
| プロローグ 金魚すくいってなんだか残酷だと思いませんか。ううん、金魚にとってじゃないの。人間にとって。だって、すくった後、持って帰るでしょ、そのあとずっと金魚の世話が待ってるわけじゃないですか。これって結局は金魚のエサ係でしょ。 もちろん金魚なんて、ほったらかしにして水槽の水が真緑になっても、逆にそうなったら、エサなんかやらなくても一年くらいは生きてるような魚です。だから、エサ係なんて言い方はどうかと思うけど、それはもう気の持ちようですね。 私は金魚のエサ係だったし、それはそれでよかったんです。近所の臭い臭いドブから糸ミミズをとってきて、さっと洗って水槽に落とすとね、もう待ちきれないって感じで水面まで揚がってきて、パクッ、と。徐々に沈んでいく残りのミミズだって、いつもの金魚だったら見せないような俊敏な動きで、ヒラリ、パクッ、ヒラリ、パクッ、ヒラリ、パクッって。これは見ていて爽快なんです。だからドブに網を突っ込むエサ捕りは苦痛でしかなかったけど、やめられないの。人工のエサじゃ、ここまで飛びついてくれないから。それに、食べ残すでしょ、人工のエサだと。その処理も大変ですからね。 1 高校の頃、ものすごくいじめられてた男の子がいたのよ。遠山って子でね、私が気づいたときはもうかなりイジメもエスカレートしてて、ある時ね、美人の若い先生の授業の前、教壇の上に白い布きれが置かれてたの。教壇に立った先生、思わず手に取るじゃない、それがブリーフなのよ。で、遠山君の名前が書いてるってわけ。 先生もバカじゃないから、その時間、白い紙をみんなに配って、イジメについて知ってることを何でもいいから書けってことになったのね。私は何にも知らなかったから、知りませんって書いただけ。でもみんなはかなりディープなところまで知ってたみたい。放課後、イジメグループが呼び出されて、今度いじめたら停学だってことになったらしいの。 で、週明けね、友達の女の子が、 「昨日、すごいことになったらしいわよ」 「なにが?」 「トーヤマのことよ」 「遠山君がどうかしたの?」 「いじめがばれたじゃない、で、リンチされたんだって。男子みんなに」 ふ〜ん、って答えただけ。だってそんなことに関心ないし、あの大人しくてちょっと上品なところのある遠山君には同情だってしてたから。 「それが、すごいのよ」 友達は私にかまわず続けた。 2 誰がばらしたんだってことになって、犯人探しがはじまったのね。クラスの男子全員、いじめの共犯者と言えば共犯者なんだから、名指しされた三人としては腹がおさまらないわけじゃない。それでクラスの男子全員、ブラスバンドの練習室に集めたんだって。ブラバンなんて十年以上も前に廃部でしょ、あそこなら人も来ないだろうって。 それでトーヤマにパンツを脱がせて……。 え? そんな驚くようなことじゃないでしょ。いじめの定番じゃない。 で、そこにいた男子生徒を出席番号順に並ばせて、下の毛をね、むしらせたんだって。むしった毛は量がわかるように紙の上に置くの。それが少ないとトーヤマに同情した、って言われるもんだから、みんなかなり必死にむしったんだって。 殴る蹴るだと証拠が残るでしょ。これって証拠は残っても人にはちょっと言えないからね。男子も残酷よね。でもこれでみんなが本当の共犯者でしょ、誰も告げ口しなくなったから、これからもっといじめられるわよ、トーヤマ。 3 「男子って、女子がばらしたって発想はしないの?」 「別に犯人探しはどうだっていいんでしょ、トーヤマをイジメれば、それで」 友達はそれでイジメの話を打ち切って、また他の噂を始めた。私は上の空で聞きながら、ふと遠山君の方を見ると、チラ、と、だけれど目が合った。 私を見ていた。 何かどきどきした。 