地震雲がいっぱい
1995−11−10−A
阪神大震災前に地震雲が見られたという話を聞いて以来、空を見ることが多くなった。特定の雲ができるためには、気温や湿度や風などの複雑な条件が必要なはずだから、仮に地震雲というものがあるにしても、そうたびたび出現する筈はない。そう思いつつも、やはり心の片隅では気になっていたのだ。
ところがそう思って空を見ていると『あれが地震雲ではないか』と思う雲に出会うことが意外に多いのだ。もっとも、地震雲とは飛行機雲のようなものだという話もあり、いやもっと幅が広いという話もあって必ずしも一致しているわけではないが、最大公約数をとって周囲から孤立した直線状の雲という程度に考えれば、月に二、三度はそういう雲を見かける。その中でも特に珍しい雲に出会って『あれこそ地震雲だ。もうすぐ地震が起こるかもしれない』と思ったことも何度かあったが、その予想は一度も当たらなかった。
こういう体験を繰り返しているうちに、私は地震雲の秘密がわかったような気がした。たぶん、そういう不思議な形をした雲はごく日常的に出ているのだ。それを見た私達は、その場では『珍しい雲』と思っても、普通はそのまま忘れてしまう。ところが直後に地震が起こるとその記憶が蘇って、『地震雲を見た』ということになるのだ。阪神大震災の直前に地震雲をみたという話もほとんどがこの種のものだったのだろう。
仮に地震雲というものが本当にあるとしても、それほど頻繁に見られたはずがない。だから我々は報告例の多さは逆に信憑性の薄さを示していると解釈すべきなのである。


   

     この作品には著作権が設定されています。この作品の利用については、トップページの著作権に関する説明を参照してください。