ショートストーリー「ピンチランナー」

 

1 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/10(水) 04:27
順次アップしていきます


2 名前: ナナシ☆マン 投稿日: 2000/05/10(水) 04:32
>1
ガンバレ!


3 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/10(水) 04:49
それより、真里とマイケルみんな忘れてないか?


4 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/10(水) 05:29
第一走者:後藤真希(朝比奈学園陸上部一年生)

 号砲。
 同時に真希はスタートする。
 他の選手たちがすぐに真希より前に出た。
 それでも真希は焦らない。
 あくまで自分のペースで走り続ける。


5 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/10(水) 05:30
 真希が陸上部に入ったのは、「楽」だと聞いたからだった。
 朝比奈高校ではすべての生徒がクラブ活動をせねばならない。
 しかし真希には入るべき部活動が見つからなかった。運動神経はないし、音楽や絵画に造詣があるわけでもない。
 そこで選んだのが、ほとんど休部状態にある陸上部である。
 部員は真希を含めたったの四人。
 各々別々に練習するだけで、真希が休んでも文句を言われることはなかった。入部した直後は、早速幽霊部員となり、町で遊び回っていたものだ。
 しかし……いつのまにか真希は練習に参加するようになっていた。
 それはひとつ上の先輩の影響だった。ショートカットの似合うかわいい先輩、彼女がとても親切にしてくれたのである。
 ろくな運動もしたこともない真希に、基本的なフォームから教えてくれた。
 最初は500メートルも走れなかった。でも次第にその距離は伸びていく。同時に真希は徐々に陸上という競技のおもしろさを知っていった。遊び回っているより走っているほうがよっぽど楽しい。
 この上達するという感覚を真希は味わったことがなかった。
 何もできない何の取り柄もない女の子、自分のことをそう思っていた。
 でも……私にだって何かができるんだ。


6 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/10(水) 05:31
 真希はただ走り続ける。
 順位はどれくらいだろう?
 さきほどから脇腹が痛い。
 息も苦しい。
 距離は6.5キロメートル。練習ではなんとか走りきったことのある距離である。
 タイムに関しては期待できるべくもない。他の運動部の子にさえ勝てないだろう。事実、ほとんど最後尾となっていた。
 それでも真希は走り続ける。
 あの人へ。
 たすきをつなぐために。


7 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/11(木) 15:01
いい感じ。続きをまってます。


8 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/12(金) 03:55
続き楽しみにまっております。


9 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/13(土) 03:40

第二走者:市井紗耶香(朝比奈学園陸上部二年生)

 髪を切って以来、紗耶香は「かわいくなった」と言われるようになった。そして「積極的になった」とも。
 何が変わったんだろう。
 外見? それとも他に何かが変わったの?
 自分ではわからない。
 それでも昔みたいに物怖じすることはなくなったようだ。特に後輩ができてからは、それを感じる。
 でも……と紗耶香は思うのだった。前はそんなにかわいくなかったのかな、積極的でもなかったのかな?
 元来、紗耶香は陸上部に所属しているものの、体育会系の人間ではない。どちらかといえば、ひとりで読書をするのが好きなタイプである。
 陸上もその延長。個人競技ゆえ、練習も大会もひとりきり。失敗も成功もすべて自分にかかってくる。集団競技のように、自分のミスで周囲に迷惑をかけたりはしない。紗耶香は誰に迷惑をかけるのも、かけられるのもきらいだった。
 だから駅伝に参加すると聞いてもあまり歓迎できなかった。
 駅伝は、陸上には珍しい集団競技である。自分のタイムが全体に響く。
 それゆえ紗耶香はいつも以上に練習量を増やした。中距離は得意とするところだが、もっともっと時計を伸ばさなければならない。誰にも迷惑をかけてはならない……。
 そして倒れた。


10 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/13(土) 03:41
「……紗耶香さん!?」
 真希の悲鳴も耳に届かない。
 気がつくと紗耶香は保健室のベッドの上にいた。
「どう、大丈夫?」
 隣にはマネージャーの保田圭がいた。心配そうに自分の顔をのぞきこんでいる。
「無茶だよ、こんな熱があるのに練習するなんて……」
「うん……、でももっとやらないと……」
「ダメ!」
 起きあがろうとする紗耶香を圭が押さえる。
「紗耶香はがんばりすぎ」
 叱るような圭の口調。
「真希の世話に、駅伝の練習。紗耶香はがんばりすぎだよ。少しは休みなさい。休息も練習のうちです」
「でも……、あたしあんまり速くないし、がんばらないと……」
「がんばらなくていいの」
 ぴしゃりと圭は言う。
「なんのために、みんながいると思ってるの? 真希にまりっぺに香織になっち。紗耶香ががんばれなかったら、みんなががんばる。もし途中で苦しいようだったら、私が棄権させるからね。わかった?」


