何処までも蒼く、果てしなささを実感させる空。

その空より更に高い位置にある赤い環…。

少女は少年に聞く…

 

 

「ねぇ、しんどくない?」

「うん、まだまだいけるよ」

 

 

穏やかな二人の表情に爽やかな微風…

そして優しい太陽の光…。

自然の力は二人の少年少女の力になり、

また脅威にもなる……。

誰も居なくなってしまった世界に生きる二人にとって

景色を…綺麗な風景を眺める事は数少ない唯一の

楽しみなのかもしれない……。

あの何もかもが狂っていた戦いから解き放たれた二人は、

自然と笑みを零しながらその空・山々を見つめていた…。

気持ち良さそうに空を飛ぶ鳥達…

そんな小さな存在を見つめていると不思議と元気が湧いてくる…。

普段より涼しくなった風が二人を癒すように包み込む。

3rdインパクトが起こり、地球の地軸がもとに戻ったのか?

それを知る手立てなど二人にはまだ何も無かった………。

 

 

 


THE END OF

EVANGELION

絶望から始まるこの世界。

そんな終わりの世界で見つけた

想い

第7話

―漆黒の闇―


 

 

 

蝉が鳴く…。

 

しかしその鳴く数は何時もより全然聞こえない。

誰も居なく、幽霊でも出そうな道を歩くシンジ…

アスカはシンジの背にもたれ掛かり辺りを見つめる。

 

 

「……午前からずっと歩いてるけど…」

「うん、そうだね」

 

 

アスカは少しバツが悪そうな顔で呆れる。

 

 

「そうだね。じゃないわよっ…ほんとにしんどくない?」

 

 

と、最後は優しく問い掛ける…これで三度目だ…。

 

 

「なんだか今日の僕は疲れを全く感じないんだよ」

「はっ、そりゃたくましくなられたこと……!」

「は、はは…」

 

 

と、折角自分がこんなにも優しすぎる声で気使ってあげてるのに

シンジはそれに甘えない…正直アスカは今身体が不自由なだけに

シンジにしてやれる事は気を使う事ぐらいしか出来なかった…。

 

 

(少し位、私の言葉に甘えたって全然いいじゃないの?)

 

 

「え?何か言った?アスカ…」

「へっ?な、何もっ」

 

 

顔が熱くなる…。

 

 

 

今、私達は軽い坂道を歩いてんの…。

何故って?そりゃ第三新東京市に帰る為じゃない。

でね、その為に今、木々に囲まれた車二台がやっと通れる

細い並木道をシンジは私をおぶって歩いてるのね。

シンジの首には2つカバンが提げられている…

それは胸の前でクロスに交差して、少しだけ

シンジの首が苦しそう……。

 

 

「でも何時までこの山道は終わるのかしらね?」

 

 

アスカがシンジに問い掛ける…。

シンジは少しだけ首をアスカに向けながら呟く。

 

 

「…多分、今日中には抜けられないよ…」

 

 

シンジの言葉にアスカはタラ〜っと冷や汗を流す。

 

 

「そ、そうなの…」

 

 

そう言えば一時間前に見た道路標識に

第3新東京市までの距離は軽く100kmを超えていた様な…。

 

 

「でも田舎町で生活用品手に入れれてほんとよかったわね〜」

「あ、うんそうだね。特にライターとか結構嬉しいかも」

 

 

あの田舎町で二人はコンビニと薬局やらで必要な生活用品と

怪我した時の為にと医療品などを手に入れていたのだった。

 

 

「服もほしいな〜…旅館では浴衣とタオルしかなかったからね」

「はは、そうだね……この山を抜けたらすぐ探そうか」

「うん、それ賛成っ!」

 

 

高い木々よりもっと高い空を見る…。

 

 

「雲が流れて綺麗…」

 

 

アスカが呟く……シンジはそんなアスカの呟きに

耳を傾けながら少し坂道の角度が増した道を歩く…。

道路の端の下には密かに川が流れており、

サァァァーと、言う聞き心地がよい音を辺りに

撒き散らせ自然の音楽を二人に聞かせる。

 

