「横島君〜今日呼ばれた理由、わかる〜?」

「い、いえ?」

一週間ほど前と同じ状況で、六道女学院学園長・六道輪廻の対面にて萎縮している横島。

「(おかしいぞ?! 特に問題になることはやってない筈だが)」

横島は輪廻が少々苦手なのである。
ニコニコと笑みを浮かべ続けているが、その裏では何を考えているのか全く分からないからだ。

ある意味美神家の女を超える人である。

その彼女を目の前にし、横島は過去を……というより、最近の自分の行動を思い出す。
が、彼女の機嫌を悪くするような事はしていない筈だと確信する。

「(なのに何故? 教師に呼び出し食らった様な、いや!今から説教されるという感覚は!?)」

「横島君?」

「ははいぃ!?」

唐突に現実に戻された彼は、ピシィと体を真っ直ぐにして硬直する。

「あ〜別に〜叱るつもりで呼んだんじゃないのよ〜?今日は別の話があって〜
 というか〜忘れていた事を言っておこうかな〜って」

「は、はぁ」

内心ホッとしながら落ち着きを取り戻す横島だが、多少心に緊張を保ちながら彼女の話を聞く。

「実はね〜特別授業の事なんだけど〜、この前の会議でね〜週二日を4日に増やそうって〜なったの」

「え゛?」

彼女の発言に青筋を立てる横島。

「ほら〜うちの霊能科は将来のGS育成に〜力を入れてるから〜こういった専門の授業を取り入れるのが〜
 生徒たちの成長に繋がるんじゃないかな〜って〜」

今までもあったけど、それを強化するの。 と、最後に付け加える。

「それで〜横島君には〜教師を続けてもらえないかな〜って、おばさん願ってるんだけど〜」

「……まぁ別にいいですけどね。 ただ、GSの仕事が入った時はちょっと無理ですが」

「それでもいいわよー。 あーよかったぁ、おばさん断られたらどうしようか?と思っちゃったわ〜」

断ったら何されたんだろうかと、冷やさせ垂れる横島であった。








GS美神令子極楽大作戦! after

GS横島!!








