真っ暗な雲…
太陽の光も届かない雲の下で
二人は後悔と絶望で満たされた心と世界で
互いの存在を認め合い、笑顔で話し合えるようになった。
それはこの世に希望をもたらすであろう儚い光…。
時には後ろに振り返りもする二人だが確実に前へと
絶望へと立ち向かっていくだろう…。
大丈夫…自分にはあの人が居てくれる…。
その思いは二人に勇気を与え…
何者にも屈しないであろう意思を分け与えるのだった。
こんな絶望の世界で泣く事が多くなるかも知れない…
だが時には笑う事だって出来る…あの人が居る限り…。

誰も存在しない絶望の世界…
そこで小さくその存在を主張する二人の意思…。
これからも二人は衝突するかも知れない…
しかしそれ以上に二人は互いを助け合うだろう……。



THE END OF EVANGELION 絶望から始まるこの世界。 そんな終わりの世界で見つけた 想い 第6話 ―戻ろう?私達が暮らしてたあの場所へ―
遠くから聞こえてくるのは海鳥の鳴き声… 赤い海の波打つ音… 畳の匂いがさわやかな心地よさを引き立たせる…。 今自分達が寝ている旅館の部屋を見回す…。 「…懐かしい感じがする…」 最初に目を覚ましたのはアスカだったようだ…。 「でもこの感覚は…少し違う…似ているのね」 アスカは寝返りを打ち近くも無く遠くも無い場所に布団を敷いて 自分の隣で寝ているシンジを見つめる…。 しかし眠っているシンジより先に眼に飛び込んできたのは 自分の枕もとにある十字架の首飾りだった…。 「あ、ミサト……そっか私が懐かしい感じがしたのはこれが傍に あったからかぁ…」 恐らく昨晩アスカが寝入った隙にシンジが傍に置いといたのだろう…。 十字架を両手で包み込み、そして首飾りを自分の首に下げる…。 「へへ、浴衣に十字架の首飾りって…似合わないわね」 しかし嬉しそうなアスカである…。 薄手の布団から身体を起こし大きく欠伸をひとつ…。 「ふわぁぁー……眠いわね。…珍しくシンジも熟睡してるから…どうしよう?」 これから何をしようか天井を見つめ考えているとシンジの小さな声が聞こえた。 「…アスカ……おはよう…」 視線を戻すと眠そうに布団の中で包まっているシンジが 微笑みながら自分を見つめていた。 「…まだ眠そうね…」 こんな何気ない言葉を交わすだけでアスカは家族っていいな。と、思うのだった。 「…うん…それとアスカ、その首飾り似合ってるよ」 「当ったり前でしょーが、この私に似合わないものなんて無いわよっ」 嬉しそうに十字架をつまみ、自分の頬の前で持ち威張るアスカ…。 「そうだね。…それはミサトさんから僕へ…僕からアスカへの贈り物だよ…」 「…ありがと…」 アスカはそう言うと布団の傍に置いてある何処にでもありそうな杖代わりの 木を持ち出し、もどかしそうに布団から立ち上がった。 「気をつけなよ?アスカ」 シンジも心配してか、すぐさま立ち上がりアスカに近づいた。 「ええ、昨日の温泉のお陰ね…まさか経った一日で 此処まで歩けるようになるなんて」 そう言われながらシンジはアスカの両腕を見てみると かなりの力が込められているのか?右腕なんか結構震えている…。 「やっぱり思い過ごしの怪我でも…エヴァで体感した痛覚だから何とかしなくちゃ」 「…そうね…あ〜ぁ脳神経外科があったら一発なんだけどな〜」 「時間が掛かりそうだね…」 「よろしく頼むわよ。シンジ」 アスカの言葉にシンジは心強さを感じる…。 本当はこちらがアスカに感じさせなければいけないのだろうが、 この辛い事に真っ向から立ち向かおうとしているアスカを見ると どうしてもこう感じてしまう…。 「よし僕はアスカに力つけてもらう為に朝食を作ってくるよ」 思いきり伸びをするシンジ…心地良い感覚と共に立ち眩みが起こる…。 「あれ?…寝すぎ…か」 と、呟きアスカに笑われながら部屋を出て行った…。 寂しさも何も感じさせない部屋でアスカは暫くボーっとしていたが、 気を取り直してコツコツと杖を突きながら玄関まで出て行った。 殆どの神経を足に伝えさせ、慎重に歩いていくと…。 「あ、中庭だ…」 中庭の中央に位置する所に池がある… その池の中では鯉が口をパクパクさせていた…。 