LIKE THE WIND

2001.10.25
書き人 悠蔵


後編 永遠に想う…



 惣流・アスカ・ラングレー











僕の心にいつもいる存在。



この世の何よりも愛しく、大切なんだ。



いつも僕の隣にいてくれた。



そしてこれからも隣にいて欲しい…。







六月某日、日曜日。



僕はこれから一世一代の大勝負に出ようとしている。



後は…、ない。



あるわけがない。



あるとすれば、それは闇…。



アスカのいない未来…。



それは僕にとっては闇…。



いや、それ以上かな…。



正直言って怖い。



アスカは僕の事、どう思ってるんだろう。



同居が始まって三年とちょっと…。



特に何かあったわけじゃない。



あったとすれば、アスカが学校やNERVでも自然に笑うようになった事…かな。



あの頃はいつも張り詰めてたから…。



でも、今はそんなことない。



まぁ、わがままぶりは変わらなかったけどね。



でも嬉しかった。



アスカが僕を許してくれた事も、ここに残ってくれた事も何もかも…。







「シンジ?」





「なに?アスカ…。」





僕の想い人…。



いきなりだと心臓に悪いな…。







「なんだか深刻そうな顔してたから…。」







顔に出てたんだ…。



ポーカーフェイスなんて意識しないでできることじゃないな。







あ…、チャンスだ。



これを逃したらいけない。



よし、覚悟を決めるぞ!



碇シンジ!!