11 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/13(土) 03:43
 だから紗耶香は今もがんばっていない。
 あくまでマイペース。
 いつも通り黙々と走り続ける。
 それが功を奏したのか、ベストに近いタイムが出ているようだった。
 いつも通りの自分。それでいいじゃないか。無理に自らを変えていく必要はない。それでみんなの役に立てる。みんなはあたしを受け入れてくれる。
 それとも自分はどこか変わったのだろうか?
 答えの出ないまま紗耶香は走りつづけていた。


12 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/13(土) 03:45

第三走者:矢口真里(朝比奈学園陸上部二年生)

 陸上部のエース矢口真里。それにはもう飽きた。
 好きで走っていたわけである。中長距離は真里のように背が小さくても不利はない。自分より、大きな選手を抜きさっていく、それがたまらなく快感だった。
 でも……、いつのまにか走ることがつまらなくなっていた。
 走ることになんの意味があるんだろう?
 まわりの子たちは毎日楽しそうに遊んでいる。クラスでは、彼氏ができたとかできないとか、新しい服を買ったとか買わないとか、そんな話が飛びまわっていた。あたしも遊びたいな……、そう思うことも多くなった。特に駅伝の練習をするようになってからは、その傾向が強くなっていく。
 なんであたしは毎日走ってばかりいるんだろう? それになんの意味があるんだろう?
 その日、真里は練習に出なかった。
 クラスの仲間とともに渋谷へと向かう。
 ドラッグストアにカラオケ、ゲームセンター、マック。おきまりのコース。それは真里にとってたまらなく新鮮だった。くだらない冗談で笑いあい、ナンパを軽くあしらう。たったそれだけのことが楽しくてたまらない。
「ねえ……、真里、陸上部いかなくていいの?」
 友だちのひとりがそう聞いてくる。
「え……、まあね」
「誘ったけど、本当に来るとは思わなかったよ。いつも練習ばっかりだから」
「――それより、……買い物行こ、109!」
「おう!」


13 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/13(土) 03:46
 真里を含めた数人は、渋谷109に向かった。
「――あった!」
 真里は、テナントの店頭に飾られていた厚底ブーツを見ると、早速飛びついた。背の低い真里には垂涎の品である。
「真里、ブーツ持ってないの?」
「えへへ」
 汚いランニングシューズを脱ぎ捨て、ブーツを試着してみる。
 立ち上がると背が一挙に20センチ以上も高くなった。見たこともない光景がそこには広がっていた。
「でかくなったね!」
 などと口々にはやしたてられる。
 調子にのって歩きだそう真里。そのときだった。足もとがぐらりと揺れ、真里は転びそうになった。
「ちょっ……真里! 大丈夫!?」
 なんとか持ちこたえた真里。床にぺたんと座る。
 ……なんなんだこの靴は? こんなんじゃ……満足に走れないじゃないか。
 真里はブーツを脱ぐと、棚へと戻した。
「……買わないの?」
「うん、やめておくよ」
 そういってランニングシューズをはく。履きつぶしてボロボロになったシューズ。でも、高機能。クッションはいいし、どんなに汗をかいても蒸れることはない。――あたしにはこっちのほうが似合っている。


14 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/13(土) 03:48
 たすきを受けついですぐに、真里はひとりの走者を抜いた。
 身体が軽い。今日は絶好調のようだ。
 前方に次の獲物が姿をあらわす。ピッチをあげ、一瞬にしてそのランナーをかわした。
 これで二人。
 順位はまだまだ真ん中より下である。
 ここは私ががんばるしかない。
 少しでも順位を上げてみせようじゃないか。
 だって私、矢口真里が陸上部のエースなんだから。


15 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/14(日) 01:19
ge


16 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/17(水) 02:51

第四走者:飯田圭織(朝比奈学園陸上部三年生)

「飯田さん、ロボットみたい」
 と言われたことがある。
「そう?」
 答えた笑顔がぎこちなかったらしい。
「やっぱりロボットみたい!」
 みんなに笑われた。

 どうやら自分は人とは違うらしい、そう気づいたのは小学校も高学年のことだった。
 普通に話してるだけなのにみんな笑うし、珍しそうに見る人もいる。
 ロボットみたい? 確かに単純作業は好きだ。ビニールの「ぷちぷち」があったら、いつまでもつぶし続けてみせよう。
 そして究極の単純作業が陸上である。ただ足を交互に前に出すだけ。いろいろコツはあるものの、けっきょくはそれだけなのだ。
 圭織は毎日毎日走っていた。一年生のときも、二年生になっても、三年生になっても。タイムや競技での順位は気にしない。ただ走るのが好きだった。
 ある日、走っている圭織に、マネージャーの圭が声をかけてきた。
「走ってる圭織が一番素敵だね」
「そう?」
「うん、一番かっこいい。輝いてるよ」
 圭織はそれからいっそう走るのが好きになった。