 

「………」

「………」

 

 

何も話さずとも何となく解かり合える様な…。

更に歩けば体育祭などでよく見るテントと同じくらいの

大きさで作られた木の社…二人はその社の中を覗くと

そこには優しそうな面構えをしたお地蔵さんが横二列に並んで

二人を見守っていた…。

恐らく旅行く人々の安全を祈願して作られたお地蔵さんなのだろう。

 

 

「へ〜、なんだか本当に旅をしているって感じがするな〜」

「何処から見ても旅よこれは…」

 

 

アスカはシンジの両肩に手を置き、変わらない

風景を飽きることなく何時までも見ていた…。

……………………

 

………………

 

…………

 

……

 

 

暖かな背…

シンジの動きに身を任せ、

眠気がアスカを襲う…。

(眠たい…此処で寝たらシンジに悪いわよ)

水のせせらぎ…風のささやき…

その二つの所為で寝るなというのは無理だろう。

眠りの世界と現実の世界、そんな狭間で

アスカはシンジの肩に頬を押し付ける……。

 

 

「………あふ…」

 

 

ふいに自分の口から漏れる欠伸…。

耳を澄ませば川の音と、何故かシンが

小さく笑う声が聞こえた…。

 

 

(笑わなくてもいいじゃない……)

 

 

アスカは+思考で考えてみる。と、こう思う…

今まで辛い戦いと、自分の存在理由・価値が無くなったと言う事で

悲しかったあの時は安らかに眠れた日などこれっぽっちも無かった…

しかしまさかこんな情けなく鈍感で、でも優しく、自分を何時も心配してくれている

この暖かなシンジの背中なのだからいいか…と、思ってしまう。

 

 

(寝てもいいかな〜?……いや、やっぱだめよねぇ。あ、でもちょっとくらい…)

 

 

珍しく優柔不断な所を見せるアスカ…

でもシンジはそんなアスカを見れない…。

 

 

「アスカ、寝ててもいいよ」

「ダメよ…寝ちゃダメ…折角風景が綺麗なのに…」

「まぁそうだね」

 

 

と、自分の寝たいと言う願望を却下するアスカ…。

また少し歩く…今までガードレールがあったのに

シンジ達が歩くこの場所は何も支えが無かった…。

木と木の間から零れる太陽の光はキラキラと光、

神秘的にも見える……。

 

 

「はぁ〜気持ちがいいな〜……太陽も暑くないし、風も涼しいし…

なんだか夏って感じがしないよ…」

 

 

ふっ…と、シンジは眉を緩めて静かに微笑む…。

こんな気持ちになったのは何時以来だろうか?…否、

初めてなのかもしれない……。

歩けど歩けど木々は道路を挟み、時折『ゴミ捨てるな!』とかの

看板をよく見る……。

そんな看板があるにも関わらず時々小さなゴミくずが点々と

落ちていた…。

シンジは少しだけ残念そうにそれらを見て

 

 

「…マナーが成ってないね…」

 

 

と、一人ぼやく…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何時の間にか日が暮れていた…。

シンジは何時の間にか首に手を回してあるアスカの左腕を見る。

そこは脱着ボタンがある、それと一緒に小さな電子パネルもある…

電子パネルには今の時刻が表示されていた。

 

 

「……おかしいな…今まだ5時なのにどうしてこんなに暗いんだろう」

 

 

ちなみにアスカはグーグーと気持ち良さそうに眠っている…。

今は5時過ぎだ…しかし普段と大いに違う点があった…

それは一目瞭然…辺りが全く明るくないのだ…。

 

 

「前が見難い……どうしてこんなに暗いんだ…山だから?」

 

 

5時でも夕日とか見えるはず…シンジはそんな事を思いつつも

今夜は此処らあたりで野宿かな?っと、思った…。

今日は月も出ないらしくシンジは暗闇に慣れた眼を駆使して

休めそうな所を探す。

 