ついに僕はアスカに切り出した。





「アスカ、今日これから用事ある?」





「何もないけど…。どっかつれてってくれるの?」





溢れそうな笑顔で答えてくれる。



これだけで僕は…。



この笑顔を守りたい。



君を傷つけるすべてから。





「うん。見晴らしのいいところに行きたいんだ、アスカと一緒に。」



「ほんとに?じゃあ準備してくるね♪」



自分の部屋に向かおうとするアスカ。





「アスカ。」



「どうしたの、シンジ?」



この日のために頑張ったんだ。



だから…。





「今から行かなきゃならないところがあるんだ。1時間ぐらいしたら帰ってくるから、準備できても待ってて欲しいんだ。」



「この私を待たせようってえの?いい度胸してんじゃない!」



怒ったようで怒ってない。



どっちかって言うとべそかいたような感じ。



可愛いんだ、アスカのこんな顔も。



「うん、どうしても行かなきゃならないんだ。だから待ってて欲しい。」



なんか考えてる…。



ばれたかな…、まさかね。







「わかったわ、待ってる。でも遅れたら駄目よ。約束は守るためにあるんだからね!」



「うん、ありがとう。じゃあ行ってくるよ。」



「行ってらっしゃい♪気をつけてね!」



アスカに見送られて僕は外に出た。







最初は一番近くにあった宝石店に行く。



ここで一年前に指輪を頼んだんだ。



結婚指輪とか婚約指輪とか、はっきり言ってわからない。



だから僕が頼んだのは誓いの意味をこめた指輪。



といっても結婚指輪も誓いのためのものだろうけど…。



こんなところが子供なのかな、僕って。







お店の自動ドアをくぐると真っ先にカウンターに向かう。





「すみません、一年前に指輪を頼んだ碇です。」



「はい、碇様ですね。少々お待ちください。」



そう僕に言って店員の女性は店の奥に入っていった。







しばらくして小さな箱を持って戻ってくる。



「碇様、ご注文の品はこちらでよろしかったでしょうか?」



中身を見てみる。





シンプルなリングに、かなり小さい蒼いきれいな石がついてる。



内側には頼んであった字も彫られている。



「はい、間違いありません。」



「かしこまりました。お値段ですが…。」











「ありがとうございました。」



「こちらこそ、ありがとうございました。」



そういって僕は店を出た。







もう二十分か…。



あの車屋さんまではちょっと遠いからなぁ…。



急ごう。



自然と早足になる。



通いなれた道。



僕はこの日のために頑張った。



誰よりも、アスカの近くにいるために。





気がづくと僕は走っていた。



理由なんて考えなくてもわかってた。



早くアスカと一緒に、この車に乗りたいんだ。



そして僕の精一杯のまごころを伝えたい。



そして…、







「すみません!碇です!」



店について早々、シンジは声を上げた。



「やあ、シンジ君。待ってたよ。」



あの店員が出てきた。



いつも彼は笑顔でシンジに答えた。



「免許取りました。指輪も買ったんです!」



「指輪まで買ったんだ。すると、今日かい?」



いつものように判りにくい言葉で聞く。



彼の癖だ。



でも、シンジにはわかった。





自分の事だから・・・ね。





「はい、今日、アスカに伝えます!僕の想いを。」



「!?アスカさんってゆうのか、シンジ君の好きな女性は。」





彼は驚いていた。



それはあまりにも身近な名前だったからだ。



「はい。同い年の娘なんです。」



「そうか…。しかし、ついにこの日がきたんだね。なんだか自分のときの事を思い出すよ。」



彼は懐かしそうに思い出に浸る…。



「おっと!こうしちゃいられないな。シンジくん!」



「はい。」



「俺はこういうとき、君に何もしてやれない。強いてあげるとすれば車の世話ぐらいだ。だからこそ、悔いのないようにしなきゃならない。君にとって今が人生の峠だろう。ヒルクライムをするとき、中低排気量の力のない車は勝負にならない。だけど上る事はできるんだ、ゆっくりでもね。そこからが勝負だ、絶対に諦めるな!俺の言いたいことはこれぐらい…かな。」





あいかわらず判りにくい例え。



でも…、確かに伝わった。



「はい!ありがとうございます!」



「相変わらず、わかりにくくてすまない。」



「確かにわかりにくいかもしれませんけど、伝わりましたから…。」



「そうか…。じゃあ行こうか。ロードスターのところへ…。」



ついにこの時がきた。



憧れつづけたこの車に乗るときが…。



「エンジン共々、こいつは元気だよ。快適に乗れるようにチューンしたんだ。マフラーもいいやつに変えたしフードも新品。そのほかにもいろいろやった。安心していい。」



「本当に何から何までありがとうございました。」



「礼はいい。それより早く帰った方がいい。君のお姫様が待ってるんだろ?」



「そうだった!じゃあ行きます。」



「おう!頑張ってこい!」



「はい!また来ますから!」



シートに座り、セルを回す。



静かに…、だが力強くロードスターに灯が入った。



心地のいいエキゾーストノートはまるでシンジの心のようだった。





シフトをローに入れ、アクセルをあおりクラッチをつなぐ。



それは教習所での練習よりも自然にできた。





















その頃アスカは用意も終え、シンジを待っていた。



そろそろ一時間ね。



どこまで行ったのかしら…。





「ピピピ・ピピピ・ピピピ…」





そのときアスカの携帯が鳴った。



「シンジ?」



「アスカ、もうすぐ着くからマンションの前に出てて!」



「わかった。気をつけて帰ってきてね。」



「うん。」







きれちゃった…。



なんだかシンジ、嬉しそうだったなぁ…。



どこに行ってたんだろ。



でも今日は朝から変だったわ…。



どっかで見たことあんのよねぇ…、シンジのあの顔。











ウォン ウォン











そのときアスカの耳に聞いた事のない、しかしなぜか心地のよい音が聞こえた。



なんだろう、この音…。













シンジ?













赤い車がこちらに走ってくる。





いい音…。



なんでかな?





そして目の前に止まった。





「アスカ。」



シンジだ。



「これシンジの車?」





オープンカーなんだ。





「うん。実はこいつを取りに行ってたんだ。」



「へぇー。これで私を驚かすつもりだったの?」



「うーん…。半分正解…かな。」



半分?