17 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/17(水) 02:53
 真里からたすきを受け取り、走り始める。
 順位は真ん中よりちょっと上。目標よりは下というところだろう。
 無理をしたって仕方がない。
 ――きっと彼女ならなんとかしてくれる。
 自分はただ次につなぐことだけを考えよう。
 全部でたったの5キロかそこらだ。
 好きなだけ走れないのはしょうがないな。



18 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/18(木) 02:37
スレは飛んでしまったけどちゃんと読んでます。
頑張ってください。


19 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/18(木) 03:46
続き希望!
あげ。


20 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/18(木) 05:59
age


21 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/19(金) 02:17
次で最終回なのかな?
続き期待してます。


22 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/20(土) 06:03
テスト


23 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/20(土) 06:06

陸上部顧問:中澤裕子(朝比奈学園教諭)

 あかん、私この仕事向いてないわ。
 いつもの考えが頭をもたげる。
「裕ちゃん、どうしたん?」
「……もう教師やめるわ」
「――その言葉、今年に入って17回聞いたわ。50回で海外旅行プレゼントしよ」
「ほんま!? 教師やめる教師やめる教師やめる教師やめる教師やめる」
「なんでやねん!」
 居酒屋の看板娘と話しても気分は晴れない。
 頭痛の種は、担当しているクラスではない。見合い話でもないし、安い給料でもない。顧問をしている陸上部であった。
「なぁ、安倍さーん、ちょっと待って」
「……なんですか?」
「あんた室蘭の高校で陸上部やったんやろ? うちの陸上部にはいらへん?」
「入りません」
「……そんな即答されても困るわ」
「陸上はやめたんです、失礼します」
 安倍なつみは軽く頭を下げた。


24 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/20(土) 06:08
 元々、裕子には陸上の経験などなかった。中学・高校と所属していたのは、軽音楽部。陸上部の顧問になる下地などまったくなかった。
「陸上部をつくりたいので顧問になっていただけませんか?」
 そう裕子に懇願したのは、はじめて受け持ったクラスの生徒だった。
 彼女は心臓に持病を抱えていて、まったくスポーツをすることができなかった。そのかわり「走る」ということに人一倍の情熱をもっていて、ゼロから陸上部を立ち上げようとしていた。その熱意に負け、裕子は顧問を引き受けたのである。
 それから二年の月日がたった。
 ある日、部内で「駅伝に出よう」と話が持ち上がった。しかし駅伝は全部で5区間。現在の部員は、マネージャーをのぞいて四人である。メンバーがひとり足りない。
 そこに都合良くあらわれたのが、転入生の安倍なつみだった。彼女は陸上の名門、市立室蘭大学付属高校陸上部に籍を置いていた。裕子は、なんとしても彼女を駅伝のメンバーに引き入れようとした。しかし……彼女はどうしても首を縦にふらないのだった。
「なあ頼むわ。うちの部に入るだけでいいから。練習もせんでええし、大会にもでなくてええわ」
 懇願する裕子。
「……そんなの意味ないじゃないですか」
「あー、知らんの? うちは部活動全員参加やで」
「そうなんですか……、じゃあ」
 かかった!
 裕子の瞳が明るく光る。
「いいですか、陸上部に入るだけですからね。練習にはでませんよ」
「ええって、練習せんでも。駅伝だけ出るやろ?」
「でません!」
 結局、なつみは入部届けに名前を書き、提出した。
 これで安倍なつみを陸上部へ引っ張り込むのにだけは成功した。あとは圭坊に任せよう。彼女の情熱をもってすればなんとかなるかもしれない……。


25 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/20(土) 06:09
 そして今日。
 ここにアンカーとしてアップを続ける安倍なつみの姿があった。
 ああ、ここまでこぎつげけたんやな……
 いつのまにか視界が涙でにじんでくる。
 三年間、マネージャーの熱意に押されここまでやってきた。正直、面倒くさいこともあった。苦労したこともあった。酒を飲んですべてを忘れたいこともあった。練習ばかりで彼氏もつくれなかった。様々な場面が思い起こされる。
 それもすべては今日の日のため。
 向こうから飯田圭織の姿が見えてきた。
 安倍なつみが、ラインにたつ。


26 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/20(土) 06:11
sage効かない……


27 名前: 名無しさん 投稿日: 2000/05/20(土) 07:00
なにこのスレ あほの集まり?

1人で欠いている?