真っ暗な雲…
太陽の光も届かない雲の下で
二人は後悔と絶望で満たされた心と世界で
互いの存在を認め合い、笑顔で話し合えるようになった。
それはこの世に希望をもたらすであろう儚い光…。
時には後ろに振り返りもする二人だが確実に前へと
絶望へと立ち向かっていくだろう…。
大丈夫…自分にはあの人が居てくれる…。
その思いは二人に勇気を与え…
何者にも屈しないであろう意思を分け与えるのだった。
こんな絶望の世界で泣く事が多くなるかも知れない…
だが時には笑う事だって出来る…あの人が居る限り…。

誰も存在しない絶望の世界…
そこで小さくその存在を主張する二人の意思…。
これからも二人は衝突するかも知れない…
しかしそれ以上に二人は互いを助け合うだろう……。



THE END OF EVANGELION 絶望から始まるこの世界。 そんな終わりの世界で見つけた 想い 第4話 ―暗い旅館―
朝とは違い慌しい赤き海…。 風も強くシンジとアスカに容赦なく吹き付けてくる…。 「雨があまり降ってないから少しは助かったね」 シンジは肩に頬を預け楽な姿勢をしているアスカに呟く…。 「…そうね。雷は凄いけど…ただ単に耳に響くだけだからマシよ」 シンジがアスカを見つめる… アスカはドッと疲れが出た為か眼が閉じそうなくらい閉じていた。 「…大丈夫だよね?アスカ…」 「…ふ、あんたはほんと心配性ねぇ?…大丈夫…少し疲れただけだから」 アスカの言葉に安心したのか? シンジはアスカから自分が歩く前方に目を送った。 此処は本当に何処なのだろうか? シンジは何処か寂れた町とも村とも言えない所を歩いていた。 建物も少なく、あまり便利とは言えない… だが建物が全然壊れていないのは二人にとって救いであった…。 「…人の家に入るのはイヤだな…」 「そうね。…ん?…シンジあの丘にある建物は? …あれ、なんか旅館って感じがするんだけど」 アスカがしんどそうに右手を持ち上げ前方の山のほうに指を差した。 「…本当だ…それに一応歩ける距離だね? ……よし、あそこまで少し早歩きしようかな?…… アスカ、身体が痛かったら僕に言ってね」 「へぇへぇ…それくらい大丈夫よ………ありがと…」 素直に呟けた感謝の言葉…アスカはその意味を考え 頬が赤くなっていくのを感じ取った…。するとアスカは 「す、少し寝させて…そそそそ、それと私を落としたら明日は無いからねっ」 と、どもりながら早口で言うと全てをシンジに委ねた。 シンジはシンジでいうとアスカの感謝の言葉に心が動揺していた。 こんな僕にアスカは感謝してくれてる…。 僕はこれから、もっともっと頑張らないと…天国で見てくれてる ミサトさんや加持さんに怒られちゃうよ…。 そしてシンジは少し早めに足を動かしその旅館へと向かって行った。 途中、突然の追い風で転びそうになったがそれを利用して坂道を軽々と歩いていく…。 風はまるでシンジを励ましているようだった…。 坂道をあがって行くと海に立ち尽くして両手を広げているエヴァシリーズが とても小さく見える…そんな事を思いながらシンジは 少し包帯の匂いがするアスカを見つめる。 左目を包帯に巻かれたアスカ…戦闘の激しさを物語っている……。 早くアスカを休めてあげたい…シンジは出来る限りの早歩きをするのだった。 真っ黒な雲の中を雷がバリバリバリッと雲を這う様に何本もの枝分かれした木の様に光っていた。 シンジが正直に思った事は一言で言うと「凄い」の二文字だけ……。 そんな事を思っていたら何時の間にか二人が目指していた旅館に到着していた。 「…あ、二十分は掛かりそうだったのに …いろんな事を考えていたら…何時の間にか着いてたんだ…」 そしてとうとう小粒の雨が大粒の雨に変わり二人に降り注いできた…。 シンジは遥か頭上を見上げ、雨の激しさを実感する…。 