きみのためのすべて。
ショートショート


ショートショート FROM Dialy
 1

日記で書いていたショーとショートをまとめてみました。
すごく楽しかった日や飲み会の後などに書いていたものもあって
今読み返すと大変恥ずかしいのですが・・・。
中身のないお話しとなっておりますが読んで楽しんでいただけたら幸いです。

「携帯電話」

ピピ。
雛の携帯電話が鳴った。
彼女はそれを手にとり、しばらくしてにっこりと笑った。
「メール?」
自分以外に彼女をそんな顔させるヤツがいることに
嫉妬心が芽生えてしまう。
自分の独占欲に苦笑しながらも尋ねた。
「誰から?」
雛は慣れていない手つきで携帯を操作しながら
「ユカちゃん。」
クスクスと笑った。
柏木さんね。
彼女にさえ軽く嫉妬心を覚えてしまうその表情。
「できた!!」
雛が満面の笑みで呟く。
「なにが?」
「響くん、響くん。私の携帯に電話かけてみて。」
「?」
妙にウキウキとしている雛を見ながら、
自分の携帯から彼女の携帯にかけてみる。
リーン。
そのとき流れたのは、俺の曲。
雛の携帯からだ。
ピッ。思わず、’切る’のボタンを押す。
「ユカちゃんに作ってもらったの。」
雛は嬉しそうに俺の曲の着信音を流す。
「私、響くんの歌、大好きよ。ずっと聞いていたいもん。」
携帯を眺めながらニッコリと微笑む。
ピッ。
雛の手から携帯を取り上げ着信音を消す。
「あ。」
俺から携帯を取り戻そうとする雛の腕を引き寄せる。
「そんなにずっと聞いていたいのなら一晩中耳元で歌ってやる。」
そう言って雛の小さな耳をガジリと噛んだ。
びくりと彼女の体が反応する。

大切な君へ。今夜極上の愛の歌を・・・。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「スイッチ」

パチリと切り替えられるその瞬間。

夕食の後のお茶を飲みながらの他愛のない話。
今日、録音スタジオの建物にいついていたネコが子猫を生んだこと。
雛が好きそうだ。
響くんは穏やかに微笑んで私の髪を撫でた。
本当はするりとしたストレートのつややかな髪に憧れる。
いつもは気になるウェーブしたくせにのつきやすい髪も
彼に撫でてもらえたときだけは少し好きになれそうな気もする。
今日、帰りの電車の窓から見た夕焼け。
すごく赤かった。
私の話を後ろから手をまわして私の肩越しに聞く彼。
頬にキスをされくすぐったくて肩をすくめると、
クルリと体勢を変えられて唇にトンと触れるキス。

パチリ。それが切り替えられるその瞬間。

:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「ちがういきもの」

大きく息を吸うのも辛くて、ため息のように息を吐いて
お腹に手を当てて目を閉じるとぐったりとソファにもたれかかった。
月に一度の痛みはいつまでたっても和らぐことはなく、
むしろ年を追うごとにきつくなっている気がする。
「大丈夫か?」
足元にフワリとした毛布の感触と一緒に首の下に腕が差し入れられ
そのまま引き寄せられる。
「大丈夫。」
そっと見上げると、響くんの頬がおでこにくっついた。
「熱いカフェオレいれたけど、飲むか?」
コクンと頷くと
「ふぅふぅして飲めよ。」
響くんがふぅふぅと少し冷まして私の手にカフェオレボウルを握らせる。
「ありがとう。」
言われたとおりにふぅふぅしてコクリと飲むと
まるで自分の中に通る食道の形がわかるように
あたたかいものが喉を流れていった。
それだけで、お腹がホッとぬくもった気がする。
響くんが’いい子だ。’と言わんばかりに私の頭を撫でた。
「女の子に生まれてきてくれてありがとう。」
自分と対の存在としてこの世にいてくれてありがとう。
響くんはそう言って私の瞼に口付けを落とした。
これから先、私の人生の半分以上の年数、
月に一度襲うこの痛みを
その一言だけで帳消しにしてしまえる。
それどころか、この痛みさえもいとおしいものかもしれないと思う。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「いつものじかん」

