「ルリタニア・テーマ」  7/18

 ルリタニア・テーマとは、田中芳樹いわく「近代または現代のヨーロッパ大陸の一角に、架空の小国を設定し、そこを舞台に大冒険をくりひろげるお話」のことである。これは『アップフェルラント物語』(徳間文庫)より引用した。

 ルリタニアとは、ご存じの方も多いかもしれないが、アンソニー・ホープの『ゼンダ城の虜』(創元推理文庫)に出てくる架空の王国の名前である。
 主人公は青年紳士ルドルフ・ラッセンディル。彼がルリタニアの王とうりふたつだったことから、ルリタニアの王位をめぐる陰謀にまきこまれてしまうのだ。姫君との恋、ルドルフをライバルと狙う青年ルパート・ヘンツォ伯爵との闘い……。ちなみにヘンツォ伯爵はとんでもない悪党だが、若くて強いのはもちろんのこと、キザでかっこいいのである。主人公のルドルフより人気があったと言うが、それは当然だ。完全無欠なヒーローなど、だれがほしいと思うだろう。紳士などこの世に絶えて久しい。悪党もまたしかり。

 田中芳樹が書いた『アップフェルラント物語』は、魅力的なお話だ。主人公はスリの少年ヴェルで、ひょんなことから悪漢に捕まっていた少女フリーダを見つけ、好きになる。彼女を助けるため、守るために奔走し、仲間たちと共に悪漢どもをこてんぱんにするのだ。悪漢どもが右往左往する様は、見ていて楽しい。『天空の城ラピュタ』が好きな人は、きっと大好きになるだろう。
 田中芳樹は、架空の国だからと言って書く手をゆるめない。まるで実際にあった国のように、歴史を紡いでいくのである。それはアンソニー・ホープも同じだったかもしれない(実際、一年前に読んだので細かい所は覚えていないが)。
 で、何を言いたいかと言うと。冒険活劇やかっこいい悪党、架空の王国などに惹かれる人は、ぜひ上のふたつを読めと。こういうわけなのでありました。

 私はルリタニア・テーマのお話が大好きである。『ルパン三世 カリオストロの城』だってもちろん好きだ。でも私がもっと好きなのは、宮廷陰謀ものとでもジャンルわけすればいいのか、とにかくそういうジャンルのお話なのだ。たとえば『三銃士』や『仮面の男』は、まさしく宮廷が舞台である。陰謀もある。わくわくするのである。
 宮廷とか陰謀とか、私にまったく縁のないものではあるが、だからこそ惹かれるのだと思う。ファンタジーの世界に行ってみたいと思うのと同じことだ。
 宮廷が舞台のお話だったら、たくさんあるだろう。ファンタジーになってしまうが『デルフィニア戦記』や『後宮小説』はよく書けている例だし、ルイ14世の時代が舞台の『アンジェリク』は、原作もマンガもおもしろい。藤本ひとみも、確か宮廷ものをいくつか書いていたような気がした。フランスやハプスブルグ家のお話などは、今やごろごろ転がっている。
 古今東西に関わらず、宮廷ものというジャンルは、人々の庶民心に訴えかけるものがあったのかもしれない。王とか女王とかいう神聖なるものへの憧れが残っているのは、私たちが受けてきたすりこみ教育によって、つちかわれてきたからなのだ(童話で王女さまなんかが幸せになるでしょ? そうすると、やっぱ王女さまはいいもんなんだって、すりこみが働くんじゃないかと思うのだ)。

 他に適切な例が思いつかないので、ここらへんで終わりにする。ともかく、人々がルリタニア・テーマを好むのは、必然的なものだと思うのだ。ちょっと話題がずれてしまって恐縮だが、私としては宮廷ものというジャンルを押したい。
 ともあれ、私もルリタニア・テーマが大好きだから、いつかは小説に書いてやろうと思っている。つまんないヒーローは出したくないが、かっこいい悪党と、かっこいい美人と、冒険活劇と。
 ……さあて、その前に世界史を勉強しなきゃね。



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