イジメの噂をしていたのが聞かれたのかも知れない。いやそんなはずはない。ここから私たちのひそひそ声が聞こえるわけがない。 なんだかいろんな事を考え、考え、次の授業はまったく耳に入らなかった。 4 だから、まあ、予兆はあったとは言えるのね。目の合うことは再々だし、放課後なんか、遠山君が私に何かを渡そうとして躊躇したような感じのこともあったから。 大げさに驚く必要もなかったのよ。 たかが、靴箱の手紙くらいで。 あなたのことが気になってしかたがありません 好きです。 一度ゆっくりお話ししたいのです。遠山 この衝撃をなんて言ったらいいんだろう。もう、それこそ、天が落ちてきたような。いや、これでも足りないな。私たちの宇宙がね、もの凄い速さで隣の宇宙に衝突して、これまでの世界が全てバラバラになっちゃったような、それでも私だけは生きていて、そのバラバラになった世界を見ているような。 とにかく世界が変わっちゃったのよ。 だって、ね、私は一生、恋愛とは縁がないと思ってたわけですよ、あなた。 この顔だし。 5 ママはもの凄い美人なのに、なんで私がこんななんだろう。 といって、ママに似てないわけじゃないのね。そっくりなの。造作の一つ一つは似てると思うのに、それでもね、なんでこうも違うんだろうって言うくらい、違うのよ。 福笑いってあるじゃない。目隠しして顔の造作を並べるヤツ。だから、あれと一緒ね、きちんと並んでたら美人なんだろうけど、何かちがうのね、どこがとは言えない、とにかく、美人そっくりのブスなのよ。美人そっくりなものだから、逆にブスが引き立つのね。 小さい頃からそれはもうわかってた。大人のひそひそ話は全部聞こえてたし、あれはおばあちゃんが死んだときの法事で、酔った叔父さんが私の顔を両手でもちあげてマジマジと眺めながら、 「なんでこうなるのかね」 なんて言ったこともあったから。 ママはママで、 「男を頼りにしちゃだめよ、強くなりなさい。一人で生きていけるように」 とか言って小学校に入るなり空手と柔道に通わせるし。 女の子はフツーだったらピアノとか習うものなのに。 でもママの気持ちはわかる。 お見合いで結婚して、ハネムーンから帰ってきた翌日に交通事故で夫が死ぬなんて、そうある事じゃないけど、でもママの身には現実に起こってしまった。以来、お父さんの家をたよりに身を潜めるようにして生きてきた。おばあちゃんが倒れてからは介護のこととかで追いつめられて、ずっと安定剤を飲んでたのも知ってる。ママは女の弱さを知り尽くしていたんだと思う。私を強い女にしたい気持ちも痛いくらいわかる。だから私は頑張った。空手も、柔道も、勉強も。男に負けないように頑張った。 6 私にとって男は打ち負かすライバルではあっても、決して恋愛の相手じゃなかった。初恋も小学校六年の頃、同級生の女の子だった。向こうはふざけたキスだったんだろうけど、私はあれが真剣なファースト・キスだと思ってる。 それ以来、醒めてた。もう人を好きになることなんかないと思ってたし、ましてや男なんか! 柔道場や空手道場で毎日ぶつかり合ってるあの汗くさい肉のかたまりに恋なんてするわけがない、と思ってた。 でも遠山君は違ってたのよ。私よりも背が低くて、細くて、上品で、だからイジメられてたのかもしれないけど、これまで知ってるどんな男とも違ってたのね。守ってあげたいタイプかな。 私も会ってお話ししたいです。 どこがいいですか。 なんて返事を書いたわけ。震える手で。 もう、この返事への返事が来るまでの数時間の長かったこと! 日曜日に午後1時、ブラバンの廃部屋で。 ここで気づくべきだったのね。 自分があんなリンチを受けた部屋に呼び出すなんて、こんな無粋なこと、あるわけがない。 