
| 所有者 | 時代 | 地域 | 出典 | 形状 | 類別 |
| 乙姫 | 古代(?) | 日本 | 万葉集・御伽草子など | 美しい小箱 | 宝具 |
浦島伝説はかなり古い時代に成立していまして、上記の他に日本書紀や風土記などにもみられます。ただ、話の細部については若干の差異があります。私たちが知っている「浦島太郎」は古くて御伽草子以降、または江戸時代の「浦島年代記」以降だと思われます。
さて、玉手箱の「原型」ともいえるものは万葉集の長歌のなかにあるそうです。『玉匣』として登場します。これは「たまくしげ」と読みます。『匣』は『櫛笥』と同意語で櫛など髪の毛を整える為の道具を入れておく木箱のことです。櫛笥は古くから貴族階級の日用品でした。『玉』は美しい物のたとえですから、玉手箱とは本来は『美しく飾られた手箱』・『奇麗な小物入れ』のことだったわけです。「玉手箱」は平安初期くらいから貴族達が日用品として使い始めたそうですので、『玉匣』が『玉手箱』に変わっていったのは」貴族の生活習慣の変化によるものでしょう。
浦島伝説で「乙姫」や「竜宮城」というものが登場するのは伝説の成立よりもずっと時代が下ってからだと思います。乙姫や竜宮城は「竜」・「乙=竜」で解る様に中国から輸入された概念です。もともとの浦島伝説の原型は「浦島が助けた亀の化身と海底の宮殿で結婚する。」というものなのです。これは重要なポイントなのです、実は。私達が良く知っている「浦島太郎と乙姫」の物語の「乙姫」というフィルターを外して考えてみると解るはずです・・・・・・。これは『異種婚姻』なんですよ。ちょっと下品な言い方をすれば『人獣相姦』です。浦島伝説とは『禁忌を犯した』お話しなのです。「禁忌」すなわちタブーは大切なキーワードです。
浦島が禁忌を犯したのはこの点だけではありません。海底宮殿に行った時点ですでに禁忌を犯しています。「海底」は『異界』であり、人間が自由に往来出来る場所ではないのです。生命ある人間が異界に行く事は非常に困難なことであり、そこから帰還することはもっと困難なことです。
浦島は「異種婚姻」と「異界への往来」という普通、人が出来るはずのない事をしたわけです。いわば「特例の人間」だったわけです。特別な事をする人には当然「リスク」がついてまわります。ここでのリスクは『禁忌』という形で表現されます。『玉手箱を開けてはならない』という禁忌です。禁忌を破って特例の人となった浦島は違った形の禁忌を背負う事になったのです。結果は皆様のご存知のとおりで・・・。
さて、日本だけに限らず、世界中で「災い」・「禁忌」などを封じ込める容器には「箱」や「壺」が用いられます。これは「蓋をしてしまうと中の物が見えない」という事からでしょう。中のものが解らないと知りたいと思うのは人間なら思います。そんな好奇心を誘っているわけです。人間は禁忌には恐れを抱く反面、好奇心も持ち合わせています。その事を象徴するのに「箱」や「壺」はピッタリのアイテムなわけです。