
サードインパクトから一年ほど経った。
シンジたちは以前と変わらない生活を送っている。
まるで何も無かったかのように。
それがシンジの望みだったから・・・。
しかしいくつか叶わなかった・・・、いや、望みたかったが望めなかった事があった。
一つは車だ。
シンジは車が好きだった。
第三新東京市に来る前も車のプラモデルを作ったり雑誌を読み漁ったりしていた。
だからシンジは早く車を運転したいと思っていた。
だが免許は18歳にならないと取れない。
まじめなシンジは決まりごとや社会のルールを破るようなことはしない。
破るかもしれないが、できるだけ破りたくなかった。
というわけで、結局シンジは18歳まで待つことにした。
そして後一つある・・・。
アスカだ。
シンジはアスカのことが好きだった。
いや、それを凌駕していた。
「アスカ・・・。」
他人を好きになることなどないと思っていたシンジだが、アスカに逢ってその思いは消えた。
「(もう駄目かもしれない。)」
シンジはもう耐えれなかった。
想いを伝えられないもどかしさに・・・。
シンジはつらい事があったり、どうしようもなくなったときは車のことを考えるようにしていた。
そうすることで気がまぎれた。
自分の乗りたい車に乗ってる情景を浮かべる・・・。
「ユーノスロードスター」
20世紀の終わりごろにデビューしたその車を見たとき、シンジは「これだ!」と思った。
1600cc(テンロク)ツーシーターのオープンカー。(1800ccもあるが)
今はほとんど見なくなったリトラクタブルライト。(パカッとライトが開くやつ。)
1tをきる軽い車体。
FR(フロントエンジン、リヤドライブ)という、車体をアクセルでコントロールできる駆動方式。
その全てがシンジを魅了した。
それに出会ったときシンジは、
「こいつを買って、隣にお嫁さんを乗せて走りたいなぁ。」
と思っていた。
今はまだ16歳。
みんなと同じ学校に行きつつ、ガソリンスタンドでバイトをしながらお金を貯める。
家事はアスカがほとんどやるようになったので、その辺に心配はなかった。
放課後・・・。
アスカからその事を聞き、ヒカリはいきなりどうしたのかと不思議に思い聞いてみた。
するとアスカは顔をピンク色にしてこう答えた。
「は、花嫁修業よ!!」
「へっ?」
「・・・。」
少し間を置いてからヒカリはもう一度聞いてみた。
「誰のお嫁さんになるの?」
何となくわかったような気がしたが聞かずにはいられなかった。
「・・・、誰にも言わない?」
そううつむきながらアスカが聞き返す。
それはかなりかわいい図だった。
遠目にアスカの事を見ていたシンジは顔を真っ赤にしながらその場を離れた。
ほぼ毎日あるバイトのために・・・。
そしてアスカはボソッと答えた。
「シンジのお嫁さんになりたいの・・・。」
「(やっぱりね。)やっと素直になったのね、アスカ。」
「うん♪」
「じゃあ告白したの?」
「・・・まだよ。最近いつも疲れて帰ってくるから、何となく切り出せなくって・・・。」
「そうなの・・・。そういえばアスカは碇君がバイトしてる理由知ってるの?」
「ううん、ヒカリは?」
「アスカも知らないのに私が知るわけないでしょう?」
「そっ、そう?」
「そうよ♪」
「でも、どうしてかなぁ。」
「何が?」
「シンジがバイトしてる理由。」
「おこづかい稼ぎ?」
「それにしては一生懸命すぎるわ。」
「アスカへのプレゼント。」
「それならうれしいけど、たぶん違うと思う。」
「誰か知ってそうな人はいないの?」
「・・・、もしかすると・・・」
「誰かいるの?」
「うん、シンジのお父さんなんだけど・・・。」
「えっ?でも・・・」
「あのね、ネルフでの戦いが終わったあとに指令が謝ってきたんだって。」
碇ゲンドウ。
彼もまた、苦しんだ人間の一人だった。
自分の妻のために。
いや、シンジのために休むことなく働きつづけた。
初号機に取り込まれたユイを助ける。
シンジには私よりユイが必要なのだ。
冬月コウゾウはそのゲンドウの思いを知り、自分にできることをしようと心に決めた。
人の道に外れた事も数え切れないほどやってきた。
そのためにユイを裏切る事もした。
そうしていくうちに、もう自分はシンジの父親だと胸を張る事ができなくなっていった。
だから突き放した。
もうシンジに自分は必要ないのだと・・・。
だが、いつも見ていた。
一度だが誉めてやる事もできた。
数えるほどしかないシンジとの会話は、全て覚えていた。
彼ほど悲しい父親はそういないだろう。
生まれもっての不器用さがそうさせたのかもしれない。
それでも自分を犠牲にしてまで家族のために尽くした、いや尽くしているこの男のどこが外道だろうか・・・。
父親の鏡とはいえない。
でも立派な父親だ。
その事をサードインパクトのときに知り、謝ってきた事でシンジの心からゲンドウに対するわだかまりは消えた。
