁判官に判決を出して頂く事は気持ちのいい物ではないと思うのです(立場の違いから当然の事だと思います)。そして、この立場の方たちもまた、公平な裁判所だとは思わないでしょう。

そう言う意味で、裁判官の方たちが政治的な集会に出ることに対し、否定的な判断を下したという事は、しょうがないんじゃないかなーと思うのです。政治的な集会に参加できないと言うことは、ある意味裁判官が裁判官であるために生じる制約だと言えると思います。

ところで、寺西裁判官は、最高裁の判決に対し、5つの反対意見が存在する事を批判の論拠としてあげています。しかし、この5つの反対意見ですらも、寺西裁判官の行動に対し批判的であり、問題としているのは手続として寺西裁判官の処分が適切に行われたのかを問題としているのであり、別に彼の行動を正しいとは言っていないような気がするのは気のせいでしょうか。

とはいうものの、この本はとても面白く読めました。私は信念を貫く人を尊敬していますし、まして処分も覚悟して行動を起こす勇気はとても立派だと思います。いろいろな意見の裁判官がいてこそ、多元的な価値観を持つ社会の意見を反映できるというものです。そのためにも、今後の裁判官として寺西裁判官の活躍を心より期待しております。

この本は、非常に読みやすく、また内容も面白かったため、速読度をたくさんつけてみました。




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