「じゃあ行こう、アスカ!」



そう言うとシンジは助手席のドアを開けた。



妙に気が利くわねぇ…。



こんな事、アタシが言わないと気も付かないようなやつだったのに…。







「どうぞ。」







私の大好きな笑顔。



私に向けてくれる顔の中では一番好きな顔。



いつまでもこの笑顔で見守られたい。







「ありがと、シンジ♪」



乗ってみてわかったけど、ちょっと狭いわねぇ…。



外から見ても小さかったし…。



でもこっちの方がいいかも。



だってシンジを身近に感じれるから…。









「行くよ、アスカ。」







シフトレバーを操作してるシンジ…。



ミサトのように乱暴ではない。



何をやらせてもやさしいんだね、シンジは。



フードは最初から開いてた。



風が気持ちいい…。



髪の毛が乱れるけど…、いっか。



今日ぐらい・・・ね。



そういえばどこに行くのかしら。





「シンジ、これからどこに行くの?」





運転してるシンジ…、なんか嬉しそう。



あたしが隣にいるからかなぁ…。



そうだといいな…。







「うん。僕がこの町にきたときにミサトさんが連れて行ってくれた場所なんだ。夕焼けがとてもきれいだったからアスカにも見せてあげたくって。(それだけじゃあないけどね。)」



そうなんだ…。



「今すぐ行っても仕方ないからこの車でいろいろ行きたいんだけど…、いい?」



もう、そんなこと聞かなくてもシンジの行きたいところに行けばいいのに…。



相変わらずねぇ…。



「アスカ?」



「シンジの行くところならどこにでも着いていくわよ。任せたからね!」



「わかった。気分が悪くなったりしたらすぐに言ってね。」



「ふふっ、ありがと。」







何年経っても車を運転するようになっても、やっぱりシンジってシンジなのね。



どこまでもやさしい…。



ずっと隣にいたいなぁ…。



シンジといるだけでアタシは幸せなの。



気づいたのは最近じゃないんだよ?



でも、シンジは気づいてないんだろうなぁ…。











もう我慢できないよ、シンジ…。







ずっと一緒にいたい。







ずっと笑いかけて欲しい。







アタシだけを見て欲しい…。









「ん?」





シンジがなんだろうって声をあげる。





「どうしたの?」



「うん。後ろの人があおってるんだ…。ライトをチカチカさせてるだろ?」







ほんとだ。



変な改造したワゴンが近くまで車を寄せてる…。



シンジ…、どうするの?



アタシだったら…、きっとスピード上げるだろうなぁ…。





「どうするの?」



「別にどうもしないさ。交通規則破ってるわけじゃないし。」





のほほんとしてるわねぇ…。



シンジらしいわ。



すると後ろの車が追い越してきた。







すごい音…。



なんでこんなふうにするのかしら…。

















「もう夕焼けだね…。」







きれい…。



こんなふうに景色を見たことなかった。



そうしているうちに展望台みたいなところについた。



あまり人はいない…。



これって穴場ってことかしら…。



















ついにこの時がきたんだ。



アスカに僕の気持ちを聞いてもらうんだ。





「アスカ、降りようか。」



「うん♪」





この笑顔、ずっと見ていたい。



君の全てを、僕のものにしたい…。





「わぁ…、きれい。風も気持ちいいね!」



「うん、そうだね。」







やっぱり怖い…。



もし僕の事、何とも想ってなかったら・・・。



これが最後になっちゃう。



でも…。



乗り越えなくちゃ!



あの店員さんだって頑張ったんだ!



僕も…。



逃げちゃ駄目だ!!







「アスカ!」



「どうしたの?シンジ。」



「聞いて欲しいことがあるんだ。」













なんだろう…。



すごい真剣な顔…。



エヴァに乗ってたときぐらい。



もしかしたらそれ以上かも…。











(二年だ。二年以内にシンジは行動を起こすはずだ。)















確か司令がそう言ってた。







まさか!





期待していいの?





シンジ…。



















「僕さ、車だけだったんだ。心を許せたの…。いじめられて、友達もできなくて…。父さんにも捨てられてと思って…。車は僕を捨てたりしない。大切に扱えばそれに答えてくれる…ってね。」



「…。」



「こっちにきても、それは変わらなかった。自分の車があったわけじゃないけどね…。でも、そんな僕の心に簡単に入ってきた人がいるんだ。」











「アスカ、君だよ。」



「アタシが?」



「そう。船の上で君に会ったとき、君がとても輝いて見えた。とっても元気で前向きで…、ちょっとお転婆だったけど…。一緒に住むようになって、エヴァでチーム組んで、一緒に学校に通って…。いっぱい見てきたよ、アスカの事。」