それ以来シンジはゲンドウとよく話をするようになった。
かつてほど忙しくなくなったゲンドウは、常にシンジを優先に生活していた。
ゲンドウの愛車、フェアレディーZでドライブにも行ったりした。
秘密で運転の練習なんかもしたりした。
楽しかった。
嬉しかった。
シンジも、ゲンドウも。
二人ともたまに泣いてたりした。
それをシンジから聞いたアスカはうらやましく思った。
自分はシンジのようにいかなかったから・・・。
アスカの両親はアスカに見向きもしなかった。
だがアスカは落ち込まなかった。
シンジに想われていることを知ったから。
シンジに想われて、ここにいるのだから・・・。
アスカが気づいている事をシンジは知らない。
だからシンジはすべてアスカに秘密で事を進めていた。
「・・・というわけなの。」
アスカは自分の知ってることをヒカリに話した。
「そうだったの・・・。」
「だから、指令なら知ってるかもしてない。シンジがバイトする理由。」
「そうね。なら早いうちに聞いたほうがいいわ。思い立ったが吉日ってゆうし♪」
「そうね♪今から行ってみる。」
ネルフ総司令室・・・。
アスカはシンジの事を聞くためにここにいた。
「どうかしたか?アスカ君。」
「司令。シンジの事で聞きたいことがあるのですが。」
「シンジの事でか?わかった。言ってみなさい。」
「はい、ありがとうございます。実はシンジが高校に入学してからずっとバイトしてるんです。」
「ふむ。」
「何でバイトを続けるか聞いたんですが、教えてくれないんです。」
「なるほど、それが知りたいのか。」
「はい、お願いします。」
「すまない。その質問には答えられない。」
「!そんな!!」
「話を聞いてほしい。シンジにも思うところがあるのだ。その目的のためにシンジは頑張っている。それを聞いたときはさすがに私は無理だと思ったよ。だがシンジは言い切った。「必ずやり遂げて見せるよ。だから誰に聞かれても、たとえアスカが来ても黙ってて欲しいんだ。お願い、父さん。」その時のシンジの顔は間違いなく男の顔だった。だからもう少し待ってやってくれ。シンジも私に似て不器用なのだよ。」
「何がですか?」
「そうだな・・・。強いて言うなら自分自身に・・・といったところか。」
「自分自身に・・・ですか。」
「そうだ。だから待ってやって欲しい。」
「・・・、信じてるんですね。」
「ふっ・・・、問題無い。シンジは私とユイの息子だからな。」
久しぶりのセリフだ。
だが、昔のように冷酷ではない。
むしろ、暖かいとアスカは思った。
「わかりました。待ちます。」
「ありがとう。お礼にヒントを教えよう。ヒントを言うなとは言われてないからなぁ。」
そういいつつゲンドウは「フッ・・・、」と笑った。
「二年だ。二年以内にシンジは行動を起こすはずだ。」
「ありがとうございました。では・・・、」
「少し待ってくれ。もうひとつ話がある。」
「?」
「またシンジの事なんだが。」
「はい。」
「明日から私は仕事が忙しくなる。2.3ヶ月ほどなんだが。」
「なにかあったんですか?」
「ああ。ユイのサルベージを行う。」
「シンジのお母さんの?」
「ああ、そうだ。やっと手はずが整った。」
「大丈夫なんですか?」
アスカは心配だった。
シンジのときは紙一重だったから・・・。
「ふっ・・・、心配ない。ユイは必ず帰ってくる。(未来のシンジの嫁がいるのだ。帰ってこないはずはない。)」
ゲンドウはアスカに言い切った。
こうゆう事はずばっと言い切り相手を心配させない。
やはりシンジはゲンドウの息子だった。
「わかりました。シンジの事は任せてください。」
「よろしく頼む。」
それから3ヵ月後、碇ユイは生還を果たした。
当時の姿のままに・・・。
そして2年ほど月日は流れる・・・。
そう、まるで穏やかな風のように・・・。
あとがき
皆さんこんばんわ、悠蔵です。
ほとんど一ヶ月ぶりの作品となりました。
シンジ君が車好きという、私好みというか都合のいいように書いてます。
もしかすると毎回こんな感じかも・・・。
うぬぬ・・・。
私は幸せという絵がとても好きで、自分もこうなれたら・・・とか思いながら書いてます。
シンジの勇気は私を奮い立たせ、アスカさんの一言一言が私を元気付けてくれる。
これだけで少し幸せです。
今回出ているユーノスロードスターという車は、私が一番乗りたいと思う車です。
車に興味をもち始めた当初はオープンカーなんてと思ってたんですが、そのスタイルに魅せられました。
コンパクトな車が好きな私にとって、これほど走って楽しそうな車は無いと思っています。
ですが、あるしがらみがあって買えなくなってしまいました。
悲しいです。
ですが、隙あらば必ず手に入れてみます。
車を手に入れたらば、すぐにでも車の部屋に写真とかいろいろ載せますよー。
ありがとうございました。