「危なかった…間一髪だ。…アスカ…アスカ着いたよ」 「んん?……あ、着いたんだ?…何だか暗くて怖いわね」 アスカは正直に自分が思ったことを口にした。 シンジは少しずり落ちたアスカを「よっ」と小さな掛け声を上げ 持ち上げなおした…。 「…僕も怖い…でもこのままじゃ、アスカが風邪を引くかも…だから入ろう?」 「………うん」 二人は不気味な旅館を見上げるとゴクリと喉を鳴らし、 不安を抱きなが玄関を潜った……。 玄関を潜り二人を待ち受けていたのは青々とした紅葉だった…。 「綺麗な緑だ…」 「始めてみる…シンジ、これなんて言うの?」 アスカはシンジにおんぶされながら青々した紅葉を見つめ呟いた。 この赤に染まった世界で見られる青々とした緑色の紅葉は… 二人の心に僅かな安らぎをもたらした……。 「紅葉っていうんだ…」 アスカとシンジはそんな優しい色をしたものを見つめ、 玄関の扉をガラガラっと開ける…。 「……暗いわ」 結構な広さの玄関…横を見れば下駄箱がある…。 シンっと静まり返った静けさが二人に以前の活気を物語る手立ては無かった。 外が暗い分、旅館の中もかなり暗くなっている…。 「…電気のスイッチは…何処だろ?」 「ちょ、私に聞かないでよっ」 シンジが後ろに振り返り背中にしがみつくアスカに聞く…。 当然アスカはそんなシンジの問いに答えられるわけ無く困った様に答えた。 シンジはシンジでアスカの困った顔を見てしまい思わず笑みを零す…。 「はは…久しぶりにアスカのそんな顔を見たよ」 「そ、そんな顔とは何よっ…あんただって私の百倍変な顔してたわよっ。毎日ねっ」 頭にコツっと衝撃が走る…シンジはアスカのげんこつを脳天に見舞った…。 「アスカぁ、今のは痛すぎるよぉっ」 と、頭をさすれずにシンジは痛みを耐える…。 しかしアスカも痛みに悶えるシンジに同情し、ぎこちなくシンジの痛いであろう 頭をポンポンと叩いてやる。 「はいはい、痛かったわね?」 「あ、ありがとう……」 シンジは靴を脱ぎ、玄関を上がる…。 一面木の廊下を眺めながら歩くシンジ…アスカはアスカで 電気のスイッチが無いか、頑張って片目で辺りを見回す……。 だが首を回すごとに頭がフラフラする… やはり自分でも考えられないくらい疲労がたまっているのだろう。 アスカはそれに耐えられなくなりシンジの肩に頬をあてて眼を閉じる…。 「…あ、あった」 シンジはようやく十八個の電源を発見… 両手は使えないので何とか頭で電源を押し付ける…。 すると今まで薄暗かった旅館はウソの様に明るくなり二人に暗闇からの 恐怖を断ち切らせ、光が燈った廊下をシンジは歩いていった…。 「あれ?…あ、中庭か」 シンジが廊下を歩いていると左側に結構広い中庭が二人を待ち受けていた。 この丘の何処かに川でもあるのだろうか?中央には綺麗な川と池が涼しそうに流れている。 「シンジ…魚が…泳いでるね…」 か細いアスカの呟き声…何故か凄く悲しくなる…。 「アスカ……うん、あれは鯉だよ」 池の中を口をぱくぱくさせて泳ぐ鯉…。 「黄色…白…黒………赤い鯉…赤はイヤ…もうイヤ」 「アスカ?」 シンジは悲しそうに呟くアスカに気が付き 後ろに振り返る……が、アスカは頬をあてて池のほうを見ているので シンジからはアスカの表情は見られない…。 「…さ、行こうか?早く休もう」 「…ええ」 再び眼を閉じるアスカ…。 シンジは何も言わずに歩く事だけに集中した。 ぎしぎし木がきしめく音…。 裸電球に壁に掛けられた電球…。 廊下の一番奥に着いたシンジは襖をスゥーっと足で開ける…。 「…広い…此処にしよう」 かつての自分達が住んでいた家のリビングと同じ広さの和室… 沢山の料理を置く事が出来るテーブル あまり見ても解からないが掛け軸… 最近替えたばかりだろうか?畳のほのかな匂いが二人の 鼻にまとわりつく…。 