「アタシも…。いっぱい見てきた、シンジの事…。やさしいところも、家事をしてくれたとこも、わがまま聞いてくれたとこも…。アタシがピンチの時に来てくれたとこも、いっぱい、見てきたよ!」



「そうなんだ。ありがとう、アスカ。」



「アタシも…、ありがと!」





























「好きだ!アスカ!」









アスカ、びっくりしてる…。





当たり前か…。





でも、ここで引き下がるわけにはいかないんだ。







「君と一緒にいたいんだ!ずっと、ずっとそう思ってた。結婚してください!」

















「アタシで…いいの?」





「アスカでなくちゃ駄目なんだ。僕は、君以外愛せない。」









ついに言ってしまった。





言いたいことはいっぱいあった。





けど、これが精一杯…。







アスカ…。

















「アタシ、嫉妬深いよ。」





「僕も…、嫉妬深いんだ。」





「独占欲だって…、」





「僕も同じだよ。アスカは誰にも渡したくない。」





「わがままだよ。」





「そんなのかまわない。僕はそのままのアスカを好きになったんだ。」





「ほんとにいいの?もう離れられないよ。アタシ絶対シンジの事、離さないよぉ。」





「うん…。僕だって離さない。絶対に!」





「シンジィー!!」







アスカが僕に飛びついてきた。







僕もアスカを抱きしめた。





もう離さない。





そんな思いを込めて・・。







「アタシも好きだった!すっと、ずっと好きだったよぉー!!離さないでね!絶対に離さないでね!」



「誓うよ。ずっと、ずっと…どうなろうと君を愛していく。生まれ変わったって…ね。永遠に君のことを想うよ…、アスカ。」



「ありがとう、シンジ…。」



「それとさ、これもらって欲しいんだ。」



そうアスカに言って指輪の入った小さい箱を開けた。



「これって!」



「指輪だよ。君を想う誓いの指輪…。」



「バカね…。世間ではこういのを婚約指輪っていうのよ。」



「うん、でもいいんだ。どんな形にしても証だからね。アスカは僕のものっていうね・・・。」





ちょっと気障だったかな…。





「そんなセリフにあわないわよ♪でもかっこよかったからセーフ…かな。」













その後キスしたんだ…。





本当に愛し合って…ね。





あの時は息ができなくて、いきなりだったし…。





後味悪かった。





でも、今は違う。





本当に嬉しい…。





今だってボーっとしてる…。











やばい!





運転中だった。





そういや指輪に彫ってもらった文字って気づくかなぁ…。







まぁ、アスカの事だから明日にでも気づくかな…。



特に思考を凝らしたわけではないけど、やっぱり気づいて欲しい…かな。









アスカの寝顔、かわいいね。







ずっと守っていくからね。







だからさ。







安心して…。







アスカ…。
















あとがき

 みなさん、こんにちわ。
悠蔵です。
やっと完結しました…。
今回はLASでした…よね。
でも難しかったです。
何がって?
そりゃあもう…。
寂しい話ですけど、私には彼女いないし当然キスなどしたことないし、それどころか自分の意志で触れた事もないっす。
たまにね…、ぶつかったり、ファーストフード店とかでお釣りもらったときにちょこっとだけ触れたり…。
こんな私にこの手の話を書けと…?

そりゃ無茶でんがな…。

でもね、いいんです。
私の望みは二人の幸せ。
その幸せちょこっとでも分けてもらえたら嬉しいけどね。

それと、この作品をKENさんのKENの部屋に投稿させていただきます。
というわけで、KENさんよろしくお願いします。

最後になりましたが、読んでいただいたみなさま。
本当にありがとうございました。
この次はいつになるかわかりませんが、また幸せなLASをかきたいっす。
では。

感想、誤字脱字等何かありましたらこちらまで。

KENとリリーナ様の感想

KEN:ついに・・・完結ですな・・・
リリーナ:そうですわね・・・
KEN:なんか、沈んでません?
リリーナ:・・・えぇ・・・車と言うと、ドロシーのを思い出してしまうから・・・
KEN:・・・あの金ぴかですか・・・
リリーナ:ええ・・・お話はとっても素晴らしいですわ。
KEN:そうですね・・・ドロシーのせいで・・・