 

「クション!……山は寒いな…すんっ」

 

 

鼻を啜るシンジ……。

休めると思ったら少しだるくなる…。

 

 

「……ん〜〜…シンジ…」

「あ、起きたんだアスカ…ハクシュッ!」

 

 

と、またクシャミをするシンジ……

アスカが少し眠そうに笑っている…。

 

 

「もう夜なのっ?…私ってどれくらい寝てた?」

「すんっ…3時間くらい…今5時だよ」

「うそぉっ?それなのにどうしてこんなに暗いのよ」

 

 

シンジの首に回していた手を解きながらアスカは

シンジへの負担を和らげる…。

 

 

「わ、解からないよぉ……それにしてもアスカ寒くないの?」

それを聞くや否やアスカは声を慌たげながらどもった。

「あ、ああ、あんたの背中が温かいから寒くなんてないわよっ」

「そ、そう…ならいいんだけど…」

 

 

シンジは少しヤレヤレっと言った感じで恥ずかしそうにする。

 

 

「あれ?」

「ん、どうしたのアスカ?」

 

 

アスカがシンジの背中越しから腕を前方に差し伸べた。

そこは恐らく吹き抜けになっているのだろう…

左側の木々がそこで途切れてガードレールが現れ始めた…。

右側は相変わらず木がうっそうとしてそうだ。

 

 

「…あのガードレールの向こうって崖になってんじゃない?」

「どうだろうね?……ま、行って見れば解かるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当だ…アスカ、よく解かったね」

「へへ〜、すっごいでしょ」

 

 

道路の左側を見ればガードレールが2重になり

立っていた…。(これを突き抜けたら命は無い。と、言う意味で作られた)

右側は古ぼけた鳥居があり更に上へと上がる階段がある。

そして運良くその鳥居の近くに昼間明るい時に見た社と同じくらいの

大きさで作られたバス停がシンジ達二人の眼に映し出された。

 

 

「あ、バス停だ……あれなら雨風防げそうだね」

「雨は降りそうも無いけど…ま、そうね…あそこで休む?」

「うん…なんか疲れてきたから…疲れなくてもあそこで

 

 

朝になるのを待たなくちゃいけないけどね」

シンジは少しだけ早歩きになりながらその、バス停へと

向かう…。

「さて、今日は此処で一泊か…私達の家へはあと何百キロでしょね?」

 

 

シンジの背中から勢いよく地に降り立ったアスカ…

少し膝がガクッとなっていまったがどうにか踏ん張る…。

 

 

「はぁ〜…やっぱり結構きつかったかも」

 

 

シンジは首に提げているカバンを地面に置く…

そしてカバンからバス停の中を覆えるビニールシートを取り出す。

広げられたシートにドカッと座り込むシンジは少しだけ自分の身体に

違和感を覚える…。

 

 

(身体がさっきからだるい…それに寒いし、こんな時に風邪?)

 

 

「何悩んでんのシンジ?」

「え?いや何でもないよ」

 

 

ドキッとしながらもシンジは平静を装い、

アスカへとニコッと元気な姿を見せる……。

 

 

「あ、そう…ならいいんだけどね。…なんか一瞬顔が青ざめてたから心配したわよ」

 

 

そんなアスカの心使いが嬉しく、シンジは心の中で

『どうしてアスカに本当の事言わないんだよ〜』と、一人

愚痴ってた。

そうなると意地でも隠し通さなければいけない。

 

 

「ん゛ん゛っ!そろそろご飯食べようか」

「ええっ、お腹ぺっこっぺこっ…でも私はお粥なのよね〜…ふぅ〜脂っこい物食べたいなぁ〜」

 

 

鼻の中が苦しいのか?シンジは喉を乱暴に鳴らすと

カバンからライターと僅かな新聞紙を取り出した…。

 

 

「アスカ…一つ頼まれてくれないかな?」

「…ええっ、私に出来る事ならなんなりとっ」

 