響くんはそんなにおしゃべりな方じゃない。
むしろ無口な方だ。
私は・・・。私も、おしゃべりじゃなくて・・・
むしろ無口・・・。
でもこうやって飯食べたあと、
何も喋らなくてぼーっとしながら寄りかかった肩に
響くんのぬくもりを感じる。そんなひと時がとても好き。
ぎゅって抱きしめられた肩。背中を響くんの腕にすっぽり包まれて、
響くんのかすかな身じろぎや、息遣い、鼓動。
背中を通して体いっぱいに感じる。
そして、肩に置かれた手がたまにトントンって何かのリズムを取るの。
それがとてもすき。
だって。この瞬間は「そばにいていいよ。」って。
自信を持って側にいられるの。
二人だけの空間。
側にいてもいいんだ。って。
「ひゃ!!」
ふっと息を耳に吹きかけられて思わず耳を押さえた。
「なに?かんがえごと?」
響くんが楽しそうに私の癖のついた髪を指に絡める。
「ううん!」感じてたの。」
「かんじてた?」
「そう。響くんが側にいる、ってぬくもりや音や振動。
五感全部使って感じてたの。」
私の言葉に響くんはふっと笑って指に絡めた髪にそっと口付けた。
「///!!」

いつものじかん
まいにちくりかえされるへいぼんなとき
でもこのしゅんかんしゅんかんがわたしにはとてもたいせつ。
へいぼんっていうことはなによりもいとおしい。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「Zero Gravity」


「ただいま。」
家に帰るとかすかな声が耳に届いた。
’雛の歌声’
彼女は恥ずかしがってあまり歌ってはくれないから・・・
「貴重だな・・・。」
そっと忍び足でリビングに向かう。
近づくごとに濃厚になっていく雛のかもし出す柔らかな声。
「・・・。」
声が鮮明になっていくほどに俺は首をかしげる。
歌・・・?にしては・・・。
タンタンタン。
何かで拍子をとりながら
「いとゆゆしきまでみえたまうおんありさまを・・・」
古典だ・・・。
ピンとひらめいて同時に苦笑した。
古典にリズムをつけて覚えているのだ。
逆に覚えにくいと思うが・・・。
「ただいま。」
リビングにつながるドアを開けると雛は
「ひゃぁ!」
素っ頓狂な声を上げて、口を自分の手で塞いだ。
指先から耳まで真っ赤だ。
「古典?」
「なに?!響くん聞いてたの?!」
俺が笑って頷くと雛はますます真っ赤になって膨れた。
「声かけてくれればいいのに。」
「いや。受験勉強の邪魔はしちゃいけないと思ったから。」
俺をじと〜と雛は睨むと
「おかえりなさい。」
次の瞬間には笑顔になった。
「ただいま。大五郎。」
俺が言うと今度こそ雛は真っ赤になった。
やっぱり忘れていたのだ。
勉強中には邪魔だったのだろう。
前髪だけをゴムでくくって上にぴんと張るちょんまげを作っていたこと。
「早く言ってくれてもいいのにぃ・・・。」
「いや、これはこれで可愛いと思うけど?」
必死で前髪を撫で付ける雛を苦笑して手伝う。
「響くんはわかってないよ〜・・・。」
雛は自信なさげに俺を見上げた。
わかってない?
なにが。
「女の子は好きな・・・人には一番可愛い自分を見て欲しいものなの・・・。」
「・・・。」
おや、まぁ。
あの小さかった雛がどこからそんな知恵を吸収してきたのか・・・。
女は怖い。
「くっくっく・・・。」
「ど・・・どうして笑うの?!」
真っ赤になった雛が涙目で俺を見る。
’好きな人には・・・’
その言葉でとてつもなく胸が軽くなる。

ゼロ グラビティ
まるで宇宙に居るような浮遊感。
要するに浮かれてるだけ。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「たまもの」