第7話


「でね〜その事でまだ話があるんだけどぉ」

「え、何です?」

もう終わりかと思っていた横島は、半ば浮かしていた腰を再び下ろす。

「特別授業って〜生徒が自由に選択が出来るのは〜知ってるわよね〜?
 この前までの準備期間で〜生徒は見学がてらに授業を受けてたのよ〜」

「(その割にはみな同じ顔ばかりだった気がするんだが)」

先週一週間の授業を振り返り、不思議に思う横島。

「で〜、そろそろ生徒にどの授業を受けるかを選ばせないといけないのよ〜。
 それで〜今日の全体集会で〜、貴方の授業の内容をみんなに説明してもらいたいのよ〜」

当然の如く、彼だけではなく他の者もやるのだが、

「……え゛?!今日?!」

「ごめんねぇ〜おばさん言うの忘れてたわ〜」

「ど、どうするんですか?! 俺、何も考えてませんよ?!」

焦る横島に止めを刺すが如く、輪廻は次の言葉を続ける。

「さ〜成る様になるわよ〜、横島君〜もう時間だから行きましょう〜」

「今からかよっ?!」

ホホホホと笑いながら去る輪廻に、横島は盛大に突っ込むしか出来なかった。
















「―――で、私のクラスでは高等部3年生以外は選択出来ないことになってます」

広々とした体育館に集められた霊能科生徒に、教師たちが自分のクラスの説明をしていた。

例えば、初等部お勧めのクラスとか、術具の使用を主とするクラス、総合的・応用霊能クラス等など。

この多種多様なクラスから、自分の才能を伸ばせるクラスを選ばせるのが今回のクラス紹介である。

で、我らが主人公―横島忠夫は、壇上の席で思いっきり悩んでいた。

「(どないしょ)」

チラッと輪廻の方を見る。

が、輪廻はすぐに明後日の方を向き、代わりに視線に気づいた冥子が手を振ってきたので
横島は引き攣った笑みを見せながら手を振り替えし、溜息をつく。

「(しゃーない、成る様になるしかないか)」

『次は横島先生、お願いします。』

司会が自分の番を告げたので、横島は顔を引き締めて壇上に立った。

「え〜こんにちは、今期特別に六道理事長に雇われた横島忠夫と言います。一応、現役でGSやってます」

GSと告げた瞬間、ざわめきが広がり期待の視線が彼に注がれる。
GSを多く輩出している学校ではあるが、現役GSが直接指導というのは滅多にないからである。

「それで、俺が教える内容の紹介ですがあくまでも基礎を中心とした物となります」

その言葉に、先程とは違った感じのざわめきが広まるが、横島はあえてそれを無視して続ける。

「なので、自分の特性を伸ばしたいとか応用技術を向上させたい、とかそんな人は他のクラスに行って構いません。 以上」

シーンと静まり返る生徒達を一瞥した後、横島は壇上からサッサと降りるのであった。

そして彼に対する文句が教員や生徒達から漏れ始めるが、彼はそんな事を気にせず黙って座っているだけであった。












「横島君、一体どういうことかしら〜?」

集会が終わった後、輪廻は横島に訊ねた。

「どう言う事?と言われましても、俺にはあのような事しか教えられませんから」

「だからと言って〜あんな風に言ったら〜反感買っちゃうわよ〜?」

「そんな事言われても、本当の事ですよ? やっぱ専門技術は専門の先生に教えてもらうのが一番ですし。
 それに自分の霊能力を応用出来るほどの腕前があるなら、俺の所に来る意味はありませんよ」

元より嫌われてますから反感も気にしませんし、と最後に付け加えて言う彼の言葉に
輪廻は感心した表情を作った後、笑みを浮かべる。

「あら〜わかってるのね〜。う〜ん前会った時はまだまだ子供と思ったら〜もうすっかり大人の男ね〜」

「は、はぁ」

急に誉めだした輪廻に長年の苦年の経験か、引き攣った表情を浮かべる。
こんなとき、限って悪い事しか起きない事が身に染みているからである。

そして―――

「…横島君、うちの冥子貰ってくれないかしら?

「冗談キツイっすよ輪廻さん」

「あら〜?冗談ではないんだけど〜……もしかしてぇうちの冥子じゃ何か不満なの〜?」

最後のほうに怒気を含ませながら言う輪廻に冷や汗垂らしながら横島は答える。

「そう言う訳じゃないっす。 けど、こういうのって本人が居ない間にする話じゃないでしょう?」

あくまでも本人の意思を尊重させたいと告げる横島に、輪廻は視線を輝かせる。

「ほら〜横島君〜結構良い事言えるようになってるじゃないの〜。これなら冥子も大丈夫よ〜」

「うっ。で、でも俺の方がまだそんな風に見れないっつーか」

さらに迫ってくる輪廻にしどろもどろで反論する横島。

「そ〜う? ん〜じゃ〜、冥子には頑張ってもらわないと〜」

「は?」

何を頑張らすのかと疑問に思う横島を見て、輪廻は冥子への特訓を決心するのであった。

「何か〜悪寒がぁ」

冥子、合掌!












