真っ暗な雲… 太陽の光も届かない雲の下で 二人は後悔と絶望で満たされた心と世界で 互いの存在を認め合い、笑顔で話し合えるようになった。 それはこの世に希望をもたらすであろう儚い光…。 時には後ろに振り返りもする二人だが確実に前へと 絶望へと立ち向かっていくだろう…。 大丈夫…自分にはあの人が居てくれる…。 その思いは二人に勇気を与え… 何者にも屈しないであろう意思を分け与えるのだった。 こんな絶望の世界で泣く事が多くなるかも知れない… だが時には笑う事だって出来る…あの人が居る限り…。 誰も存在しない絶望の世界… そこで小さくその存在を主張する二人の意思…。 これからも二人は衝突するかも知れない… しかしそれ以上に二人は互いを助け合うだろう……。
THE END OF EVANGELION 絶望から始まるこの世界。 そんな終わりの世界で見つけた 想い 第4話 ―1日の終わり―
澄み渡った蒼の空に見とられながら… アスカはジオフロントの湖畔で立ち尽くしていた。 「また此処に居る…」 周りを見渡せば木々はなぎ倒され、焼き焦げてた臭いと 遠くから銃声と爆発物の爆音が聞こえる…。 「…何よ…!?」 銃声が聞こえてきた方に視線を送ると、ネルフの制服を着た 職員が数人倒れていた……。 「何よ!何よぉっこれぇ!?」 今まさに自分の右眼に捕らえた残酷な光景にアスカは 悲鳴に似た叫び声を上げる…。 辛うじて倒れていない木々の間を縫って侵略者は 逃げ惑うネルフ職員をあざ笑いながら次々と銃で撃ち殺していった…。 「どうしてぇ?!…私にこんなの見せないでよっ!!」 そしてまた爆音が聞こえる…。 アスカは湖に視線を戻すと何台という兵器が湖目掛けてドラム缶の様な 爆発物を打ち込み続けていた……。 「…!…この光景…まさか湖の中に居るのは…」 そう思った瞬間湖の中から赤い閃光が天に向かい爆音を轟かせる…。 「弐号機……ママっ!!」 四つの眼を光らせ、巡洋艦を持ち上げる弐号機…。 その恐ろしい姿に恐怖した戦自の歩兵部隊は弐号機に戦車などの 武力で弐号機を一斉射……。 「……ダメ…もうやめてっ!!…ママ逃げてよ…」 圧倒的だった…。戦自の地上部隊は弐号機の力で赤子の腕を へし折る感覚で撃破されていった…。 それと同時にVTOL部隊もだ……。 アスカはそんな光景を見、自分がいかにやってはいけない事を やったのか思い知らされる……。 しかし自分を殺そうとしている者達にアスカの取った行動は 当たり前だった…。アスカの行動には誰も文句も責めも出来はしない…。 自分に危害をもたらす者達を倒し、たち尽くす 弐号機を見上げていたアスカは、煙と煙の間に見えた 蒼い空から降り立つ白い機体を見逃さなかった………。 「ママっ!ママっ!!」 アスカの心の叫びは弐号機には届かない…。 弐号機を中心に白いエヴァは空を切り裂く音を奏で 地上に降り立った…。 白い九体のエヴァ…弐号機を取り囲むように、腹をすかせたおぞましい 化け物の様に、いやらしい口をニヤっとさせていた。 走り出す弐号機……。 一撃必殺の様に装甲で覆われていない白いエヴァの頭を 両手で叩き潰す…。 「誰か助けてよぉっ!!」 「誰も助けてなんかくれないわよ…」 「え…!?」 突然聞こえる声…。 背後から聞こえた声にアスカは咄嗟に後ろに振り向く…。 「なっ!?わ、私っ!?」 「そ、私はあなたの中に存在するもう一人の私…」 陽炎の様にユラユラと揺れるもう一人の自分…。 アスカは白いエヴァと戦う弐号機からそれに眼が釘つけられた。 「ど、どうしてそんな事言うのよ!」 「…当たり前じゃない…これは過去の出来事なのよ」 「でもっ!…でも…」 陽炎の少女はそんなアスカの俯いた表情を伺える事無く 呟いた…。 「…エヴァが無い私なんて誰も見てくれないわよね?」 もう一人の自分に言われたくも無い事を言われ、 アスカの表情は悲しそうに、しかし何処か恐れを帯びた 表情になっていた。 