
過ぎゆく日々…。
シンジはもちろん、アスカも想いを伝える事は無かった。
ゲンドウから聞かされたシンジの決意。
そして必死に働くシンジを見ていると不思議と不安にならなかった。
シンジも何となくではあるがアスカの想いを感じ取っていた。
告白するチャンスはいくらでもあった。
シンジにしても、アスカにしても…だ。
それでも何も無かった。
周りから見てみるとすでに付き合っている仲に見えたようだが…。
だが、ついにシンジが動き出した。
2019年、5月…。
誕生日の一ヶ月前にシンジはそれまで続けてきたバイトを止めた。
そしてその足で自動車教習所に向かう。
手続きを終え、シンジは一週間後に入所が決まった。
次に前から気になっていた中古車屋さんに行く。
そこには赤色のロードスターが置かれていた。
それを見てシンジは安心した。
すでに予約状態では逢ったが、不安でたまらなかった。。
毎週一回は確認のためにここへ来ていた。
「すみません、どなたかいらっしゃいませんか?」
はやる気持ちを抑えながら、店の人間に呼びかける。
「ん?君か。いらっしゃい。」
すでに顔なじみらしい。
そうして店員はシンジの前に現れた。
30歳ぐらいの小太りの男。
シンジが高校にあがったときぐらいからの付き合いだ。
「あの車ならしっかり守ってあるよ。また見に行くかい?」
すでに予約状態らしい。
「はい。お願いします。」
シンジは間髪いれずに答えた。
20年程前の車になるが、見事に保管されていた。
その車体は色あせることなく、帆もしっかり張られている。
エンジンルームもきれいにされており、どこを見ても旧車というイメージを持たせなかった。
「来週から教習所に通うんです。」
唐突にシンジが話しだした。
「ですから、もう少しだけお願いします。」
「そうか。長かったね、シンジ君。車のことは心配しなくていい。これはもうシンジ君の車だよ。」
「ありがとうございます。仮免が取れたらお金を払いにきます。」
「お金はいいんだ。シンジ君。君はここに来る度に何かを確認に来たんだろう?もちろん、ロードスターもだろうけどもっと大事な何かが俺には見えたんだ。」
「…。」
シンジは驚きながらも黙って話を聞いた。
「で、最近わかったんだよ。一生添い遂げたいって思える女性のためなんだなって。何となくだけどね。」
「何でわかったんです?」
「俺も好きだった娘を手に入れるために一生懸命になってた事があった。あのロードスターも、そのために俺が手に入れたものだったんだよ。」
「その女性とはどうなったんですか?」
「あの車でドライブに誘った。んで、何とかOKしてくれたんだ。まぁいろんなとこ行ったけど、最後は芦ノ湖にいって…。そこで告白した。ずっと好きだったって。」
「…。」
シンジはじっと聞いていた。
まるで自分の事のように…。
「そしたらその娘泣き出しちゃったんだ。そのとき俺、絶望感でいっぱいになったよ。その娘はこの世のものと思えないほどきれいな女性なんだ。だから俺みたいなやつにこんなこと言われたから泣いたんだって…。そのとき本気でそう思った。」
その店員は「ふっ・・・」と自嘲気味に笑った。
「でもさ、違ったんだ。その娘、俺の顔見てはっとなってさ。慌てて言ってくれたんだ。「私も好きだった」って。できすぎだろ?」
「いえ、そんな…。」
「その後いつから好きだったかってはなしになったんだ。その前に言っとくけど、俺たち幼稚園の頃から一緒だったんだよ。でもうまい具合にクラスが離れてな。高校卒業するまでに二回しか同じクラスにならなかった。最初は幼稚園に入った年で、最後は中学の三年だった。長い間近くにいたんだけど、気軽に話しのできる仲ではなかったんだ。で、俺はその中学の三年のときに女性として好きになったと言ったんだ。彼女はどう言ったと思う?」
「さぁ…。」
「聞いたら信じられないかもしれないな…。幼稚園のときから好きだったってゆうんだよ。俺もさすがにびっくりしたよ。その娘いじめられてたんだよ。なんでかは忘れたけど。そのときいつも俺が助けてたらしくてさ、それ以来ずっと俺を見てくれてたらしい。」
「すごい話ですね…。」
「ああ、俺もすごいと思う。それを聞いたとき嬉しかったよ。こんな太ってて不細工で車バカな俺に振り向いてくれるなんて思えなかったからなぁ。泣いたぞ、俺。」
「僕も泣くと思います。こんな事聞かされたら。」
