犠牲者数は水増しか?

犠牲者数は水増しか?
重慶爆撃の規模



『トンデモ本の世界 R 』 P16 太田出版 と学会著

 さらに目立つのは、日本人の戦争被害が大幅に水増しされていること。「(特攻では)6000人の命が失われた」(実際は3900人)、「マルレ(特攻挺)だけでも1639人が死んでいった」(実際は192人)、アメリカの本土空襲では「60万人の死者がでた」(広島・長崎の原爆犠牲者を含めてもせいぜい50万人)、「戦場の空に散った数十万にのぼる少年兵たち」(そんなにいるわきゃない)・・・・・・。

 山本さんの記述によれば、戦争論では「日本人の戦争被害が大幅に水増し」されているということです。本当に水増しなんでしょうかね?

 資料をあたれば容易に分かることですから調べてみました。まず本土爆撃の死者数から見てみましょう。山本さんの主張では原爆犠牲者をふくめてせいぜい五十万人だそうです。六十万というのは水増しで、歴史的事実無視ということです。覚えておきましょう(笑



資料解説


20世紀『欧州大戦』P228 読売新聞20世紀取材班編 中公文庫
日本への空襲
 45年3月10日の東京大空襲の際に投下された焼夷弾は1665トン。死者は10万人を数えた。日本本土全体では16万トンが投下され、死者は原爆による約21万を含め、約50万人を数える。(全国戦災都市連盟調査)。投下量に比して犠牲者が多かったのは、防御体制が脆弱だったためとされる。

 原爆死亡者が約二十一万で、その他の通常爆撃による死亡については約三十万人ということになります(全国戦災都市連盟調査)。内訳を見てみましょう。



『太平洋戦争がよく分かる本』P176 PHP文庫、太平洋戦争研究会 

 空襲による死者は51万人を超える。各都市の死傷者数は調査の時期が新しくなるほど増えていく傾向がある。その点を念頭にいれて上位七都市をあげると次のようになる。

●広島市 約14万人(原爆による。1945年末までの死亡者数)
●東京都区部 約10万人
●長崎市 約7万人(原爆による。1945年末までの死亡者数)
●大阪市 約1万人
●名古屋市 約7800人
●神戸市 約6200人
●横浜市約4600人
 この他一千人以上の死者を出した都市を北から順にあげてると、青森市(約1800人)、長岡市(約1200人)、富山市(約2300人)、日立市(約1300人)、千葉市(約1200人)、川崎市(約1000人)、静岡市(約1600人)、浜松市(約3200人)、福井市(約1600人)、津市(約1600人)、堺市(1900人)、和歌山市(約1100人)、明石市(約1500人)、岡山市(約1700人)、呉市(約2100人)、高松市(約1300人)、八幡市(現北九州市の一部、約1100人)、大牟田市(約1300人)、佐世保市(約1000人)、鹿児島市(約2400人)など20都市である。日本全体の罹災人口は約一千万人で、当時の人口約七千万人の14パーセントが家を失ってしまった。
 日本空襲はまさに一般市民の生活の場を破壊し、殺害する無差別爆撃そのものだった。

  以上のように空襲被害については「原爆を除くと約30万人」ということで、統計がまとまっているようです。

 ここで問題になってくるのが原爆犠牲者の統計です。
 原爆の犠牲者については、爆撃後の放射能被爆による死者も、統計に含めるというのが日本の考え方です。上記資料でも被爆後遺症による死亡を含んでいます。この範囲(放射能被爆の範囲・時間)をどこまで取るかによって犠牲者数が変動することになります。

 つまり「原爆犠牲者」の統計は複数存在するのです。アメリカなどでは原爆投下直後の数字として、広島・長崎合わせて約10万という記述がよくみられますが、日本では30万という統計も存在します。
 


「戦争・事変」全戦争・クーデター・事変総覧 教育社
(Newton DATABASE) P294
1945年8月6日・8月9日
原子爆弾投下
(略)
 被爆当日の死亡者は広島が7万8000人余人、負傷行方不明者は5万1000人にのぼった。また長崎では死亡者2万7000余人、負傷・行方不明者約2000人に及び、両市の被爆者の死亡が相次いだ。90(平成2)年5月15日に厚生省は、被爆者の死没を両市あわせて29万5956人と発表している。


「昭和史の謎を追う」(下)P61 秦郁彦

 1990年5月16日の各新聞は、一面トップで厚生省が実施した原爆死没者の実態調査結果を報道した。計29.6万人の人口のうち広島の死没者は20万1990人を数える。
 広島の死者数については諸説があり、最近は14万(プラス・マイナス1万)の数字が定着していたが、半世紀近くを経て大幅に修正されたわけである。被爆直後に広島に入った海軍調査団の約20万という推計とほぼ一致する。

 あとは足し算ですね。
通常空襲犠牲者約30万+原爆犠牲者約30万
普通に計算すると合計約60万です。
 
 準拠資料が変われば数字も変わる。ということで、60万は水増しではなかったわけです。水増しとして『戦争論』を批判した山本さんの大チョンボとなります。批判するなら最低限の調査は必要だと思います(笑


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