「イヤ…そんなの聞きたくないっ…」 「何がイヤなの?あなた、もう失うものは何ひとつ無いでしょ」 もう一人は冷たく、確信的にアスカに言い放った。 アスカは逸らしていた眼を陽炎の少女に向ける…。 もう一人は何故かいやらしい笑みを浮かべアスカを睨みつけていた。 「……あなたは私でしょ?!どうしてそういう事言うのよっ!」 「なんでってそりゃそうでしょ?私はあなただから…。もう、何もないじゃん」 陽炎のアスカは恐怖と怒りに満ちたアスカにサラッと言う。 弐号機と白いエヴァが戦う中、アスカは気がつかなかった…後、 エヴァシリーズが残り四体だという事を…。 「もうやめてよ……聞きたくない見たくない…!」 頭を抱え込むアスカ…。 そんなアスカを冷たい眼で睨みつけるアスカ。 「ほらまたそうやって逃げるのね。シンジには逃げるなとか言うくせに… あんたが一番苦しい事から眼を背けて逃げてるんじゃない… ふふふ、自我崩壊という奴にね」 可笑しそうに話すアスカにアスカは苦しさと恐怖に震え上がる。 両手で自分を抱きしめる様に包み込み、出来うる限りの大きな声で 陽炎に向かい今までの思いを叩きつける。 「そうよ、私は怖かった!…皆が私をどう思っているか知りたくも無かった…! だってそうでしょ?心を汚され…エヴァにもシンクロ出来なくなった私はお払箱だと思った! 私は怖かった…ドイツに…イヤな思い出しかないあの場所に戻るのは…イヤだったのよ。 そんな事を思っているうちに心地良い眠気が襲ってきて…結局私は自我崩壊を……」 「そうよ、あなたは皆が自分を見て何を思うのか…それを知るのが怖くて逃げたのよね」 陽炎は弐号機が残り三体の内一体と戦っている 姿を見つめながら呟く。陽炎のアスカは何を思うのだろうか?この後起こる悲劇を……。 「もう、私の事を必要としてくれる人は居ない…でも、シンジはこんな私を必要…… ううん!必要だとか必要で無いとかでじゃぁ言い表せないわっ!シンジは私の事… 自然に接してくれるしっ!私を普通の一人の女の子として家族として接してくれてるのよっ!」 叫びと共に自分の周囲が真っ暗な闇に染まる。 アスカはこの後の惨劇をその眼に映し出されなくて多少安心するものの これから何が起こるのか解からない……。 そしてまたアスカは偽者のアスカに向き直る…。 だが振り返ったその先には偽者ともう一人、青い髪の少女が自分を見つめていた。 「ファースト…………!?」 「さっき言ったわね?シンジは私と自然に接してくれてるって」 偽者はアスカがレイを見つめている時にまたもや意味ありげな事を言い出した。 「……な、何よっ!」 偽者のアスカはレイの背後に回り込み、レイの両肩に自分の両手を乗せる。 「あははっ、シンジがもしあんたを無視してファーストの所にいったら…どうする?」 「っ!!そんな事ないっ!あいつの想いはよく解かるものっ!」 「ファーストの所に言ったら…どうする?」 レイの背後に立っている偽者…それは可愛らしく、 しかし何処か気味が悪い。いやらしくアスカの顔を覗き込んでいる。 アスカはそれ等に近寄る事が出来なく叫ぶ。 「うるさいっ!私の偽者っ!!どっか行ってよっ!!!」 アスカの叫びが終わると、今まで何も喋らなかったレイが呟きだした。 「あなたは要らない子よ…。もう、誰も見てくれないし誰も必要としないわ…。 …あなたは救いようが無い死人と同じなの…。ふふ、エヴァが無いあなたには 何があるの?」 「うるさぁぁい!私にはママの思いがあるっ!友達もっ!… エヴァが無くったって、私には皆の思いがあるのよっ! それに!それにねっ!私はシンジの心を分けてもらったっ!私には シンジの心があるのよっ!!」 「アスカぁご飯できたよ〜」 「はっ!?」 カッと眼を見開くアスカ、夢の中でかなり深刻な問題に なっていたのに、シンジの情けない呼び声にアスカは 飛び起きた…。 「「イタッ!」」 突然アスカが飛び起きるので、アスカの顔を上から覗き込んでいた シンジはアスカのおでこと激突したようだ…。 