「ふふ、昨日はあんたの悪口を言って悪かったわね」 赤はキライになったが、この鯉は別に血の赤じゃないので 血液以外の赤は別に不快に思わなくなったのだろう…。 鯉はのんびりと泳ぎながら、アスカを時折見つめては口を面白そうに パクパクさせていた…。 そんな微笑ましい鯉の姿をあとに、アスカはまた歩き出した。 「…はぁ、結構キツイわね…」 太陽の光が池の水に反射して、アスカが歩く廊下の天井は ユラユラ光っている……。 玄関にやってきて外に出ようとするが、今自分はプラグスーツも着てないし 靴も何も無いのでアスカはおもむろに下駄箱に向かった。 「え〜っと…あ、あった、やっぱりね。前の旅館でもサンダルが あったから此処に無いはずが無いわよね?」 左手で杖を持ち下駄箱の中の数あるサンダルを取り出す…。 それをポイッと石段に置くとササッと履きだした。 「此処まで来るのに結構掛かったわね」 玄関をガラッと開けた途端涼しい風がアスカの身体を包み込む…。 浴衣を着ている身体には涼しすぎるくらいの風だ…。 「…緑色の紅葉…綺麗だな」 抹茶の様なコケの上を勿体無さそうに歩きながらアスカは旅館の門を潜った。 「…え、こんな坂をシンジは私をおんぶして登って来たの?」 シンジがアスカをおんぶして此処まで登ってくるのにはかなりキツかっただろう…。 アスカはそう思うが、当の本人シンジはあまり思わなかったようだ…。 海を見つめる…。 「母なる海か……」 例えようが無い表情でアスカは赤い海を見下ろす…。 何処までも広がる赤い液体……。 「そう…全ては終わった…私達は自由なのよ…」 戦いの無い世界…自分達を苦しめたエヴァシリーズも今はもう 機能を停止させ無言に両手を広げ十字架のように立ち尽くしている…。 「…………気持ち悪い機体…でも何処か天使のよう…」 エヴァシリーズを見ていると右手と左眼が疼き始める…。 「…もうっ、見るんじゃなかったっ!」 少し不機嫌になりながらもその場を後にする…。 もう一度門を潜り抜け玄関にやってきたアスカは 流石に疲れたのかドッと床に座り込むと大きな声でシンジを呼び出す…。 「シィンジ〜〜」 自分が声を出すとすぐにシンジの声が帰ってきた。 「え、何処に居るのアスカァ〜?」 「玄関よ〜〜」 ドタドタドタドタっとシンジが調理場からじゃなく自分達が使っている 部屋の方から小走りにやってきた。 「あ、外に行ってたんだ?…部屋に居ないからビックリしたよ」 「…そう言えば行き先も何も言ってなかったわね?」 と、アスカはシンジに向けて両手を広げて差し出す。 シンジはその意図が解かりアスカを抱きかかえる……。 「今はまだ焦らず、ゆっくり足を慣らしていけばいいよ。…独りじゃないんだからさ」 まるでシンジは、僕が何時でもアスカをおんぶしてあげるよ。と、言っている 見たいな口調でアスカに呟く…。 「…うん、ありがと…」 そんなシンジの本音を解かってかアスカは安心感を覚える…。 自分の足では数分掛かった道のりをシンジは何十秒という速さで 自分達の部屋まで連れて行ってくれた…。 「あ、いい匂いがする」 「うん、朝食作ったんだ」 部屋に入ると小さな土鍋に色々な具が入ったお粥が二人を待っていた。 昨日のお粥と違い今日は人参やら卵やらの具が入った美味しそうなお粥だ…。 「別にアスカ、お腹の調子は良いんでしょ? だから少しくらい具を入れても大丈夫かなって思って人参と卵を入れてみたんだ…」 細かく薄い長四角に切った人参と卵… 在り来たりな食材だが、料理が得意なシンジに作らせると何とも美味しそうだ…。 「さ、食べようか…」 土鍋にお玉を入れてお粥をすくい茶碗に入れ、 熱々のお粥が入った茶碗をアスカに手渡す…。 「うわぁ、美味しそ〜」 「今日は結構力が入ったよ」 レンゲも渡す…。 昨日はシンジに食べさせてもらったのだが、 アスカは震える右手でレンゲを持たず、不慣れな左手でお粥を食べ出した。 慣れない手でお粥を食べているアスカの姿にやはりシンジは…。 「アスカ…食べにくそうだね?どうする?僕が食べさせてあげようか」 助かった。と、言う風な眼でシンジを見つめレンゲを渡す…。 