「震える舌」 製作=松竹 1980.11.22 
 おいで おいで 幼い娘・・・その日娘は悪魔と旅に出た。 (パッケージコピーより)

 監督:野村芳太郎
 出演:渡瀬恒彦 十朱幸代 若命真裕子 宇野重吉 中野良子 蟹江敬三 北林谷栄 


 さて、映画系のサイトで「幼少の頃のトラウマ映画」と、よく話題になっているこの作品。
 見てみたかったんですが、なにせ20年も前の邦画なので普通のレンタルショップではなかなか
 ない。ところが昨日あっさりと見つけました。なんと近所の小さなレンタルショップにあったという。
 灯台下暗しとはこのことだ・・。ささ、見てみるとするか・・。

 ☆☆☆あらすじ☆☆☆
 渡瀬恒彦と十朱幸代演じる若夫婦の娘(子役:若命真裕子)はどろんこ遊びをしていて、
 指先に小さな傷口を作ってしまう。実はこの時、すでに泥の中の菌により、
 娘は破傷風(こちらを参考に)という病気にかかってしまっていた。
 大学病院で破傷風の診断を受けてから始まる親子の凄まじい闘病生活。いつ来るかわからない
 娘の痙攣の発作・加えて自らも破傷風の伝染に怯え、次第に精神に異常をきたしていく夫婦・・
 ☆☆☆☆☆☆

 ・・・・・うぐぅ・・。多分、この映画を見る前と見た後では、確実に体重が1キロは減ってます・・・。
 ぐったりしました。・・・本当にぐったりしました。怖い・・(泣)
 破傷風というのは恐ろしい病気で、ちょっとの音や光、つまり少々の刺激が引き金となり
 全身の硬直・痙攣等を引き起こし、窒息死することもあるらしいのです。
 (痙攣で体を反らせすぎて脊椎を折ることもあるらしい。作中に症例の写真あり)
 娘は泥んこ遊びの翌日にはもう開口障害、歩行困難の障害が出てるのですが、
 その時点では全く両親は病気に気付いていない。
 ただなんか変だなーと思って、ちゃんと喋るように、歩くように厳しく言うのですが、
 娘はたどたどしい口調で「しゃべれるけど、しゃべりたくない」「あるけるけどあるきたくない」
 と言います。もうこのへんからなんか怖いかんじが漂っています・・。

 夜になって、両親が二人でゆったりとした時間を過ごしているカットと同時に、隣室の
 娘の様子が映されています。寝ている足が、手が、ビクッ・・ビクッと痙攣している・・。

 と。

 「ヒィギャァァァァァァーーーーー」(こうとしか表現しようがない)という叫びが
 響き渡ります。
 見るとそこには痙攣の発作をおこしつつ、舌を噛み口を血塗れにしながら絶叫する娘が。(怖い・・)
 ここで仰天した両親は急いで近所の病院に行くわけなんですが、そこでは軽くあしらわれて
 しまいます。次に行った病院では、父親の厳しいしつけが呼び起こした心因性のストレス
 だと診断され、最終的にやっと大学病院の教授(宇野重吉)に正しい診断をしてもらえます。
 このへんの下りや、全体のエピソードで描かれてるのは病院側の一般的な対応。原作は
 三木卓の同名小説なのですが、社会派の小説なのでこのへんもきっと原作ではきっちり描かれてるん
 でしょう。読まねば・・
 いや、話がそれましたな。戻す。

 で、即緊急入院。刺激を避けるために暗闇で息を潜めて、いつ痙攣の発作が来るかわからない
 状態で息を詰めて娘の様子を見守る両親。この辺の描写がねぇ・・時間単位で表示される経過と共に
 みてるこっちもいつ痙攣の発作が来るのか・・・いつ来るのか・・・それが怖くてもう・・(泣)
 何しろちょっとの刺激もダメなので(勿論ノックもだめ)、病室の周りでは細心の注意を払ってるの
 ですが、そこに入院患者のご飯を運ぶ配膳車がガラガラと音を立てて廊下を・・・そこにご飯を
 取りに来る大部屋患者の子供・・・トレイを取る・・・それを思わず取り落とす・・!!
 ガラガラガッシャーーーンン!!

 「ヒィギャァァァァァァーーーーー!!」口を真っ赤に染め白目むいて叫ぶ娘。
 主治医は回診でこんな時に限っていない!別の医師が飛んできて、口をあけさせようと
 するが開けられない!「お子さんは乳歯ですよね・・まだ生えるからいいだろう!」と
 血まみれの娘の口をこじ開けて前歯を無理やり抜く医師!おかげで呼吸器は入れられたが
 もう・・もう見てられない・・恐ろしくて可哀想で・・しかもその後何度も発作を起こします。

 この時点で母親はもうピークに達していて、娘の発作に合わせて自分が絶叫したり
 「子供なんて・・産まなければよかった」「あなたと出会ったのが間違いだった」等の
 発言が飛び出すなどボロボロ。しまいにはナイフもって病室で暴れる始末。この映画のすごいところは、
 闘病ものですが、子供に注ぐ親の無償の愛のみを描いているのではないというところ。
 両親は「自分達に子供の病気がうつっちゃうんじゃないか?」という恐怖に始終怯えています。
 換えた紙おむつを捨てた後、執拗に手を洗う父親の姿とか。極限状況に達した人間の姿やパニックを
 そのままきれいごとのみでなく描こうとしているように見えます。普通はこういう描写は
 最初から入れないでしょう。感動の闘病ものとして作る場合は。
 でもそこが非常にリアルで、見てて考えさせられます。泣けるし。

 しかしその側面と共にこの映画の最大の特徴は、すでにいろんなところで指摘されているように、
 恐怖映画として捉えられうる点にあると思います。・・・どう考えても恐怖映画としての
 撮り方なんですよねぇ・・うーん。監督は「八ツ墓村」「砂の器」を撮った人でもあるのですが、
 この2本を見た方ならわかるでしょう・・・あの独特の土着的な雰囲気・・。
 あんな感じのふるーいフィルムの画像で全編殆どが薄暗いんですよ。色彩的に。
 で、そこに強烈なコントラストとして娘の口に溢れる血。その赤だけが際立って見えるのです。
 難病をテーマにした真面目な作品なのですが、異様に恐ろしいんですよね。構成もうまいし。

 結局この作品、ラストはあっけないとも言える感じで娘が全快します。
 いや、現実はこんなものなのかもね・・。その辺がリアルといっちゃあリアルなのかも。
 映画としては非常によく出来た映画で、オススメともいえるのですが、これは前知識を
 もってみたからまだ冷静に(いや、かなり手に汗握ってしかも相当恐ろしかったですが)
 見れたとも言え、巷で言われるように、予備知識もなしに子供の時にこんなん見たら
 間違いなくトラウマになりそう・・です。
 とりあえず破傷風は別に昔の病気でもなんでもなく、運が悪ければなってしまう病気です。
 お子さんは絶対に予防接種はしておいた方がいいでしょう・・・
 (ちなみに今、30歳未満の人は殆ど幼少の頃に予防接種を受けているそうです。
 なら私はOKだ・・ほっ)

 というか、私がこどもの頃にこれ見てたら絶対泥んこ遊びはしなくなりそうです・・。

 2002.07.17


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