あまりの痛さでアスカはまた布団に崩落ちる、 シンジは激突の反動でゴロンッと背中から畳へ転がり込み、 何とも情けない姿になっていた……。 「イタタタ……ちょっとっ!何よっ!急に?!」 「ぅぅ…ごめんっ…アスカ、お腹減らしてるだろうなって思って…」 頭に走る痛覚にアスカは夢の内容を殆ど忘れてしまったのか? 気分はそこそこ落ち着いている…。 そして食欲をそそる美味しそうな匂いに気が付いた様だ。 「痛いけど…シンジ、ご飯作ったんだ」 自分の傍にあるお盆…そのお盆の上には綺麗な鍋に盛られたお粥があった。 シンジは目尻に少し涙を浮かべ鍋に盛られたお粥をお玉ですくう。 「うん、ほらアスカ今まで何も口にしてないでしょ? …だからお粥を作ってきたんだ…」 「そう…久しぶりだなぁ…シンジのご飯…」 微笑ましく呟くアスカ…。 シンジはそれに見とれながらも… 「…も、もっと美味しい物作りたかったんだけど…ほ、ほらっ!さっきも 言った様に今まで何も食べてなかったろ?だから急にお腹へ脂っこい物とか 入れたらお腹、壊すでしょ?だからっ」 「何慌ててるのよ?」 あためふためくシンジにアスカはさも面白そうに呟く。 アスカに言われ、シンジも落ち着きを取り戻す…しかし何故アスカが 飛び起きたのか不思議でならなかった…。 まあ、自分の顔が間近にあったらビックリするだろう… だがアスカの表情は何処か恐怖に歪んでいたのだ…。 「…アスカ、どうしてさっきあんなに驚いていたの?」 シンジの呟きがアスカに不快な表情を作らせる…。 シンジはアスカの表情を見つめ、まずい事を聞いたかな?と、思う。 「…どんな内容か忘れたけど……偽者の私とファーストが…私を苦しめる夢… 見ちゃった…」 弐号機とエヴァシリーズが戦う事よりも偽者に苦しめられるのがよほど インパクトがあったのだろう…。 アスカは弐号機について何も話さなかった。 「……うん、でももう苦しむ必要は無いよ。…ほらご飯冷めるから食べようか」 レンゲをアスカに手渡しながら話すシンジ。 アスカはシンジが少し微笑んでいる事に少し安心したのか、 釣られる様に笑みを零した。 「…ええ」 「出来上がったばかりで熱いから気をつけてね」 「うん…………あ、あれ?」 包帯に巻かれた手でレンゲを持つ、だが力が入らない手は自分の 意思に反して震えるばかり……。 「ちっ…これじゃぁアル中のミサトじゃない……」 意識して力を込めると震え出す手、 アスカはそれを見ながら苦しそうに呟いく シンジはそんなアスカからソッとレンゲを取ると何気に呟きだした。 「…アスカ、僕が……た…させて…」 しかし何気に呟くシンジだが、「僕が…」からどんどんと顔が真っ赤に 呟く声が小さくなってしまった…。 「ん?…今なんてシンジ?言いたい事はハッキリ言わないとねぇ〜」 そんなシンジの顔を覗き込んでいたアスカは意地悪そうな顔で シンジを冷やかす。 シンジは眼を宙に泳がせ冷や汗をかきながら、心の中で アスカの為だっ、と言い聞かせ…ポツポツ呟きだした。 「…ア、アスカ…僕が…食べさせてあげるよっっ」 言って恥ずかしいシンジ…。 耳まで真っ赤だ…。 「う、うんっ…お願い……」 言われて恥ずかしいアスカ…。 シンジはレンゲでお粥をすくうとフーフーと熱々のお粥を冷まし、 恐る恐るアスカの口へと持っていった。 「熱かったらゴメンね」 「うん……」 小さく口を開けるアスカにシンジは サラッとしたお粥を流し込む…。 アスカは美味しいのか少し微笑みながらモグモグと口を動かす。 「……ど、どうかな?」 「………懐かしい…」 それだけでシンジの表情はパッと明るくさせる。 アスカは懐かしいシンジの料理を口にし、お粥が無くなるまで 何も喋らず食を進めるのだった。 シンッと静まり返った静寂の夜… 何処かで鈴虫が綺麗な音色を奏で聞く者に安らぎをもたらす。 「人工の光が無いと…本当に星が綺麗ね…」 空を見渡せば一面星の世界……。 