「ごめん、やっぱり左手で食べようだなんて、かなりキツイわ…」 「いいよいいよ。こんな時だからこそ助け合わないといけないからね」 適量のお粥をレンゲですくいあげるとフーフーと自分の息で冷ましていく。 「はい」 「うん…」 ハフハフっと少し熱かったのかアスカは先ほど見ていた鯉の真似をしながら 口の中にあるお粥をさらに冷ますのだった……。 そんな少し情けない光景にシンジはプッと思わず笑いを零す。 「しょっほっはかしんいっ!はにがおもしそいのよっ!?」 そんな態度と反対に心の中はシンジを笑わせる事に成功した アスカが喜んでいた。 「だってぇ〜アスカ、鯉みたいなんだもん」 「もうっ!…はいっ次…!あ〜ん」 「はいはい」 と、またお粥を冷ましアスカの口に流し込む。 「はひはいっはいでひひのっ!」 「解かったよ。はい」 一応全ての言葉が通じた事に少し驚くアスカ…。 二人は他愛も無い事で笑い、喜び… そして何時の間に朝食のお粥は全て平らげてしまった…。 何処かで風鈴の音が心地良く聞こえてくる…。 誰も居なくなった世界で響き渡る風鈴の音色は 何処までも…世界の果てにでも届くかのように綺麗に奏でていた。 昨晩は流石に風も強く悲しい事嬉しい事…様々な事があり、風鈴の存在を まったく気が付かなかった…。 しかし二人は今、ご飯を食べたと言う満腹感に心が開放されていたのか? 何時までも風鈴の音を聞き楽しんでいた…。 「「はぁ〜〜」」 中庭の池に二人は足を入れて冷たさを味わっていた。 何処かの沢から綺麗な水を取り入れているのだろう… その水は何処までも澄み渡っている…。 「こんなに水が綺麗だなんて鯉が羨ましいくらいよ」 「はは、アスカも鯉になる?ハフハフってさ?」 アスカの真似をしながらシンジが口をパクパクさせる…。 アスカはやっぱり食事中あんな鯉の真似するんじゃなかったっ。と、心底思う……。 「たくっ、バカシンジの癖に…バカの一つ覚えもいいところよっっ」 「うっ……」 少し落ち込むシンジ…。 そんなシンジに言い過ぎたかな?と、思いつつアスカは元気付ける為に 「じょ、冗談よっ」 の掛け声と共にシンジの背中を左手でバシッと一発叩く…。 だが、思いのほかアスカが放った一発は勢いがありシンジを池に押す形と なってしまった……。 「うわっ!!?」 「あっ!?」 絶対に池の中に落ちる事を予想したアスカ…。 しかし幸か不幸か池はあまり深くは無かったので何とか着地に成功したシンジ。 でも結局浴衣の膝下が水でびしょ濡れになってしまった…。 「アスカぁ〜…」 「わ、悪かったわね。…悪気なんて無いわよ?」 ザブザブと上がって来るシンジにアスカは苦笑いを浮かべつつ 申し訳無さそうにしていた…。 「大丈夫シンジ?…着替えとか…あるの?」 と、まだ申し訳無さそうなアスカにシンジは笑いながら指差した。 ん?と、思いながらアスカはシンジが指差す中庭の片隅に眼をやると、 そこにはハンガーに掛けられたシンジの制服と自分のプラグスーツがあった。 シンジは中庭の片隅まで歩き、それらを持ってくる…。 「はい、アスカのプラグスーツ…今はこれで我慢してね。 今度ちゃんとした服手に入れるから」 「え、でも血の臭いが……」 不満そうな顔でシンジに訴える…。 そんなアスカにシンジは微笑みながら言った 「大丈夫、匂いでみなよ」 と、微笑みながら言われたらイヤでもするしかない… アスカは恐る恐るプラグスーツに鼻を近づける…。 「あ、石鹸の匂いだ…」 「でしょ。何度も何度も洗ったからね」 そう言いながらアスカを抱きかかえる。 自分達の部屋に戻りシンジはアスカをその部屋に残し出て行った。 「僕は他の所で着替えてくるから」 と、言い残し…。 残されたアスカは動かしにくい身体を何とか動かし 浴衣を脱ぎ、何もまとわぬ姿となる…。 「ふ〜ん…あのプラグスーツが石鹸の匂いか…」 流石に真新しいスーツなどは無臭だったがLCLに浸かった後となると 血の異臭が俄かに感じ取られていた。 その微妙な臭いをシンジは何度も洗濯しなおして 異臭の元を断つ事に成功したのだ…。 「たしかに自分の血液がべっとりついてたはずなんだけど」 そんな事を言い、あの時の恐怖が蘇ってくる……。 