 

アスカはやっとシンジが自分に頼ってくれたので嬉しさ全開。

しかしそんなアスカとは裏腹にシンジは何時までも歩いていた

疲労が風邪と一緒にやってきてかなり苦しそうだ…。

 

 

「すんっ!…えと、濡れて無さそうな木を多めに持ってきて欲しいな…?」

「解かったわっ。じゃ、ちょっと歩いてくるねっ……」

 

 

アスカはシートから立ち上がり背中に提げている杖代わりの木を

右手に持ち、シンジが下ろした軽そうなカバンを一つ首に提げ

闇夜へと消えて行った……。

 

 

「ミサトさん…まずいよ…しんどいです…」

 

 

今更ながらシンジは自分に自惚れていたのに気が付いた…。

あの時アスカが休もうと、言っていたのに自分はそれに従わなかった…。

 

 

「あの時休んでいたら…風邪にはならなかったのかなミサトさん?」

 

 

そして空しく、この世に居ないミサトに話し掛けるシンジ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し肌寒い風がアスカに吹き付ける…。

しかしそんな寒さも、意外に暖かいプラグスーツに

よってアスカはあまり寒さを感じない…

たぶんシンジの温もりが身体に残っている所為でもあるんだろう…。

 

 

「………木…木…」

 

 

と、ブツブツ呟きながら少女はバス停の近くにある鳥居へと

近づいていく……。

 

 

灯篭が妖しく燈っている…

おそらく此処の電気は時間が経つと自動的に

付く仕組みになっているのだろう…。

 

 

「薄いオレンジ色……雰囲気引き立てるわね」

 

 

鳥居の向こうにある百段以上はある階段を眺める…。

一番上の方はどうなっているのだろうか?アスカは

少し見てみたいな…と、思いながらも今日はやめておこう…

そう思い直した…。

木々が揺らぎ始めた…アスカは乱れる髪を左手で

抑えながらも木が一杯落ちてそうな場所へと向かう。

風の音共にバス停からシンジのクシャミが聞こえた…。

 

 

「ぷっ…そんなに寒いかしら?………ま、その内暖かくなるからいいかぁ」

 

 

バキッ…そう鳴った様な?

アスカは足元を見ると、そこにはよく燃えそうな木が

一杯落ちていた……少しニヤけてそれらを拾う…。

 

 

「こんなにあったら一晩楽に過ごせるわねっ」

 

 

拾うのがもどかしく、杖代わりにしている木を背中に提げると

アスカは両手で木々を拾い集め出した…。

 

 

「……本当に暗いわね…あの電気がなかったら木なんか

殆ど拾えなかったかもね。……それにしてもこの星の量は凄いわ…

あの赤い海で見た空よりもっと見える……」

 

 

まだ五時過ぎなのに結構な数の星が見える。

3rdインパクトが発動してから、星を見る機会が増えたなと思う…

アスカは両手一杯に拾い集めた木を重そうに持って、

シンジの居るバス停へと向かって行った……。

 

 

やはり杖を突かないと苦しい…

時折、意思を裏切り両方の足に力が全く入らなくなる…

アスカは地に両膝をガクッと着きながら、

更に眼と腕に、痛み疼き始める感覚を覚える…。

 

 

「つっ…どうしてまた……まさか無理のしすぎ?…な訳無いわよっ」

 

 

自分に言い聞かせアスカは足に力を込めるとググッと立ち上がり、

ようやくシンジの居るバス停へと帰ってきた…。

 

 

「お待ちどうさま…最悪よ…また痛くなってきた…」

 

 

バス停の中に入るとシンジが小さな鍋と

田舎町のコンビニで手に入れた雑炊の素を出して

アスカを待っていた…。

 

 

「え?だ、大丈夫?」

「まあ実際には怪我なんて無い訳だから、大丈夫なんだけどね」

「ごめん…木なんか取りに行かせて…」

 

 