そして新たに地球の一部に加わったリリスの血液…。 「土星の環みたい…」 部屋の窓にもたれ掛かりアスカは赤い帯を見つめる。 少し満腹になったお腹はまだ不満そうにアスカに訴える。 「…あ〜あ、もっとお粥食べたかったなぁ…」 今まで病院食も何も食べなかったアスカは点滴のみの生活だった…。 それだけに突然お腹に食べ物を食べるとお腹を壊すだけ…。 我侭を言っておかわりしようとするが珍しくシンジはそんなアスカの 願いを拒否する……。 「私の身体を考えてこそシンジはああ言ったのよ。少しは我慢なさいっ」 自分に言い聞かせるアスカ…。 シンジは今食器の後片付けをしに部屋をまた出て行った様だ。 アスカは暇なのか?ずっと星空を見つめている…。 「…あいつ早く帰ってこないかな…」 シンジと仲直りしてからもう十何時間は経っている…。 本当はあんな奴許してやらない。と、決めていたアスカだが… あの時、病院でシンジがした事は本意でやったんじゃない… 人をその手で消し去り、少なくともシンジは精神的にも参っていたのだ…。 ガタッ、スゥ―、スゥ―パタン。 アスカが物思いに耽ってると突然襖が開きエプロンを着けたシンジが タオルで手を拭きながら部屋に戻ってきた…。 「…ふぅ」 「…しんどいの、シンジ?」 少し気落ちしているシンジ…。 アスカはエプロンを脱ぎ、テーブルに突っ伏すシンジを気使う。 「……久しぶりに落ち着いて眠れると思ったら…余計眠たくなって…」 「…そう…あんたがエヴァに取り込まれたあの日から…落ち着いて眠れる日は 無かったからね…」 気持ち良さそうに眼を閉じているシンジを見つめ呟く。 「でも…まだやる事があるから…あとちょっと起きてるよ…」 アスカの呟きを聞きシンジは気持ち良さそうに閉じていた眼を 重そうに持ち上げるのだった…。 ふとシンジの手を見つめる… シンジの手は余程暖かいお湯で皿洗いをしたのだろう… その手はほんのり朱に染まっていた。 「……シンジ、疲れてる時に悪いんだけど…」 「うん?どうしたの…」 「えとね私、お風呂に入りたいの…」 アスカは少し血の臭いがする自分の身体を見る…。 シンジはそんなアスカの姿を見て、黙り込む…。 「どうしたのシンジ?」 「……包帯に水が着かなかったら良いけど…」 あ、と言う表情になるアスカ…。 よくよく考えると痛みは無いけれど、自分は眼から血を流す程の 大怪我を負っていたのだ……。 アスカは何故シンジがすぐに言い返さなかったのか解かった。 アスカから見たシンジは物凄く悲しそうに、そして辛そうにしている…。 「…そうだった…私は………」 二人は何を思うのか…。 暫くお互い俯きながら黙り込んでしまった。 少しの時間何もせずに黙っていただけなのに 二人は永遠ともいえる時間を過ごした様な錯覚に陥る…。 「「あの…」」 同時に話し掛ける…。 でもアスカは続けてシンジに話し掛ける。 「…ダメよね?だってわた」「アスカ…包帯を取ってみよう…」 シンジがアスカの言葉に割って入りアスカに言う…。 最初シンジが何を言ったのか解からなかったが 徐々に何を言ったのか気がついたアスカ…。 「ど、どうして…急に…い、イヤよ…」 そんな自分の怪我した腕を労わる様に触れながら答える…。 シンジはアスカの身体を気使うが、それと同時にアスカの心を傷つけた 事に複雑な気分に陥る…。 「…シンジぃ…本当に、取るの…?」 「…うん、アスカの怪我が酷かったらすぐに手当てしなくちゃ」 そう言うシンジ…アスカは取らないでくれと言う風な眼でシンジを見つめる。 アスカの祈願する様な視線にシンジは引けなかった…。 「イヤ…イヤよ。…こんな酷い腕…見たくない…」 こんな弱々しいアスカを見たのは初めてだ。 しかしシンジは此処でアスカの怪我を見なくてはいけない…。 「…アスカ…大丈夫だよ。ほら此処に還って来た後、僕を思い切りグーで 殴ったじゃないか」 不安がるアスカにシンジは微笑みながら自分のまだ痣が残っている 頬をアスカへと見える様に突き出す。 