「そういうわけで、あの車はゲンがいいんだ。シンジ君もきっとうまく行くよ。」
その店員はできる限りの笑顔でシンジに話した。
「そんな大事な車を僕がもらってもいいんですか?」
「ああ、シンジ君には頑張ってもらいたいしね。頑張る君を見てると絶対うまくいって欲しいって思うんだ。車って維持するだけでもかなりお金がいるからね。こいつは君にあげる。ういたお金で何かプレゼントでも買ってあげるといい。」
こんなに応援してくれてる。
シンジはその思いに答えるためにも車をもらう事にした。
「では頂きます。」
「ああ、免許を手に入れたら取りにおいで。それまでに書類をまとめておくから。」
「なにからなにまでありがとうございます。」
「しっかりな!!」
「はいっ!」
そうしてシンジはその車屋さんを後にした。
店員はそんなシンジをずっと見ていた。
まるで何かを思い出すかのように…。
しばらくして後ろから店員の事を呼ぶ声がした。
「あなた…、お昼持ってきたわよ♪」
「ありがとう。」
そういいながら振り向くと、髪の長い美しい女性がいた。
シンジが見たらびっくりしただろう…。
まるでアスカのような女性だったから…。
「あら、髪の毛がボサボサよ。襟も立ってるし。髭も残ってるじゃないの。もっとしゃんとしなさいな。だから若く見られないのよ。」
ぷんぷん怒りながら自分の夫に注意する。
「いいじゃないか。周りにいくつに見られようと俺は間違いなく20歳なんだ。それに今日はこいつの手入れの日だったから早く来たかったんだ。」
そう言いながらロードスターの前まで歩いた。
「ああ、彼に譲るって言ってたわね。」
「うん。俺たちを結びつける手伝いをしてくれたこいつのことをさ、まるであの時の俺みたいに見てたからなぁ…。譲る気になったんだ。」
「そうなの。あなたが言うなら大丈夫みたいね。あなたの人を見る目は一級品だし。」
「そりゃそうだ。なんたって君を好きになったんだから…。」
「フフ…、ありがと。」
「そういえば、五ヶ月ぐらい経ったか?」
端から聞くと何のことかわからない。
「そうよ、あっという間の五ヶ月ね。」
その女性はお腹をさすりながら言う。
その顔はきれいな女性の顔から、母の顔になっていた。
「なぁ。」
「なに?」
「もう一度、こいつでドライブに行かないか…?」
「大丈夫なの?」
「うん。心配は要らないよ。実際走ってみて調べる事もあるしね。それに家族が増えるともう、こいつには乗れないから…。だからその前にもう一度、君と風になりたいんだ。」
「わかったわ。じゃあいつ行く?」
「今から…。」
「それはいくらなんでも…、」
「ちょっと待ってて!」
店員は事務所に入った。
しばらくして走って出てくる。
「店長にOKもらった。行こう!」
「はい、あなた。」
ロードスターに灯が入る。
吹けあがるエンジン。
少し低めの音だが迫力のある排気音。
そうして二人を乗せたロードスターは走っていった。
「峠を攻めるなんて言わないでよ。念のために言っとくけど…。」
「わかってるよ、もう走り屋は引退したんだし。何より大切な君とお腹に子供がいるんだし。」
「安全運転でお願いね♪」
「わかってるよ、ア・・・。」
シンジが夢に見たような光景がそこにあった。
店員の男は祈っていた。
シンジがうまくいくことを。
その奥さんも祈っていた。
相手の女の子が笑顔でこの車に乗ることを。
そして二人は再びロードスターと風になった。
あとがき
皆さんこんばんわ、悠蔵です。
LIKE THE WIND中編に来ました。
本当は2話で終えるはずだったんですが、なんか長くなったんでここで切ります。
というより、LASにならないんですよねぇ…。
いろんな作家様の話を読んだんですが、本当にすばらしくてLASなんですよ。
複線が長いのか車にこりすぎなのか、はたまた…。
今の私のはこれが精一杯のようです。
でもこれが限界じゃないはずです。
向上しますよー。
頑張ります。
今回はLASじゃなくて、20歳カップルがラブラブなんですよ。
こんな感じでLASを書けばいいのかなぁ…。
この二人の幸せをロードスターと共にシンジ君、アスカさんにおすそ分けしようってな感じなんです。
で、後編に続くんです。
どーなるか、結果は予想のとおりだと思いますがひとつ楽しみに待っていただきたい。
説明不足で読みにくい文かもしれませんが、よろしくお願いします。
ではまた。