「センセー!!」  「横島さん!」

「お、シロとおキヌちゃんじゃないか。 どうした?」

校舎入り口から駆け寄ってきた二人は、マルルゥと話をしている横島に声を掛けた。

「授業は?」

「今日の残りの時間は、選択授業を決める時間になったんです」

「拙者らはもう既に決まったので、残りは自由にしてもよいのでござる」

「どこにするんですか〜?」

マルルゥが興味津々と聞くと、シロは胸を張って答えた。

「勿論、センセーの所でござる!」  「……私も」

なんとなくそんな感じはしていた横島は、やっぱりかと苦笑いを浮かべる。

「しかし、何で俺の所なんだ? 特性を伸ばせる所の方が身になるんじゃないか?」

そして、二人に疑問をぶつける。

「え、えっと。それは(///)」

「拙者はセンセーの弟子でござるから、センセーの元へ行くのは当たり前でござる!」

「そんなもんか?」

やや興奮気味のシロを手で押さえながら呟く横島。

「どうしたんですか〜? 顔が真っ赤なのですよ〜」

「お、ホントだ……どうしたおキヌちゃん?」

「なななんでもないですっ(///)」

相変わらず鈍い横島と、その方面には弱いシロではおキヌが顔を真っ赤にした理由は掴めなかったが

「(むぅ、要注意ですっ)」

マルルゥには分かったらしく、ライバル視するのであった。

ちなみにシロは眼中にはないらしい。





「横島さん!!」

彼の背後から声を掛けたのは、弓かおりであった。

「あ、弓さん。 どうした?」

「許可が取れたんですよ!!」

駆け寄ってきた弓がそう告げると、横島は意外そうな顔をし、キヌ・シロの二人は疑問符を浮かべる。

「へぇ、よく取れたねぇ。いや正直、許可が取れるとは思ってなかった」

「ゆ、弓さん?何の話をしているのですか?」

普段とは違う様子の弓に、恐る恐る問いかけるおキヌ。

「あら?氷室さん。 奇遇ですわね。 私、横島さんの所でGS見習いをさせていただく事になったのよ」

「「えっ?!」」

どういう事だと横島の方を見る二人だが、横島は視線を逸らして話を弓と続ける。

「それじゃあ、平日は学校が終わってから、土日は来てもいいし……ま、自由にしていいよ。
 これ、住所」

パッパと説明した横島は、横からの視線を可能な限り無視しながらも弓に笑顔を絶やさない。

「は、はい!では、今日からよろしくお願いします!!」

「うんよろしくね。 といっても、今日は仕事入ってないから事務仕事とかになりそうだけど」

「事務仕事……ですか?」

GSとは程遠い言葉に、眉を顰める弓。

「GSってただ除霊するだけじゃなくて、色々と書類なんかを片付けないといけないんだ。

 専門職の人を雇っている所もあるけど、殆どは自分でやるGSが多いんじゃないかな?」

「そ、そうなんですか」

「み、美神さんってそんな事もしているんですね〜…」

微妙に納得し頷く弓と同時に、おキヌは吃驚した様子で呟くのを聞いた横島は苦笑いを浮かべながら

「そうなんだよ。 あんなに大量の依頼をこなし、なおその上報告書類やその他諸々を一人でやっているんだからね」

「そのようには見えないのでござるが……」

「ああ見えて、隠れた努力者なんだよ、美神さんは」

と言った所で言葉を止めると、校舎からゆっくりと歩いてきたタマモに手を振る。

「お待たせ」

「遅かったな……ってどうした?」

横島の視線は、タマモの髪にいっていた。

幾つもの視線を感じたタマモは本気で恥ずかしいのか、モジモジとして顔を下に背ける。
ここで彼女の顔が見れたら、珍しく顔を真っ赤にしているのが確認できただろう。

「その、帰ろうとしたら冥子さんに捕まって……その、無理やり(///)」

「へ〜、よく似合ってるじゃん」

「え?」

「可愛いよ」

ポカンとする一同を他所に、横島はウンウンと満足そうに頷く。

「……(///)」

そして、何を言われたか漸く理解したタマモは更に顔を上気させて俯く。

「しかし、そうするとマルルゥと姉妹みたいだな」

「……言われてみればそうね」

「そうですね〜」

マルルゥとお互いを見比べてながら答えたタマモは、少し首を振ってツインテールにして腰まで届きそうな髪を払う。

その度に揺れ動きながら輝く、彼女の金色の髪に同性ながらも思わずシロは目を惹かれてしまう。

「(う、確かに、先生が言うだけは)」

それと同時に敗北感を味わうシロであった。

一方のおキヌも、そんな一連のタマモを見て呆然としてしまう。

「(な、なに?一体どうなってるの?あのタマモちゃんが……あのタマモちゃんがっ!
  普通の女の子みたいだなんて!!?)」

おキヌでなくとも、タマモを昔から知っている人物は皆同じ感想を抱くであろう。
ちなみに横島は、こんなタマモにやっと慣れてきたばかりである。


「今度はマルルゥもやってもらうですぅ」

どうやら横島に可愛いと言われたタマモが羨ましかったのか、そう意気込むマルルゥ。

「お、そりゃ楽しみだなぁ」

そう優しく笑みを浮かべながら答える横島に、マルルゥは満足した様子で足取り早く校門まで走っていく。

「横島さ〜ん! 早く事務所に戻るですよ〜」

「おぅ!……じゃ、また」

「あ……はい」

去っていく横島に聞きたい事があったけど、遂には言い出せなかったおキヌは、伸ばしかけた手をゆっくりと元に戻して

深く溜息をつく。

横島はGSとして一人前だが、自分は美神の元で修行の身、段々と離れていく彼との関係に軽い失望感を覚えるのであった。