「だからお願いだ…アスカ。僕にアスカの怪我を、包帯を替えさせてよ」 次第にシンジの眼に涙が浮かび上がる…。 自分の弱さでアスカにこんな大怪我をさせてしまった自分が憎く、 シンジは自分で自分を殴りたい衝動に駆られる…。 でも此処で自分を殴ってもアスカの怪我は治らない… シンジは冷静さを何とか保つと、アスカに近づいていった。 涙ぐむシンジの姿…。 自分の為に泣いているシンジ…。 痛みは無い、だけどそれだからこそ 自分は相当酷い怪我を負っているのでは? それなら尚更包帯は替えなくてはいけない。 アスカはシンジの自分を思う言葉に多少気分が落ち着いたのか? 「……シンジ、私は眼を閉じてるけど…それでもいぃ?」 と、決意を込めてシンジに弱々しく言い放った。 シンジはシンジでアスカの言った言葉に救われる…。 「…ありがとうアスカ。…大丈夫、怪我は絶対に酷く無いよ」 自分に言い聞かせるようにシンジは呟いた。 言わなければアスカの包帯を取る事が怖くてしょうがない…。 「シンジ…もし私、酷い怪我でも……傍に居て」 「え、今なんてアスカ?」 「な、なんでもないわよっ…」 言葉の終わりにアスカは眼を閉じ、シンジに右手を差し伸べる…。 そんなアスカの行動にシンジは後戻りは出来無い。と、決意しながら 包帯の結び目を両手で解いていった。 時計の音と包帯と肌が擦れる音がやけに目立って聞こえる…。 シンジは焦りからか包帯を解く勢いが少し早い…。 それに伴ってアスカの身体が小さく震えてくる…。 「ちょ、シンジ…もっと優しくしてよ…」 アスカの震えた声を聞き、シンジはハッとなって慎重に包帯を解いていく。 何かおかしい…包帯を解いても一向に傷らしい傷は見当たらない… それは何度も見た記憶があるアスカの白い肌だった。 「……ウソでしょ?…なんだよこれ??」 驚くのも無理ないだろう…あんなに巻いてあった包帯の下には傷がひとつも 無かったのだから…。そして不味かった……シンジの驚き方である… なんだよこれ??など、眼を閉じているアスカから聞いたら最悪な展開だ…。 何よ…どうしてシンジ…まさか私の腕はそんなに酷いの? …そっか…私、もう腕綺麗にならないんだ。 ……もう…もう………見たくない…。 あまりにも苦しく悲しくアスカは声にならない声を 心の中で呟く…。 そんなアスカの心中を知らず、シンジは 「アスカ、ゆっくり眼を開けていってよ…」 心の奥底から怒りと悲しみが込み上げてくる…。 アスカは俯き加減で叫ぶ。 「シンジっ!あんた、私に酷い傷を見ろって言うのっ!?…私は……… シンジぃ…私は見たくないっ…」 眼を閉じシンジから後ず去るアスカ…。 シンジも自分の言い方が間違っていたのに気がついたのか言い直す。 「アスカ、違うよ。…ごめん僕の言い方が間違っていた」 「どう違うってぇのよっ…」 「大丈夫だよアスカ…僕を信じて…」 「…………」 黙るアスカ…。 その俯き黙るアスカを覗き込む様に見つめるシンジ…。 よく表情を見つめるとゆっくりではあるが アスカの右眼は小刻みに震えながら開いていった。 「…無いっ!」 怒鳴りながら驚くアスカは自分の腕をマジマジと見つめる。 「…うん、無いよアスカ…」 「無いよっ!…シンジ、無いよ……」 「うん、傷ひとつ無くて本当によかった…」 アスカの嬉しそうな姿にシンジは感動したのか今まで見尻に溜まっていた 涙が一気に流れ出した…。 よかった…本当によかった…。そんな思いがシンジの心を支配する…。 別にいやな気分じゃない…むしろ嬉しすぎて嬉しすぎて飛び回りたい気分だ。 「ちょっとバカシンジっ!泣かないでよっ!私が泣きたいんだからっ!!」 「な、ななな泣けばいいじゃないかっ」 恥ずかしそうに涙が流れる眼をゴシゴシ腕で拭い去り アスカを見つめるシンジ…。 嬉しそうなアスカ…頬が少し桜色に…その表面を伝う右眼からの涙…。 「ほんと最近泣き虫ね…私達って…」 「……うん、そうだね。…あれ?」 