雛を抱いたあと、彼女の呼吸が落ち着くまで
腕の中抱きしめてそのぬくもりを味わっているととてつもない
幸福感が胸を満たす。
呼吸の落ち着いてきた雛をことさら強く抱きしめて
頭のてっぺんにキスを落とすと彼女の体からふにゃりと
力が抜けるのが腕を通して伝わった。
腕の中の彼女の前髪をかきあげて顔を覗き込んだ。
「なんだかむずむずするくらい幸せ。」
彼女が戸惑ったように恥ずかしそうに上目遣いで言うので
思わず笑った。
雛は普段、おしゃべりでもない。
それでも、「うれしいきもち」「しあわせなきもち」を
感じたら言葉にする。
それは羽鳥の教育のたまものだ。
羽鳥は雛が小さいときから
「しあわせ?どんな風に幸せ?」
「うれしい?どんな風にうれしい?」
そうやって雛の言葉を引き出していたという。
彼女の言葉を通して雛の幸せの世界観に触れることが出来るのは
まさしく羽鳥のおかげだ。
目をとろんとさせた雛の額に口付けると彼女は
口元に微笑を浮かべたまますぅっと眠りに引き込まれていった。
「おやすみ・・・」
俺も彼女を腕の中に囲い込んで目を閉じた。

::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::

「CRACRA★Crazy For YOU!!」

「雛おいで。」
響くんがソファーに深く身を沈めながらしなやかな腕を私に伸ばす。
「あ、あの響くん?」
なんだかいつもと様子が違う。
なんだか雰囲気が・・・色っぽいというかなんというか・・・。
いつもは色っぽくないとかそんなんじゃなくていつも以上に色っぽいというか
というかというかというか・・・。
なんて表現したらいいかわからず、ただ私の頬にかかっと熱が上がってくる。
笑みを浮かべた口元に流すようにこちらを見つめるその目。
なんだか響くんの色香にくらくらと引き寄せられそうで
目が潤んでくるくらい火照る頬と自分の耳にまで早鐘が聞こえるほど
脈打つ心臓を抱えてふらふら彼に引き寄せられそうになる足を踏ん張る。
「おかえり響くん早かったね。」
カラカラな喉から何とか声を出した。
だってこのまま引き寄せられてしまったら理性なんかぶっ飛んで
とんでもない事をしてしまいそうで・・・
あぁ・・・そんなことになっちゃったら・・・さらに顔が火照ってくる・・・。
響くんは私のその返答がおきに召さなかったのか眉宇をひそめて
シャツの胸元を緩めた。
黒いスーツを着崩した響くんは成熟した大人の男性の色香を撒き散らして
私を絡めとるように視線をじっとこちらに向けてくる。
「おいで。雛。」
もう一度甘い声でささやくように響くんが言った。
もう考える暇もなくフラフラ、と響くんの伸ばす腕のほうへ歩み寄り
その力強い腕に引き込まれるがままに彼の胸の中に飛び込んだ。
「風呂はいってた?ん?」
響くんは私の首を両手で包むようにすると髪をかき上げ耳元でささやきかける。
吐息に思わず背筋が震えた。
私はただコクコクとうなづくしか出来なくて真っ白な頭を上下に動かしていると
響くんは私の首筋に顔をうずめ唇を這わせながらくすくす笑った。
「きょ、響くん酔ってる?」
おずおずと彼を見上げると響くんはそれはそれはきれいな笑みを浮かべて
微笑むので私は息をするのも忘れて見入ってしまった。
「早く帰りたかったから。」
響くんはそれだけいうとたどるように鎖骨に指を這わせていく。
『飲み会どうしても抜けられそうにないんだ。先に寝ておいて。』
響くんからそんな電話をもらって「おやすみ」って言葉を交わして
お風呂に入ったのにあがったら彼がいるんだもの。
響くんは猫をなでるみたいに私の顔を覗き込みながらあごの下をなでる。
ゴロゴロと鳴り出してしてしまいそうな自分の喉が怖い。
ついでにいうと妖艶すぎる響くんも綺麗すぎてちょっと怖い。
少し前に将也くんが響くんの事を「底なし」って呼んでいた。
お酒をどんなに飲んでも顔色一つ変えないからだそうだ。
でもでも、目の前の響くんは・・・
「ふ・・・ん〜・・・・。」
唇を重ねられると響君の舌が私を絡めとり、体はソファーに縫いとめられる。
アルコールの香りと私の体を探索していく響くんの大きな手の感触に
くらくらくらくら、私は自分の形を忘れて溶け出していく。
響くんは何を思ったか私からぱっと体を離すと
「ベット行く?」
ニヤリ、となんとも言えない意地悪そうな笑みを浮かべた。
早く連れて行ってとばかりに私は彼の首に腕を絡めてコクコクとうなづいた。
心も体も私のすべてが響くんを欲して騒いでる。
くらくらと、私は響くんに狂っているのです。