
Hot Summer By KEN
じわじわと沸いてくるこの暑さ。 この暑さが今、僕の立場を物語ってくれる。 「ホント、暑いわねぇ・・・」 「・・・そうだね」 気温のせいでもあるけど、もう一つ別の何かが暑さを物語ってくれる。 それは、彼女の存在かもしれないけど、別に悪い意味じゃない。 こういう事は、冬やもう少し涼しい時にやってくれると嬉しい事だ。 すすっ・・・ 少し動いた。 ちょっと、この体勢が辛くなってきたからだ。 左半身の方からくる柔らかい重さ・・・。 それは、ある意味心地良いけど、でもある意味他人から見れば暑苦しいのだ。 「ちょっと、なんで動くのよ」 「暑い・・・」 「そりゃ、こんな夏にクーラー壊れて、こんな格好していればね」 彼女は、何とも無いような顔をしている。 僕は内心ドキドキものだ。 彼女がこんなに傍に寄っている物だから。 「それじゃあ、少し離れてよ、アスカ」 「い・や・!」 そう、彼女は僕の左半身、正確に言えば、左肩に頭を乗せて身体を預けているのだ。 僕が左を向くと、アスカの顔がドアップで見えるのだ。 これじゃ、誰でなくても内心ドキドキ物だ。 まぁ、僕以外にはこんな事はしないだろうけど(惚気) 「あら、シンジはアタシとくっついていられなくて嬉しくないの?」 「・・・そりゃ、まぁ・・・嬉しいわ嬉しいけどね」 言葉を濁す僕。 嬉しいけど、暑いものは暑いのだ。 「いいじゃん」 「・・・はい」 「でも、不思議よねぇ」 「・・・何が?」 「アタシ達の体温と同じくらいの気温なんだから、普通、暑くないって言うか心地良い気温って感じに思えるけど。 なんで、アタシ達は暑く感じるのかしらね?」 「さぁ、どうだろうね。きっと、くっついているからじゃない?」 「馬鹿ね、そうしたら体温が低い方は高い体温の人から熱を貰って一緒くらいの体温になるんじゃないの? それに、合計してみると、体温が気温の温度より高くなるはずなんだから、クーラーが壊れた今、これが最良の策よ」 「・・・無理矢理、理論付けてない?」 「・・・分かる?」 アスカがニンマリと笑う。 何ていうか、悪戯っ娘だよなぁ。 一応、アスカとは付き合って一年ちょいだけど、未だにアスカの事は理解出来ていない。 人は、他人を理解出来ない存在だけど、ここまで理解出来ないのは珍しいと思う。 ・・・う〜ん、これでも惣流・アスカ・ラングレー研究家なんだけどなぁ。 「・・・なんか、それってすっごいストーカーぽいわよ」 「・・・そうかな?」 と、言うかアスカはなんで僕の考えている事が分かるんだろ? 「そりゃあ、アタシは碇・シンジ研究家だし、その成果があって博士まで上り詰めたんだから」 「・・・うわ、アスカもなんかストーカーぽいよ」 「そうかしら?」 「そうだよ」 「・・・ま、お互い様よ」 アスカは僕の事を理解してくれているみたいだ。 何か、ちょっと悔しいな。 「でもさぁ、ミサトさんが帰ってきて、この格好見たらどうする?」 「むぅ、それは辛いわね。明日から外歩けなくなるわ」 「そうだろうねぇ」 「・・・まぁ、アタシはシンジと一緒なら何でもOKだけどね」 「うわ、恥ずかし」 「う、うっさいわね」 少し顔を赤くして、怒鳴った。 まぁ、本気じゃないのは分かっているけど。 それにしても、アスカも大胆な事言うなぁ。 「ねぇ、どっか外行かない?」 「外?」 「うん、アイスでも奢るよ」 「そうね、そうしましょう」 「・・・道の先が霞んで見える」 「夏だからよ」 あまりの暑さに目の前が霞んでみえた。 ゆらゆらと辺りが蠢き、まるで蜃気楼の中にいるようだったけど。 きっと、彼女のせいでこの蜃気楼をより蜃気楼らしくしている気がするけど。 「どうしてよ・・・」 「アスカが僕にピッタリくっ付くから」 「あら、嬉しいんじゃない?」 「そりゃ、まぁ・・・」 確かに嬉しいけど・・・。 やっぱり、暑い。 「そんな事考えて・・・アタシの事好きなんじゃないの?」 「そ、そりゃあ、す、好きだけど」 「うふふっ、素直でよろしい」 さらに身体を密着させてくる。 ここまでくると、より一層暑いです。 「アイスクリーム屋さん発見」 天の助けだと僕そう思った。 暑い夏の中、一人店員が立ち続ける。 僕はその店員をとても偉大な人だと思った。 そして、超人だと思った。 こんな炎天下で汗一つかかずに、ひたすら客を待ち続ける彼の姿に敬服した。 「いらっしゃいませ、何にします?」 営業スマイルがとても眩しい。 