アスカが笑いながら泣いている姿を見てシンジはある事に気が付いた。 顔をやや天井に向けて笑うアスカの左眼が光に照らされ 湿り気を帯びているのが見て取れた…。 「……アスカ、左眼から涙が出てるけど…痛くないの?」 「へ?…そんな、もう左眼から涙なんて出ないと思っていたのに…シンジっ!」 「はいっ?!」 「早く取ってよっ」 アスカが一段と嬉しそうに怒鳴る。 何も言わずにアスカの前に勢いよく膝で座り シンジはアスカの後頭部に両手を持っていき、 結び目を解く…その間アスカは眼を閉じシンジの胸の前でジッとしていた。 「解き終わったよアスカ…眼、開けれる?」 再びアスカの前に座り左眼を見つめる… 眼を閉じているので外側から見た限りでは解からない…… 一応…綺麗な瞼だ…。 今まで閉じていたので左眼ではシンジの姿が暗くぼやけて見える。 しかし暫く瞬きを繰り返していくと鮮明にシンジの嬉しそうな姿が見て取れた。 「アスカっ見えるんだねっ!?」 「え、ええっ!見えるっ!見えるわよシンジっ!!」 「「よかったぁっ!」」 手を取り合う二人…。 もう嬉しすぎて嬉しすぎて変な顔になってしまう…。 暫くアスカを見つめていたシンジ…。 急にアスカが俯くのでどうしたのかと思い覗き込む…。 「……シンジ…私…恐かった…」 「…うん、僕の言い方が悪かった」 「違うわよ。…もし私の身体に一生物の傷があったら… シンジは私を置いてっちゃうのかなって…」 アスカの悲しそうな呟きにシンジは慌てて言った。 「そんな事しないよっ…絶対に。……もういいからアスカ……ほら、お風呂に 入りたいんだろ?連れて行ってあげるよ」 鼻をすすりながらアスカはニコッと笑顔をシンジに贈る。 「…ええっ。…怪我も私の思い過ごしだったから、思う存分温まらなきゃっ」 「そうそうアスカ…今日はいい事だらけだからね。それを大切に満喫しなくちゃね」 嬉しさ一杯のシンジはアスカを少し重そうに (別にアスカが重い訳じゃない、シンジが疲れているからだ) 抱き上げ、内緒にしていた温泉に連れて行くのだった…。 アスカはプラグスーツを着ていたのでシンジは 温泉のすぐ側で降ろし、その場から離れ、 今アスカを見つめているのは儚く光る星だけだった。 「昨日と今朝は無我夢中だったから右手でシンジを殴れたのかな?」 エントリープラグの脱着ボタンを押し、動きにくい身体をクネクネさせ 何とか脱いだ…。 「…はぁ〜…私もだいぶ現実逃避したわね?」 自分の痩せた身体を見つめ言う…。 まだ力が入る左手で桶を持ち温泉のお湯をすくい、 ザバッと勢いよく自分の頭から熱めのお湯を被る。 「ぷは…ほんと久しぶりのお風呂…」 足が思うように動かないので、温泉へ転げ落ちる様に飛び込む…。 熱めのお湯に浸かった所為で今まで感覚が麻痺していた 身体は少しずつ動かせるようになった…。 「これからもっともっと辛い事ってあるのかな?」 地球を取り巻く赤い環を見つめ、アスカは星に向かい お願いをしたのだった…。 「…もう私達に辛い事を見せないでね…」 アスカの願いは果たして星達に届いたのだろうか? つづく 夏の晴天に、涼しすぎる気持ちの良い風…。 二人は出来るだけの食料・衣類を手に入れ、 雨風から自分達を守ってくれた旅館を後にする…。 道路標識を頼りに第三新東京市を目指すシンジ… 懐かしの我が家へは長い道のりだった…。 次回 ―戻ろう?私達が暮らしてたあの場所へ―
KENとEVAキャラの座談会!! KEN:いやぁ〜、よかったよかった・・・怪我がなくて・・・ ヒカリ:あの・・・KENさん・・・ KEN:ん?なに? ヒカリ:これからどうなっていくんでしょうね・・・ KEN:さぁ・・・それは、作者のみ知る・・・だから・・・ ヒカリ:私の復活は? KEN:さぁ・・・ ヒカリ:そんなこと言う人嫌いです! KEN:・・・キャラが違うぞ・・・それに起こらないから奇跡って・・・私もキャラが・・・ 素晴らしい作品を投稿してくれたNOBさんへの感想はこちら!