シンジは謝りながらも、アスカは自分の不調を隠さず自分に

言ってきた事に、先ほどの自分を比べた…。

 

 

(僕も風邪引いたって言っとけばよかったな…)

 

 

「だ、大丈夫っ。実際には怪我なんてしてないから」

 

 

こんな生活が続いたらお先真っ暗だよ…

どうすればアスカの精神的な怪我を治せば…

 

 

「ほらバカシンジ…早くご飯にしようよ。私は大丈夫だからさ」

 

 

アスカは言いつつバス停内にあったゴミ缶の中に適量の木を新聞と一緒に

入れ出し、勝手にシンジのポケットに手を突っ込んでライターを取り出した…。

 

 

「ア、アスカっこしょばいじゃないかっ」

「あんたがさっさとしないからでしょっ」

 

 

と、さり気なくアスカは心配そうな表情だったシンジの

顔を恥ずかしそうな表情にするのだった…。

これによりシンジのアスカへの心配は少しだけ改善。

恥ずかしいけどシンジはコンビニで手に入れたアウトドア用の鉄アミを取り出す。

それをゴミ缶の上に置き、アミの上に鍋を置く…。

それらの作業をしてるまに火は小さな木からチロチロと燃え出してきた。

 

 

「火が熱くて…気持ちいいな……寒いからちょうどいいよ」

「寒い?ほんと寒いの?私は全然寒くないわ」

「へ〜、それじゃ僕…風邪引いたのかなぁ?」

 

 

何故か白々しく言うシンジ…

 

 

「ぷ、バカは風邪引かないのよ?シンジ君」

 

 

そんな言い方をするのでアスカは気にしなく笑う。

 

 

「げほっ…どうだろうね…」

「…………」

 

 

また咳をするシンジ…そんなシンジを少しだけ

心配するような眼で見つめるアスカ…。

 

 

(ん?シンジ震えてない?………火が傍で燃えてるのに?)

 

 

「シンジ………」

「うん?どうしたのアスカ?」

 

 

何時ものシンジの笑顔…。

 

 

(気のせいか…)

 

 

眼が疼く中アスカは笑顔のシンジの僅かな変わりようを

見抜く事が出来なかった…。

 

 

「よしシンジっ今日は私がやったげるっ」

 

 

シンジはアスカの元気な声を聞きながらもこう思う…

お粥なんてこのレトルトの袋から出して、温めるだけだよアスカ。

 

 

「そう?ならやってほしいな…アスカが作るの初めて見るからね」

 

 

シンジはアスカに晩御飯の暖めを委ねると少しだけ

乱暴に壁へともたれかかる……。

 

 

「温まったら言ってよ……少しだけ眼を閉じてるから」

「ええっ、まっかせなさいっ!」

 

 

アスカが何かブツブツ呟きながらお粥を温めている…

だがそんな声も何故かシンジには遠くからの声の様に聞こえ、

アスカが近くに居ながらもシンジはアスカを遠い存在の

様に思えた……。

 

 

(……食欲無くなってきた…後で薬、飲まなくっちゃ…)

 

 

パチパチと燃え上がる木は灰色の煙を撒き散らしながら

シンジを寒さから守り暖める…。

薄っすらと眼を開けばプラグスーツを着こなしたアスカの後姿……。

そしてその向こうは道路にガードレール、更にもっと向こうは

崖…シンジは相当歩いて結構な高さまで歩き此処まで制覇したようだ。

最後にもっともっと向こうには並んでそびえる山々…

漆黒の闇に浮かぶ小さな星は遠くにある山を薄暗く照らしていた……。

 

 

「へっくしょんっ!くしょんっ!!」

「いっ!?………ば、バカシンジどうしたのよ?」

 

 

また突然のクシャミ…アスカはそれにビックリしながらも

後ろへ振り返るとそこには自分の身体を抱きしめながら

身を震わすシンジがいた……。

 

 

「…か、身体中が痛い………」

「…あんたもしかして風邪でも引いたのっ?」

 

 