「…アスカ、一度降ろすよ?」 「……ええ」 やはりアスカの声に元気が無い…。 シンジは静かにアスカを畳の上に降ろすと 押入れから真新しい布団を取り出した…。 ふかふかの布団を畳の上に敷き、アスカを抱き上げる。 「…何だか恥ずかしいわね。…これって抱っこってやつ?」 「アスカぁ、恥ずかしいって言わないでよ…」 アスカは重い瞼を開け、シンジを見つめる… 恥ずかしいと言いつつ自分の助けになってくれるシンジ これからもこんな事が続くのだろう…アスカはそれを思うといち早く 体力回復に専念しようと決意する…。 「…ごめんね?シンジ…これから一杯苦労かけるかも」 「水臭い事言わないでよ〜」 と、シンジは顔を赤くしながらアスカを布団に寝かせた。 枕の段差が頭に優しい… アスカは頭を傾けシンジが自分を見ているのにも関わらず 眼を静かに閉じるのだった。 「今はゆっくり休んで、アスカ」 「…うん…」 声が震える…身体的疲労と心体的疲労が重なるなか シンジの声が自分の中に透き通って行くような錯覚にとらわれ、 アスカは安心したのか涙もろくなっていた…。 一瞬シンジに眼から流れる涙を見られたと思い、 アスカは薄手の布団をサッと頭までかぶるのだった。 こいつが此処まで優しかったら… シンジのお母さんってもっと優しいのかな? シンジの幼少の頃の記憶を引き出すアスカ…。 様々な記憶の中にシンジがユイにビー球を両手で渡す姿と 僅かな記憶しか思い出せなかった。 ユイのシンジを見つめる眼は先ほど自分を見つめていたシンジとおなじ…。 「僕、何か探してくるよ」 「…………」 しんどく悲しく…でも嬉しい…そんな思いにアスカは泣き声をもらす 事無くただただ涙を流しているだけだった。 シンジが出て行ったのだろう…アスカはポツリ呟いた。 「……安心したら涙がでちゃった……」 廊下に出たシンジは長い事歩いた所為で腰を痛めたようだ…。 「いたたた…腰が痛い…」 気が付かないまま旅館の玄関前に着いていたが、 実際は二十分くらい坂道をアスカをおんぶして歩いていたのだ。 シンジは腰をバシバシと叩いて旅館の内部を探索する。 「…アスカ…また泣いていた。傷が痛むのかな?」 頭の中でこれから自分達に必要な道具を思い浮かべる…。 「まずは食べ物と傷薬だ…出来るだけ早く探そう」 此処は旅館なので食べ物は豊富と言ってもいいだろう… しかし傷薬などになると難しい… おそらく救急室みたいな部屋はあるかもしれないが 整った薬などはたぶん無いだろう… 包帯があれば運がいいほうだ。 「電気がついたけど…何か変な気配がする…」 何だかんだ呟いて歩いていると玄関に到着。 最初も辺りを見回したがもう一度見落としが無いか周りを見回す。 「…レジ…下駄箱…靴が僕たちのだけ…?」 恐らくこの町の人達も大半が田舎に疎開とか第三東京から離れていったのだろう。 「…と、言う事はこの町…第三新東京市からあまり離れていないかも…」 突風でガタガタ鳴り響く玄関を見つめながら呟く…。 そして今まで見落としていたものをシンジは見つけるのだった。 「…階段だ…今まで見落としていたなんて…」 何故か食べ物と傷薬の事を忘れて、シンジは階段をギシギシ鳴らしながら 下の階より薄暗い二階へ向かった。 裸電球が小さな四角い障子の箱に入れられ、シンジが居る場所は お化け屋敷みたいに薄暗く怖い…。 何故か冷や汗が出てくる…雨が瓦に打ち付ける音と 風が何処かを揺らす音…極めつけはこの薄暗さだ…。 シンジは階段から下の階を見下ろす… 「一階の方が明るすぎだ…」 一階の電球は四角い障子の箱に入れられていないからだろう…。 自分はこんな怖さより、もっと恐ろしい体験をしたんだ。 だからこんなの全然怖くない…。と、シンジは自分に言い聞かせるのだが サードインパクトと、またひとつ違う恐怖にシンジは恐れる。 