「…くっ…!」 そして知らずに自分の首にさげているミサトの十字架を握り締める… 不思議と懐かしい感覚がアスカをあの時の恐怖を少しずつ無くしてくれた…。 「……ミサトのお守り…私に懐かしさをくれる…」 「アスカ〜入ってもいい?」 シンジの言葉にアスカは正気に戻る… 「なっ!ま、まだダメよ!まだ着てないわっ!」 ババッと自分の身体を両手で包み隠すアスカ…。 「ねぇシンジ…」 「ん?何アスカ」 プラグスーツに着替えながらアスカは冷静に話した。 「…このまま此処に居てもね…何時まで経っても落ち着け無いじゃない?」 「まあね…で、どうしたの?」 話しの真意が解からないシンジは更にアスカに問う。 襖の向こうから少し寂しそうなアスカの呟き声が聞こえてきた。 「戻ろう?私達が暮らしてたあの場所へ……ほら、私達にはもう戻る所は…」 「うん、そうだね。僕達はもう戻る所…ミサトさんちしか無いもんね」 暫くの沈黙の中にプラグスーツが引き締まる音が聞こえてきた。 シンジはそれを合図にもう一度アスカに入ってもいいか聞き、入ってきた。 「…それじゃぁ戻ろうか…僕達の家へ…」 プラグスーツの中に入ってしまった長い栗色の髪の毛を両手で フワッと取り出しアスカは太陽に包まれながら 「うんっ…帰ろうっ」 と、満面の笑みで呟いたのだった……。 遠くでミンミン蝉の鳴き声が聞こえてくる…。 「…毎年夏って言うのに…今日は涼しくない?」 木々が葉を寄せ合わせながら涼しそうな音を奏でる…。 「そうね…こんなに涼しいのってドイツ以来だわ…」 アスカはシンジにおんぶされ何処からとも無く吹き付けてくる涼しい風に笑みを零す。 「さ、今日からまた忙しくなるね?」 「へへ、私はぜ〜んぜん…だってシンジにおんぶされてるもん」 悪戯っぽい顔でシンジの肩をギュっと強く握るアスカ。 「痛いよアスカー」 シンジは両肩をキュッと引き締まらせる……。 「あらあら私はバカシンジの肩がこらない様に揉んであげたのよー」 アスカを見る為、振り向くシンジ…。 しかしその表情は何処と無く先ほどのアスカの悪戯っぽい顔に似ていた。 「アスカ…?降ろしてもいいのかな〜」 やられたと言った感じの表情になるアスカは 「だ、ダメよ!あんたそんなことすると吹っ飛ばすわよ!」 と、思いきりシンジにしがみついた。 「いてて…」 「へ?…苦しかった?」 シンジが苦しかったと思いアスカは力を緩めた…。 そして優しく肩を数回叩いてやる…。 「もう大丈夫だよ。…ありがとう」 「さ、そろそろ行かない?」 シンジがアスカに言われ、今まで旅館の壁に立て掛けていた杖をアスカに渡す。 その木の杖は少し紐で工夫がされており背中にさげられるようになっていた…。 それを背中にさげるアスカ…。 「よしっ僕達の家へっ」 「ええ、頼むわよシンジっ」 真夏の太陽に見つめられながらシンジは元気良く歩き出した…。 アスカは思う…シンジが以前より少し強くなった事に…そして、 そんなシンジの少し強くなった所を見つける事が出来た自分を…。 二人は出来るだけの食料・衣類を手に入れ、 雨風から自分達を守ってくれた旅館を後にする…。 道路標識を頼りに第三新東京市を目指すシンジ… だが、懐かしの我が家へは軽く100kmを超えていた………。 つづく 見渡す限り誰も居ない…ゴーストタウン…。 普通こんな所に居たら発狂して死んでいたかもしれない。 しかし今此処には自分を安心させてくれる人が居る…。 そして誰も居ない町から抜け出し二人は山道へと入っていった…。 次回 ―漆黒の闇―
KENとEVAキャラの座談会! KEN:さてさて・・・これからどうなるんだろう・・・ カヲル:ふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふんふ〜んふふ〜ん KEN:出たな!ほ○キャラ! カヲル:なんでそんなことを言うんだい?好意に値しないよ KEN:別に・・・いいけど・・・ カヲル:僕は出る予定ってあるのかな? KEN:あんまり、出てきて欲しくない・・・ 素晴らしい作品を投稿してくれたNOBさんへの感想はこちら!