でも私は舞い上がってたから気づかなかった。 土曜の夜、母の目を盗んで、一生縁がないだろうと思っていたルージュを、鏡を見ながらそっと引いてみた。上手く引けるわけもない赤い線が、それでも私の顔に華やいだ雰囲気を与えてくれた。 笑ってみた。 別人のようだと思った。 思えば鏡の前で笑うことなんか、ここ数年なかった。鏡は私にとって苦痛を与える道具でしかなかったから、いつのまにか鏡を見るのを避けてたのかも知れない。 7 で、当日。 ほこりっぽい部屋に一人で立って待ってたわ、遠山君。 私を見るなり泣き出したの。 ……辛かったんだ…… 私は切なさにもらい泣きした。 この人の辛さは私の辛さだ。 私はこれからこの人の痛みを自分の痛みとして生きていこう。 そういう想いがあふれ出て、私は何か聖母にでもなったような、おおらかな気持ちに包まれたのね。 でもどうしていいかわからない。 遠山君は歩み寄ってくるし。 手を私の肩にかけるし。 抱きついてくるし。 ……ちょっと、いきなりこれはないんじゃない…… おまけに唇を突き出してくるし。 8 変だ、と思うと、さっきからの控え室の物音が気になった。 私は遠山君をそっと押しのけると、控え室の方を向いた。 バーン、とドアが開き、例のイジメグループの三人が飛び出してきた。 飛び出して来るなり、ホコリだらけの床に笑い転げた。 私は全てを悟り、頭の混乱を鎮めようとした。 「ほら、お前が選んだんだろ、犬の糞と、世界一のブスと、どっちにキスするか」 そういって三人はしつこいくらい、床を転げながら笑い続けた。 笑い転げながら、やっとリーダー格の男子が言った。 「やっぱりおまえ一人じゃ無理か、よし」 三人は立ち上がり、二人が私の腕を掴もうと両側から迫ってきた。あと一人は遠山君の背中を押している。 「大人しくしてろよ、ドブス」 私はやっと混乱した頭を収拾することが出来た。 怒りに我を忘れることもなかった。 9 何が起こったのか、私以外の誰も気づいてはいないだろう。三人は床に転げ、丸くなって身動きすることさえ出来ず、ただうめき声を上げていた。 初めて男の急所を蹴った。 ブニャッとした、拍子抜けするような感触。 手加減したのに、もの凄い効果だ。 私はリーダー格の、ケンカだけはやたら強いという男の喉をさらに蹴り上げた。仰向きにぶっ倒れ、もういちど丸くなり、血を吐いた。もちろん手加減はしていたけれど、食道かどこかの血管を切ったのだろう。かなりの出血だ。 「てめぇ」 これだけ血を吐いて、それでもまだ力関係の理解できぬバカ丸出しの目でこちらを見る。 どうしょうもないね。 今度はあごを蹴り上げ、仰向けざまになったところで、みぞおちにカカト、一瞬、ネジる。こいつは詰まった水道のような音を立てて胃液を吐き、咳き込みながらうずくまる。喉の奥の傷に新鮮な胃液がしみて、地獄のように痛かろうよ。ザマァみやがれ。 でもあんたって、ほんとにバカだね、涙目でウオォーと立ち上がったところで隙だらけ。 膝をハラうと、ドターッと、今度もまた受け身もとれずに後頭部からブッ倒れる。 イヤだったけど、こいつの股ぐらを掴んでやった。 力をこめて、グイッとね。 「ひとつ潰すよ。文句なんか言うなよ」 グイッと。 「た、助けてくれ」 「もう遅いよ」 タマの一つを探り当て、絞るように力を入れた。 「ぐおぉー」 うめきながら、こいつ、漏らし始めた。小だけじゃなく、大も。 ああもう、汚くて、臭くて、やる気をなくす。 ひいぃなんて泣き始めてるし。 後の二人は問題外の外。凍りついた目で私を見ている。 泣きじゃくるリーダー格を解放して遠山君の顔を見ると、怯えっきった表情になんだか猛烈な怒りがこみ上げてきた。 おしっこで汚れた手で頬をはり倒し、その制服で手を拭いた。 