○○用の動物

2003/4/6




 新明解のネタで、「○○用の動物」という分野があります。赤瀬川原平の『新解さんの謎』(文藝春秋)では、「トラ」と「サイ」が紹介されています。



とら【虎】
 アジア特産の猛獣。背中から腹にかけて黄色の地に黒いしまが前後方向に対して直角に有る。口が大きく、鋭い牙(キバ)と爪(ツメ)を持ち、眼光が鋭い。皮は敷皮用。〔ネコ科〕〔押えにくいというところから、俗に、酔っぱらいの意にも用いられる〕 (第4版)




 天下の猛獣として名高く、「竜」「虎」と並び称されるトラも、新明解に言わせれば、ただの「敷皮用」です。誇り高きトラのプライドはずたずたです。

 なお、この部分、第5版では、「皮は敷物などに用いられた」と過去形になりました。いまどき虎皮なんて敷いている人は、成金の人にもいないでしょう。あと、「敷物など」とありますが、この「など」って何でしょうか。「鬼のパンツ用」でしょうか。




さい【犀】
 熱帯地方にすむ哺乳動物。鼻の頭に角がある。頭が長く首は短く、四足はゾウに似る。全身の毛が少なく皮は厚い。角は漢方薬用。〔サイ科〕(第4版)




 『新解さんの謎』では、「犀の角って、漢方薬用に生えてるのね」とツッコミが入っていました。

 現在サイは個体数が激減しており、絶滅のおそれがある動物としてワシントン条約で国際取引が禁止されています。個体数減少の最大の理由は、角を目的とした密猟によるものです。「角は漢方薬用」などとのんきなことは言ってられません。




 さてここで、去年の6月29日の(古くてすみません。)kenkenさんの書き込みを紹介します。




 kenken (02/06/29)

 コメント:
 「虎の皮は敷皮用、犀の角は漢方薬用。」これは新明解ファンの皆様ならご存知でしょう。2度ある用例は3度ある(はず)と信じ、他の似たような用例を探しました。それでは皆さんに問題です。たぬきの毛は何用でしょう?




 なんでしょうか? やっぱり敷物かなんかでしょうか?


 新明解を引いてみましょう。



たぬき【狸】
(一) 中形の哺乳動物。目のまわりにふちが有り尾が太い。昔、人を化かすと考えられた。毛は毛筆用。〔イヌ科〕 (第5版)




 なるほど、毛筆用ですか・・・!




 私も負けてはいられません。いろいろ人間の役に立つ動物を探してみましょう。



らば【騾馬】
 雌のウマと雄のロバとの間に出来た雑種。馬より小形であるが、耐久力が強く粗食に耐える。労役用。 (第5版)




 「労役用」って、ラバの人生、つらすぎます・・・。




さめ【鮫】
 海にすむ軟骨魚。サメ・エイ目のうち、エイ以外のものの総称。口は横に裂け、大形のものには人が襲われることもある。ざらざらしている皮は靴・かばんの革の代用。肉は かまぼこの材料用。〔近畿以西ではフカ、山陰ではワニと言う〕 (第5版)




 「靴・かばんの革の代用」になる皮は、ワサビをすりおろすのにも使います。

 「かまぼこの材料用」の肉は、広島県北部では刺身にして生で食べる習慣があり、回転寿しのネタにまでなっています。




チータ〔cheetah=もとヒンディー語〕
 アジア南部やアフリカ産の、ヒョウの一種。全身は薄茶色で黒い斑点(ハンテン)が有る。短距離では哺乳動物で最も速い。インドでは、ならしてカモシカ狩りに使う。チーター。 〔ネコ科〕 (第5版)




 「インドでは、ならしてカモシカ狩りに使う」って、そんな話、聞いたこと無いです。




トナカイ〔アイヌ tonakkai〕
 寒い地方にすむ、大形のシカ。茶色を帯びた灰色で、雌雄共に枝分かれした角を持つ。家畜としてそりを引くほか、肉・乳は北方の寒帯に住む人びとにとって欠くべからざる食料となり、また、皮で衣服・テントなどを作る。 (第5版)




 トナカイなんて、サンタクロースのそりを引いているだけかと思ったら、衣食住に「欠くべからざる」動物だったんですね。




おっとせい【膃肭臍】
アイヌ onnep+臍(ヘソ)。雄の陰部を臍と共に採った精力剤の名〕 大形の海獣で北太平洋などにすむ。背中は黒く、腹は灰色で、四足は ひれの形。毛皮・肉が利用される。〔アシカ科〕 (第5版)




 オットセイはもともとアイヌ語で「オンネプ」と呼ばれていましたが、これが漢字で「膃肭」と音写されました。オットセイは、1頭のオスが数十頭のメスと次々に合体する精力絶倫の動物とされ、オスの陰部は臍(ヘソ)とともに採取され精力剤として珍重されました。この精力剤の名が「膃肭臍」(オントツセイ)です。したがってオットセイとはもともと動物の名前ではなく、薬の名前です。

 精力剤がそのまま獣名になってしまうほど、オットセイは「精力増強用」として「欠くべからざる」動物だったのでしょう。




 

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