No56

  side★Lee

 さて、再びリー。

 リーはじっと身をかたくして息をひそめていた。
 気のせいではなかった。人の声が近づいてくる。2.3人の兵士のようだ。
 もしもこの部屋に入ってきたらどうする? ドアにもたれかかったまま、一瞬背中が
凍りつく。
 ちくしょう、オレはマヌケ野郎なんかじゃないぞ。
――――すばやく身を隠そうとした時、兵士の声が耳に飛び込んできた。
「上総が―――」
 すぐさま耳をドアに押し当て、全身で聞いていた。
 しっかりした口調は、およそ下っ端ではない。
 ――――今の話は本当だろうか?
 今度は怖気づいたためではなく、しばらく身動きができないでいた。
 どのくらいたったのだろうか。それほど長い時間ではないだろう。ほんの2.3分。
あるいは10分か―――。リーは信じられない音を聞いた。足音!
 ひそめた感じではあるが、間違いはなかった。
 あれは聞きなれたケイの!!
 飛び出したい衝動を押さえつけ、体を薄暗いガラクタの影へとうずめる。
 ケイがここにいるはずがない。
 足音が近づくにしたがい、部屋を一つ一つチェックしてる気配に気がついた。
 今、リーには小型の護身用銃しかない。姿を見られれば―――おそらく終わりだ。
 足音が近づいてくる。
 リーは銃に手をかけ、気配を押し殺す。
 ドアが開く。そして―――
「ケイ」
 リーは静かにささやいた。
 ケイがしなやかに滑り込んできた。
 髪を黒く染めている。それに軍服。
「みんな無事か?―――オイ、他のやつらはどうした?」
 リーの話はこうだった。
 はじめの計画では、まず真幸がおとりになり、細工して上総たちの居場所を
突き止め、こちらに知らせる。リーとポチがドアを爆破。そこまではよかった。
 上総たちと合流して、4人でCブロック経由で真幸を救出…のはずだった。
 しかし、読まれていたのだ。2人が逃げ出してくると、Cブロック側のゲートから
次々とシャットアウトされていったのである。2人は反対方向へと駆け出し、Cブロ
ックに待機していたリーはそのまま締め出された形になってしまったのだ。
 Eブロックよりにいたポチに、早く追えというのが精一杯だった。自分のミスだと
リーはうなだれる。
「Cにやたら兵士が多くてさ、身動きが取れなくなっちまった。1人眠ってもらって、
それでもここまでだぜ?」
「卑屈になるなよ。大丈夫、まだ真幸以外は捕まっていない。俺が来たんだから、さ」
 2人の顔にやっと微笑が戻った。
 リーが思い出したように口を開いた。
「ケイ―――これ、正規軍の軍服?」
「ああ、これな。俺の親父のだったんだ。落ちぶれかけたイギリス貴族の出でね、金は
なくても軍人としての実力はある人だったよ。―――殺されたんだ。仲間にね。濡れ衣で
犯罪者にされたんだ。―――それが今のアマカーテア軍副総帥のロムステルって男だ」


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