「四人ともそこに正座しな」 こうして私には四人の奴隷が仕えることになった。 10 イジメグループの三人は、つきあってみれば、バカなだけの素直な男の子だった。遠山は……どういう人間なのか今になってもわからない。人間だったのかさえ。三人組は遠山が怖かったんだとやっとわかった。 で、それから一月くらいたったあるとき、三人組とデパートでウロチョロしてて、元リーダーと二人でいるところをママに見られてしまった。 型どおりに挨拶した後、元リーダーは、 「すげえイイ女ですね。いえ、アネさんにそっくりなんですが」 などと私と見比べながら言った。 その夜、 「あの男の子、誰?」 聞かれるだろうとは思ってた。小さい頃から、男との付き合いは気をつけろだの何だのと、五月蠅く言われ続けてたから。そりゃ、ママくらい美人なら気をつけなくちゃいけないんだろうけど、この私ですよ。少々虫が付いたくらい、喜んでくれてもいいんじゃないの。 そんな気持ちもあって、 「カレよ」 ママがうろたえる様を期待したのに、 「じゃ、今度、家につれていらっしゃいよ。土曜日の午後なんかどう? お茶とケーキ用意しとくから」 上品に微笑まれて、ちょっと気合いぬけしてしまった。 11 で、土曜日、元リーダーはママに食われてしまったってわけ。 私は、細く開けた障子の向こうで、ママの舌と唇が元リーダーのからだをまるで金魚のように泳ぐのを眺めてた。ヒラヒラと、あるいはゆるゆると、金魚は自由自在にそのヒレを泳がせながら、上へ下へ、右へ左へ、エサを求めてさまよった。そしていつの間にか二匹になった金魚は交互に元リーダーを飲み込んで、私はその自在さと美しさに見とれたわ。でも、苦痛とも快楽とも知れぬ声を、元リーダーだけじゃなく、ママままでもがあげていたのがちょっとイヤだった。こういうときこそ、ママには楚々としていて欲しかったのに。 最後の一滴が金魚の中に消えたとき、元リーダーの姿はどこにもなかった。 ママは静かに居住まいを正し、頬に貼りつく髪を耳にそっとかき上げながら、 「駄目よ、のぞき見なんかしちゃ」 元リーダーは跡形もなく消えた。もちろん、みんなの記憶からも。だから誰も騒がなかった。 12 翌週の土曜日、イジメグループの残りの二人はいちどに食われた。 あちらと思えばまたこちら。 自由自在に二つの体を泳ぐ金魚に翻弄されながら、この二人は消えてしまった。私の記憶の中にだけ、その姿を残して。 その夜、 「私ね、生まれて初めて食事をしてる気がするのよ」 ママは言った。 「だって、お見合いで結婚するまで、男の方とおつきあいするなんてとんでもなかったし、パパはすぐに死んじゃったでしょ、ね……だから」 毎週、エサを運んで欲しいのね。 私は潤んだママの目に、 ……わかったわよ。ドブをさらって新鮮なエサを捕ってくりゃいいんでしょ…… 無言でそう返事した。 「お願いよ」 ママは金魚のような唇を赤いヒレのような舌で湿して、いたずらっぽく笑った。 13 一月後、クラスの男子は遠山ひとりを残して消えた。 遠山はエサとして何か問題がありそうなんで、やめてたの。 この予感は的中したんだけど。 で、一年経つうちに学校中の男子が遠山以外、全部消えてしまって、こいつを食わせたらもう女子校になるんじゃないかって瀬戸際、街でいかにも胡散臭そうな男に呼び止められた。 「お嬢さん、すごくカワイイねぇ。ねえ、お茶しない? 一時間五千円あげるからさぁ」 これまで、街で声をかけられたことなんか一度もなかったのに。 「ね、ね、じゃ、七千円あげるよ、七千円、ね、カワイイお嬢さん」 カワイイなんて言葉、かけてもらったの初めてよ。 「もう、一万円出しちゃお、一万円。お茶飲むだけだよ、一万円」 だからお礼に、ムゲに突っぱねたりしなかった。