節々が痛いのだろう…シンジはダルそうに眉をひそめると

辛そうなため息を吐き出す……。

 

 

「…うん…言いそびれて…」

「何時からなの?症状は?」

「…ずずっ…こ、此処を見つけてから…」

 

 

恐らくシンジは一夜休める所を発見したという安心感から

ドッと疲れが出たのかもしれない……。

 

 

「……あ、アスカ……お粥沸騰してるよ…」

「げっ、やばぁっ…」

 

 

心配の矛先をお鍋に戻し、アスカはメラメラと燃え盛る

ゴミ缶の上からお鍋を冷たい地面へと置いた…。

 

 

「で…シンジ、大丈夫?…食欲は?」

 

 

そんな事を聞いてもアスカなら食欲が無いシンジに

無理やりにでもお粥を食べさすだろう…。

 

 

「…無い…でも薬飲みたいから食べなくちゃ…」

「うん、その方が身体にもいいからねっ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何時の間にか七時を過ぎていた…。

人工の光が無いバス停…近くで燈る灯篭の火も

此処までは届かなかった…。

しかしそんな中木を燃やす事によって漆黒の闇からの

恐ろしさを消し去るシンジ達…。

 

 

「……ごちそうさま……」

「…だ、ダルそうね……」

 

 

ゴロンと地面に寝転ぶシンジ……

風邪からの頭痛と今までの動きの衝動でたまらなく

辛そうだ…。

 

 

「あ〜…あんた全然食べてないじゃないっ」

「…だって食欲無いんだよ?…一応食べたほうだよ〜」

「……もぉ…はいこれ」

 

 

ん?と、思い振り返ったシンジはアスカの手の平に

あったのは3錠の錠剤だった…。

 

 

「…忘れてた……あ、3錠も飲まなきゃいけないんだ?」

「え〜そうよ……」

 

 

ウソだった……本当は16歳以下は2錠で十分だったのだが、

アスカはこのまま風邪を引き伸ばしてはいけないと思い、

一錠+するのだった…。

 

 

(まぁシンジ位の病状だったらグッスリ眠れるわね)

 

 

「シンジ…今日は早いけど、あんたもう寝ちゃいなさいよ?」

 

 

シンジは薬を口に入れ、紙コップに入った水を飲み干す…。

 

 

「…うん…でも薬が効くまで寝れないよ…何だか」

 

 

風邪を引くと何故だか心細くなる人間…。

否、そんな事を思う人間はあまり居ないかもしれない……

しかしシンジは心細い……

誰も居なく…傍に居るのはアスカだけ…

こういった危機を自分達で乗り越えていくのには

余りにも辛いな…と、思うのだった…。

本当なら病院に行って風邪薬もらって、

または病状が酷かったら注射を打ってもらうはず…

こう言う市販で売られている風邪薬はシンジにとって

何処の病院も開いていない時の為の最後の手段…。

 

 

「…は〜…しんどぃ……」

「すぐ良くなるわよ。……はい、タオル…寒いんでしょ?」

「ありがとうアスカ……くしゅんっ!」

「…………寒い?」

 

 

マジな顔してシンジはブルブルと鳥肌を立たせて寒がる…

そんなシンジをアスカは何気に解かりきった事を聞いてみた。

 

 

「…死ぬほど寒いし…節々が痛くて…寝るのも辛いよ」

「やっぱ風邪引くと寒いのね〜……私は全然寒くないわよ」

 

 

そう言ってアスカはシンジの頬へと自分の右手の甲を

触れさせた……。

 

 

「ぅわっ…あ、温かい……」

「へへ〜当ったり前よ…私風邪引いてないもん」

 

 

シンジは羨ましそうにアスカを眺めると辛そうに壁へともたれ掛かる…。

 

 

「…もういいよ…僕もう寝る…」

「ちょっと待って…私が一番端っこで寝る…」

 

 

と、アスカはヒョイっと立ち上がると一番端っこで布類しか入っていない

カバンを自分がもたれ掛かるその場所へ置きだした。

 

