
「記念日」
by 蘭麻
(・・・ジ・・・)
「ぅ〜〜ん・・・」
(・・・・ンジ・・・)
「ん・・・・」
(・・・・カシンジ・・・・・)
「もう少し・・・・」
「ばかシンジ! 起きなさい!!」
「はっ! アスカっ!! ご、ゴメン!」
何かいい夢を見ていたような気がするんだけど、・・・完全に吹き飛んだ。
「いつまで寝てるのよ。休日だからって、夕べ夜更かししたでしょ!」
その通りだった、今日は祝日だから、夕べ遅くまでレンタルで借りたCDを録音してたんだ。
時計を見ると9時半。 目覚ましはかけたはずだったけど・・・、止めちゃったんだな・・・。
「あんたアタシとの約束を忘れたわけじゃないわよね」
もちろん覚えている。
一週間前から散々言われ続けていたから・・・。
恐る恐るアスカの顔を見ると・・・。
ふぅ・・・、よかった。
ふくれっ面だけど、本気で怒ってないようだ。
「まったく普段からぼ〜っとしてるから、大事な日までこんなことになるのよ」
ぶちぶちと文句を言い続けるアスカはもう既に出かける準備をし終わっているようだ。
「アスカ・・・、その服・・・」
「えっ?・・・そうよ、あのときの服」
クリーム色のワンピース、首に青いリボンを巻いている。
「だってさ、この方がシンジ喜ぶと思って・・・」
照れながら誇らしげに抜群のスタイルを見せ付けるようにクルリと一回転するアスカ。
遠心力によってふわりと浮き上がるワンピースの裾・・・。
「・・・白だ・・・」
思わず口から出てしまった・・・。
あの時のようにビンタが飛んでくるかと身構えたが、アスカは『きゃっ』と言って裾を押さえて赤くなっただけだった。
まあ・・・そうだろうね・・・。
「アスカ、着替えるからさ・・・」
「あ・・・、うん。 リビングで待ってるから・・・」
今日、僕たちの記念日なんだ。
ちょうど一年。
僕たちが、お互いの気持ちを打ち明けた日から・・・。
全てが終わり、平凡な日常生活だったけど、アスカのおかげで僕はこうして生きている・・・。
アスカもまた・・・。
何度も死んだほうがましだと思った。
でも、僕以上に苦しむアスカの姿を見て、僕は変わることを決意した。
アスカのために・・・。
本当に二人で支えあって生きてきた。
多分これから先も・・・。
僕らはまだ高校生だけど、他の人たちの何倍も辛い思いをしてきた。
だからこれから先の人生は、他の誰よりも幸せにならなければいけないんだ。
僕のこの手でアスカを幸せにする・・・。
リビングでアスカは紅茶を入れていた。
一年か・・・。
一年前、このマンションに引っ越してきた。
第3東京市を離れ、近郊の町で暮らし始めた。
あの迎撃都市は、壊滅的なダメージを受け、今もまだ復興の真っ只中にある。
僕らが住んでいたあのマンションは無事だったけど、あまりにも大きすぎる辛い思い出のために離れることにしたんだ。
アスカはこの町に来てからよく笑うようになった。
この町に来てよかった・・・。
「シンジ、冷めないうちに飲みなさいよ。今パンを焼くから・・・」
僕は、急にアスカを抱きしめたくなって・・・。
「・・・アスカ・・・」
「し、シンジ・・・・」
パンの焼ける香ばしいにおいの中、僕らは抱き合った。
「アスカ・・・・」
「なあに、シンジ・・・」
こうしていると、アスカの温かさが伝わってきて、僕は時間が止まってしまうように感じる。
「ちゃんと言って」
アスカが僕の言葉を求める・・・。
僕は黙ったままだ・・・。
「ちゃんと言ってくれなきゃダメ・・・」
そうだね・・・、ちゃんと言わなきゃ・・・。
僕は毎日アスカに言う台詞を口にする。
「アスカ、愛してる・・・」
「アタシもシンジを愛してるわ・・・」
パンが焼けあがった音がしても、僕たちの口づけは続いた。
「今日も暑いわねぇ〜」
外の日差しは容赦なく照りつけたが、空気はカラッとしていた。
「ねえシンジ、腕組んでいいでしょ?」
僕は黙って腕を差し出した。
「うふっ」
にこやかに両手で僕の腕に絡みつくアスカ。
今日は一周年だから・・・。
僕たちが初めて出逢った所へ・・・。
もちろん太平洋の上は無理だから、新横須賀までお出かけ。
寄り添いながら、一年間の思い出を語り合いながら・・・。
アスカ・・・、ありがとう・・・。
〜fin〜
みなさんコンニチハ!
蘭麻です。
今回「KENの部屋」がめでたく一周年を迎えられましたので、お祝いに書かせていただきました。
日頃仲良くしていただいているKENさんですが、私にとっては、弟のようでもあり、息子のようでもあり。
そして、大切な友人です。
このHPに来られるかた、共に一周年を祝ってください。
そして2周年も更に多くの方々と祝えることを信じて・・・。