振り返りざま、 「三万円!」 男はびっくりして私の顔を眺めたわ。私は、 「三万円よ。でも、もちろん、お茶だけじゃないのよ。あなたを骨まで食べてあげるから」 ママがよくやるように、唇を舌で湿すフリをしてみせると、 「ど、どこに行こう、ホ、ホ、ホ、ホネ、ホネ、ホテ、ホテ」 「ううん、ウチがいいな。そのほうが落ち着くから。一緒に来て」 これならドブさらいより簡単でお小遣い稼ぎにもなるし、イケルと思ったのに、ママったら、 「ああ、マズい、マズいわ、こんなの、とてもマズくて食べられたもんじゃない」 なんて半分以上食べ残すから、カケラの掃除が大変だった。 ほんとに、お手軽なのは駄目なのね。 反省。 「同級生はど〜したのよ? あと一人、いたはずだよ?」 「いるにはいるけど」 「な〜んなのよ」 「あの子はちょっと……」 「い〜いじゃないそんなの気にしなくてもっ! お茶とケーキの用意ぐらいしとくから、土曜の午後、家に呼びな」 血のように真っ赤な舌がねったりと、真っ赤に歪んだ唇を舐めた。 生き餌の味を知ったママはもう、昔のママじゃなかった。 14 次の日、私が誘う前に、遠山は自分から私の席の前にやってきた。 「誰も気づいてないと思ってるだろ」 「何が?」 「男子をみんな金魚に食わせたろ」 私はギクッとして、 「何言ってるの? あなた正気?」 「正気かどうか、自分の胸に聞くんだな」 昔の遠山君じゃなかった。 いなくなった男たちの男エキスを全部集めたほどに男らしくなっていた。 「オレが変わったと思ってるだろ」 その通りだったけど、返事できない。 「変わったのはオレじゃない、お前だ」 「私?」 「そうだ。それに、言っておくが、オレは食われやしない。君の金魚なんかにはね」 そうかも知れないと思ったけど、 「じゃ、試してごらんになる?」 私は負け惜しみで言った。 15 土曜日、遠山はうちの家にやってきた。そしてリビングでママと対面するなり、制服の内ポケットから鏡を出して私に突きつけた。遠山の手の中の折りたたみの鏡は見る間にパタパタと広がり、半畳ほどの姿見に化けた。 「これが今の君だ」 ママ! そう、ママが、若くてきれいなママがそこにいた。 いや、ママじゃない! これは私だ。 何かが変わって見違えるようになった私だ! 私はママと目を見合わせた。 そしてギョッとした。 この人はママじゃない! 歳をとった私だ。 いや違う、ママだ! 何かが変わってしまったママだ! 「これが本当のあんただよ、ほれ」 姿見を遠山に突きつけられたママは、ヒイィーと叫びながら鏡の中に吸い込まれた。遠山はさっきと反対の手順で鏡をパタパタと畳み、手帳ぐらいの大きさにすると、それを金魚鉢に投げ入れた。 ごぼごぼごぼ、ごぼごぼ、ごぼ ご…… ママの溺れる音が静かに消えた。 「君のママは死んだ。君の呪いも解けた。君は君だ。じゃあ食わせてもらおうか」 「ようございます。でも、私にもあなたを……」 「食うか」 「ええ、いただきたいの」 私たちは身を身でむさぼる至福の時を過ごしつつ、金魚鉢にママの死体がポッカリと浮かぶのを眺めながら、互いに互いを食い尽くして消えたのでございます。 エピローグ 高校は女子校でした。 私は小さい頃から習っていたピアノのおかげでブラスバンドの指揮者でした。 クラスにいた男たちのことも、もうすっかり忘れてしまったようです。 ママ、私のママ、安らかに眠ってね。 お父さんは庭に小さな墓標をたててくれながら、 「アジやサンマだったらこんなことしねえよな」 なんていい、お母さんに 「お父さん、なんてこと言うの!」 ってたしなめられてます。 墓標には「ママ」って、金魚の名前が書かれてありました、とさ。(終わり) |