さんの短歌(三)
母を憶う
60〜80

父の出征

父出征一族集うその写真幼子われは母に抱かれて

小学校入学

温かきミルクの馳走頂きつ見上ぐれば母笑まいておわす

母の里帰り

幅狭き田んぼ道を急ぎ行く心休まる生まれ家目指し

のんびりと朝寝している母見るは家ではあらぬ姿なりけり

雨の日

教室に傘届け呉る母を見て美人と云われテレたあの日よ

働く母

暗くなり野良から帰る母待ちてその面みれば安堵した日々

四人兄弟

末っ子は桃の節句に生まれしが男子と聞きて苦笑しと云ふ

四人の葬送

父母祖父母四年の内に葬りしその苦労をばしみじみ想う

金婚式を祝う

山の宿うから集いて金婚に入選歌詠み華を添えたり
   一度だに愛づるとふ言なきままに四十五年の老並び居る」(「さといも」より)

花束を受け呉る父母の笑顔にも歳を重ねし労苦しのばる

父の死

突然の父の他界は堪えたり母の背か細く力無く見ゆ

入院

背をまるめベッドにポツンと座り居る母の背さすり昔語らう

外泊に曾孫と遊び楽しげに病院戻るその日忘れて

最期

一筋の頬を伝いて落つ涙何の涙か知るは母のみ

臨終の母の手を取り気が付きしその関節の頑丈なこと

葬儀

迷わずに導き賜え父のもと来世で共に花作られよ

三回忌

三回忌前日倒れ病室に手合わせ詫びる親不孝われ

母を憶う

怒りたる顔を見たのも二度三度何時も笑顔を呉れし母好き

思い出を一つだけ聴く長身の母は高飛び選手ということ

風邪引きて寝込みしわれに炊き呉るゝあの粥の味今も忘れじ

目覚むれば新しきシャツ揃え有りこれ元朝の母の年玉

十億の人に十億の母あれど吾が母に勝る母あらめやも
                           
網谷一才の歌

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