蜃気楼で、少し店員の顔がぼやけて見える事があったけど・・・。 とても良い笑顔だと思った。 「ミントとのダブルとバニラのダブルを・・・」 僕はオーソドックスなバニラのアイスを頼んだ。 僕は、あまり変な物を混ぜたアイスは苦手だからだ。 アスカの好きなアイスはミント味の奴だった。 だから、暗黙の了解で、オーダーする時はミント味って事になっている。 「さっすが、アタシの好みを知り尽くしているわね」 「伊達に惣流・アスカ・ラングレー研究家って名乗ってないよ」 「あはは、そうね。・・・んじゃ、あそこで食べましょ」 「うん」 アスカが指差した、公園のベンチ。 結構、木陰が出来ていたので少しは涼しいかもね。 風がなくても日除けにはなる。 木さん、ありがとうございます。 暑いのを我慢して立っていてくれて。 なんとなく、お礼を言ってしまった。 「ん、美味しいわ」 「そっか、よかったね」 「シンジはどう?」 「美味しいとは、思うけど男だからね。あんまり、甘いものは好きじゃないよ」 「ふ〜ん」 アスカはそういって、何か考え出した。 最近のアスカの癖は口元に手を当てて考え事をするんだ。 惣流・アスカ・ラングレー研究家だから分かるんだ。 ・・・しつこいか。 ま、アスカの事だからね。 ・・・それも、惚気か。 夏の暑さのせいか、僕の思考回路は少し狂っているようです。 「シンジ」 「・・・何?」 パクッ 僕が反応してからはすでに遅し。 アスカの唇には、バニラのアイスクリームがついてた。 もう・・・。 「アスカ〜」 「いいじゃん、甘いもの苦手なんでしょ?」 「まぁ、そうだけど」 「なら、いいじゃん」 「はいはい、お好きな分だけ。食欲旺盛なお姫様だこと」 「・・・ていっ」 ポカッ アスカが僕にデコピンをした。 むぅ、少し調子に乗りすぎたか。 「う〜ん、アンタ最近、加持さんに似てきたわね」 「そっかな?」 そうなったら、大変だ。 すぐに治さないと(失礼) 「そうよっ!気障な台詞を吐けるようになったところがね」 「あはは、僕もそれだけ成長したって事だよ」 「ふ〜ん、成長か」 少し苦笑しながら、僕は空を見上げてみた。 大きな木の隙間から見える、青い空。 雲が、うっすらと浮かび、その雲が動いている様子をぼ〜っと見つめている。 夏だ・・・。 それ以上でもそれ以下でもない。 「んも〜、残り少ない夏休みなんだから有意義に過ごさないと」 「そうだねぇ、夏休みの課題もあと少し残っているし」 「そうねぇ・・・」 アスカも夏休みの課題の事を思い出したのか、少し憂鬱そうな顔をした。 僕と同じくして、空を見上げた。 「でもさ・・・今日くらいは、のんびりぼ〜っと過ごそうか」 「そうね」 僕はアスカに微笑みかける。 ・・・うん、いいじゃないか、こんなに天気が良くて、こんなに暑い日なんだから。 「ねぇ、アスカ」 「・・・何?」 「冬休みはさ・・・」 「うふふ、もう冬休みの話?」 「うん」 「で、何?」 「どっか、旅行に行けたいいね」 「そうね」 使徒がいなくなった今でも、僕達はこの街にいなくてはいけない。 エヴァもないのに、僕たちの必要性もあまりないのに。 でも、ここに留まらなくてはいけない。 きっと、『大人の事情』ってのがあるんだろうけどね。 今度・・・父さんに掛け合ってみよう。 僕は、生まれて初めての旅行ってのをしてみたいんだって・・・。 「じゃあ、何処に行きたいの?」 「・・・ん。なんかさ・・・雪の街って憧れているんだ。だから、そういう場所に行ってみたいな」 「そっか・・・。季節も普通に戻ってきたしね。運がよかったら雪の街ってのも見れるかもね」 「うん。今まで雪ってのを僕は見た事がないからね。一度、見てみたい」 「そうね。満面の白銀の世界ってのもいいわね」 アスカはその世界を想像したのか、目を細めている。 「それじゃあ、父さんにも頑張って掛け合ってみようかな」 「頑張れ、シンジ!」 「アスカも助けてよ〜」 「分かってるって」 アスカは、にっこりと微笑み、僕にその顔を見せた。 夏の少女だ。 やっぱり、君は夏が似合うって思う。 暑い夏。 だけど、日差しが強く、そして、その強い日差しをも味方にする、君。 そんな事を思った、夏の日のある一日の出来事。 Fin 後書き ・・・うわ、なんか凄く手抜きっぽい(爆 でも、これでも精魂込めて書いたんですけどね(苦笑 暑い夏の日をイメージして書いてみました。 どうでしょう? 感想をお願いします。 KEN