 

「…あ、カバン使うんだ…」

「…シンジ…ちょっと来て」

「…?…うん」

 

 

アスカに言われるがままシンジは端っこでカバンにもたれ掛かる

アスカへと近づいていった。

 

 

「…座って…」

「…うん……で?」

「あんた寒くて辛いんでしょ?……だったらこうよ」

 

 

と、アスカは隣に居るシンジの肩をグイっと引き寄せ

自分へと、もたれ掛からせた…。

 

 

「え?ぇえ?!ちょ?何するのさっアスカ?!」

「…うわっ、つ・冷た〜…あんたそこまで冷えてたのっ?」

 

 

アスカはシンジを抱き寝かしてその体温を感じ取る…。

結構大胆な事をしたものだが「心配」と、言う名の下に

アスカは羞恥と、言うものは微塵も感じなかった…。

 

 

「…ななな!アスカ何してるのさっ!?」

「いいからあんたは私にもたれときゃいいのよっ。

その方があんた、温かいからいいでしょうが?」

 

 

たしかにアスカの体温はシンジにとって温かい…

しかし、右腕に感じるアスカの生命の証、鼓動の音が

余計に頭をフラフラさせるのは確かだった…。

 

 

「…で、このタオルを二人で被ればもっと温かくなるでしょ?」

 

 

シンジの耳にアスカの長く綺麗なサラサラの髪の毛がこそばゆく

まとわり付く…。

 

 

「確かに…温かいけど…これじゃぁ余計悪化するよぉ〜」

「なんですってぇぇ〜…?」

「ひっ……わ、解かったよ…お言葉に甘えます」

 

 

火がパチパチ燃えてる中シンジはアスカの助けで

寒さから身を守ってもらう…。

 

 

「……ありがとう…アスカ…」

「いいわよ…気にしないで…でも明日からは無理したら

ダメだからね…」

 

 

見下ろすようにシンジを見つめるアスカ…

少し怒っている様にも見えるが何処か

優しい眼差しである……。

 

 

「うん……今日は早いけどもう寝るよ」

「ええ、私も少ししたら寝るから…」

 

 

ゆっくり眼を閉じるシンジ…

そんなシンジをアスカは何時までも見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後…

シンジは夢を見た…

何処か知らない場所で懐かしいあの人達と、

母と顔を知らないはずのアスカのママと出逢った夢を…。

シンジが眠ってからアスカはそんな夢を見ているなんて

知るはずも無い。だが寝入ったシンジの眼から流れた

一筋の涙はアスカにとって何を思わせたのだろうか?

 

 

「……泣いているのに笑ってる…懐かしい夢見てるんだろうなぁ」

 

 

大丈夫…アスカにもその涙の意味は良い様に取られた様だ…。

そしてまた一日が二人に終わりを告げる…

ようやく訪れた眠気にアスカは快く受け止め、

シンジと同様に眠りの世界に陥っていくのだった…。

 

 

 

 

 

 

つづく

朝露が漂う午前5時…。

朝早く眼が覚めたシンジ達…

風邪も微熱に下がり、少し早いが

また旅支度…。

少し気になるのが空を覆う暗い雲…

雨が降りそうと思いつつも早く

家に帰りたいと思う二人は無謀にも

その場所を後にする…そして、

自然の脅威は恐らく二人を襲いに来るだろう…。

次回

―自然の脅威―

 


KENとEVAキャラの座談会!!

 

KEN:さて…この時期、風邪をひきやすくなってきました

シンジ:僕もひいてます…

KEN:君には見舞いなんかするもんか!

シンジ:酷いですね、なんでですか?

KEN:どうせ、夫婦で、お楽しみ中なんだろう?

シンジ:ち、違いますよ!

KEN:いいさ…いいさ…どうせ俺は…

シンジ:あ、あのぉ〜

KEN:さぁ、早くアスカのところに戻りなさい…

シンジ:はい…

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