「……」 ついに二階に上がったシンジは何となく自分達が使っている 部屋の真上へと向かった…。 途中、先ほどの中庭に差し掛かる。 だが此処は二階であり、今シンジは池を見下ろす感じで 鯉達を見つめていた…。 「……赤い鯉…アスカの服探さなきゃ…」 池を見下ろしながら歩くシンジ、しだいに前方を見つめ直す。 もうすぐアスカの居る部屋の真上に着く… しかしシンジは歩みを止める…。 「……何…か、聞こえる…?」 よく見ると奥の部屋から光が零れていた。 シンジは少し小走りになり、部屋の襖を力一杯引く…。 「…誰も……居ない…んだ」 空しく光るテレビ…砂嵐しか映し出されていない。 シンジは一歩踏み出し部屋の中に入る……。 パシャッ「へ?」 靴下が何故か濡れる…。 シンジは無さけない声をあげ、自分が立っている場所を何気に見つめた。 「……血の臭い…まさかっLCLっ!?」 驚きと恐ろしさで尻餅を着く…。 鼻にまとわりつく慣れない臭い…。 「僕は…本当に何を願ったんだっ…確かに人々の存在を願ったんだっ」 LCLの海で出会った少女、綾波レイを思い出す…。 シンジはあの時、少女の前で願ったはずだ…人々の存在を…。 黒き月から解き放たれるLCLの雫達…恐らく人が最後の瞬間に居たその 場所に戻されたのだろう…。 「どうして戻らないんだよっ。…僕のこんなちっぽけな思いじゃダメなのか…?」 シンジは暫く以前人の姿をしていたLCLを見つめていた。 この人はどんな思いでLCLに変わっていったのだろうか? 心にぽっかり空いた寂しさを埋めるためにLCLになったのだろうか? それとも強制的にLCLへとその姿を液体へと還らせたのか…? 詳しい事はサードインパクトの要であったシンジでもよく解からない…。 解かる事といったら、自分達は寂しさと傷つけ傷つけられる事に 立ち向かおうとしていることだけだった。 「これから僕達はどうしたら…」 シンジは立ち上がる… ふと窓があることに気がつき、それに近づく…。 雨は窓に打ちつけシンジから窓の向こうを見る事は出来なかった。 「誰か教えてよ……」 おもむろに両手をポケットに入れる…。 「あ、……これはミサトさんの」 今まで忘れていたのか、シンジは手にあたる小さな装飾品を取り出した。 それはミサトがシンジに託した、大切なお守り…。 シンジはそのお守りを見つめていると少し元気が沸いてきた…。 「…少なくとも…今は僕とアスカの二人だけじゃない…ミサトさん…僕は大丈夫です。 僕のことはいいからアスカを守ってあげてください…」 今はもう居ないミサトの心にシンジの願いは伝わっただろうか? それを知る手立てなど、今は無さそうだ……。 「……そろそろ食料と包帯を探しに行こう……」 つづく あれほど降っていた雨… 今は嘘の様に晴れている… 人工の光が何ひとつ光らない夜の世界で 空は何処を見回しても満点の星空に彩られていた。 眼をこらせば僅かに星雲が見える… そしてあらたに地球の環として加わったリリスの血液…。 一人それを眺めていた少女は何を思うのか……。 次回 ―1日の終わり―
KENとEVAキャラの座談会! KEN:・・・さて、また、困難が待ち受けているのかな? ケンスケ:KENもこういうの書くのか? KEN:書いてもいいけど・・・どんどん暗くなるぞ? ケンスケ:・・・それは、嫌だな・・・ KEN:それに、今は俺は某レストランでアルバイトをするゲームをやっている ケンスケ:だから? KEN:自分を育てるゲームだから、絶対に幸せになる道しか選ばない ケンスケ:・・・なるほど KEN:なので、ハッピーエンドしかしない・・・という方程式が成り立つ それが、SSにも反映されるのさ・・・ 素晴らしい作品を投稿してくれたNOBさんへの感想はこちら!