「せんせぇ」

何時もは何も考えていないシロだが、流石の彼女もおキヌと同じ事を思い、悲しむのであった。



















「か、かおり!?」

「あ、貴方は!?」

事務所で顔を合わせたかおりと雪乃丞は、お互いを指差したまま驚きの声を上げて動きを止める。

「あ、そういや……お前らって付き合ってたんだっけ?」

過去、魔鈴の喫茶店で行ったクリスマスパーティにおいて、良い雰囲気になっていた事を思い出した横島は、

「そうかそうか」と納得する。

が、彼の指摘に顔を真っ赤にさせた二人は物凄い形相で横島を睨むと口を揃えて叫ぶ。

「「違う(います)!!」」

雪乃丞は照れて否定している様子だが、かおりの場合は嫌がっている様にも見える…。

「そ、そうか。悪かった」

ま、横島が彼らのそういう所までは気付く筈も無いわけで。


「とりあえず、雪乃丞が報告書等処理しているからちょっと覗いてごらん」

「はい。へぇ、貴方でもこういう物書けるんですのね」

「てってめぇ!馬鹿にしてやがんのか?!」

本気で感心した様子で呟くかおりに、憤慨する雪乃丞。

「馬鹿にするも何も……貴方、馬鹿なんでしょう?」

「ば……!?」

辛辣なかおりの言葉に青筋を立てる雪乃丞。
そんな二人を見て、自分の認識を改める横島であった。

「馬鹿馬鹿って……俺はコイツよりまともな形で、しかも余裕で高校卒業(*1)しているんだよ!」

「まぁ、そこら辺の馬鹿さでは俺の方が上だな……癪だが」

ビシッと指をさされた横島は顔を引きつかせながら呟く。

どうだ?!と言わんばかりに勝ち誇った表情を浮かべる雪乃丞に対し、
言い返されて悔しそうな表情をしている筈のかおりは、完全に馬鹿にしたように鼻を鳴らして言い返す。

「私が言っているのは今現在の事ですわよ! 過去は関係ないですわ」

「……」

「もっとも、卒業したからって横島さんより馬鹿じゃないという証明にはならないと思いますけど」

言い返せない雪乃丞に、今度はかおりが勝ち誇った表情を浮かべるのであった。


「横島さん、お二人さんは仲が悪いんですかぁ?」

「ん、喧嘩する程仲が良いと言うしな。気にしなくてもいいぞ」

二人が恋愛関係というわけではないが、過去の例 ― タマモとシロ ― の事から
いいコンビになると思った横島はマルルゥにそう言うと、二人を放って置いて自分のデスクに戻るのであった。

「……マルルゥ」

「お茶ですよ〜。 何ですかぁ?」

呼びかけられたマルルゥは、横島の茶碗にお茶を淹れながら用件を尋ねる。

「『六道女学院霊能科・クラス対抗試合特別審査員について』、は良い。最後のはやらないと駄目か?」

ゲンナリとした顔でピラッと紙の一番下を見せる。 それは――

【なお、優勝チームは特別に現役GSとの特別試合が予定されています】

で、現役GSである横島の所にこの紙があるという事は彼が出場する事は確定しているという事なのだ。

「駄目ですよ〜。ちゃんとした依頼ですからぁ、此処でキャンセルすると信用が落ちちゃいますし」

マルルゥは一呼吸置いた後、横島にズズッと近づき

『断ったら、分かるわよねぇ?』 だそうですぅ」

「了解」

マルルゥ自体には恐怖は感じないが、その後ろで見え隠れする ―― あいや、思いっきり見えてるが ――
六道 輪廻のプレッシャーに恐怖を感じた横島は諦めたかのようにガクリと頭を垂れるのであった。

どうもあの人は苦手だと言わんばかりに溜息をつく。

「何々?何の話……ああ、これね。なんだ、それほどたいした依頼じゃないじゃないの」

何時の間にかやってきたタマモは、マルルゥの横から覗き込むような形で紙を見るとそう話す。

「あのな……何時間も椅子に座って試合を見るんだぞ? それに一つ一つコメントいれなきゃあかんし…
 特別試合だって、3対1だぞ? 考えただけでも憂鬱な気分になるわ」

「まぁ、、コメントだなんてアンタの性格を考えると大変そうな作業ではあるかもしれないけど…
 試合は簡単でしょ? 軽く捻って終わればいいじゃないの」

「軽く捻れれば楽なんだが……」

「「?」」

横島の意外な言葉に二人は疑問符を浮かべる。

「所詮は学生よ? そんなに辛くもないでしょうに」

「そりゃ本気を出せば辛くは無いだろうがな。輪廻さんの事だ、絶対何かしらハンデを要求してくるに違いない」

「あーそーかもしれませんね〜」

「それに、優勝するのはプロのGSに近い実力を持った3年生だろ?
 そんなのが三人も同時に攻められて手加減しながら相手に怪我をさせずに勝つなんて難しいんだよ」

全て言い終わった後に横島は大きく溜息を付く。

そんな彼をタマモは意外そうな顔をする。

「……やっぱり、色々考えているのね」

「あ?」

どういう事だとタマモの顔を見る横島。

「ううん。ただ、前のヨコシマだったら絶対に『じょしこーせー!』とか言って騒いだ筈だからさぁ…
 ギャップが在り過ぎてまだ慣れないのよ」

「俺だって何時までも馬鹿じゃいられないさ。
 それでもまぁ、若い女の子に囲まれるのは悪い気はしないが」

ウンと頷いた横島はそう締めくくるが、その最後の台詞が気に食わなかった少女二人は
釘を刺すかの如く、彼の頬を思いっきり抓るのであった。
















あとがき

7話前編です。

なんかグダグダ長くなりそうな気がしたので、前後編にしました。
ご了承ください^^;

かおりだったかかおるだったかorz