老人語

新明解国語辞典用語の基礎知識@

2004/3/27



 『新明解国語辞典』によく出てくる用語の一つに「老人語」というものがあります。



 例えば、「ご予算に応じて、いかようにでも調整いたします。」の「いかよう」。



いかよう
「どのよう」の意の老人語。(第3版〜第5版)
注:初版・第2版は「『どんなふう』の意の老人語。どのよう。」となっている。





 あるいは、「この件については、今もって謎とされている。」の「今もって」。



いまもって【今持って】
「いまだに」の意の老人語。(第3版〜第5版)
注:初版・第2版は「『いまだに』の意の、古語的表現。」となっている。






 ふだん自分がふつうに使っていることばが「老人語」と書かれているの知り、「俺は老人かよ!」と怒り狂う人がいるそうです。


 しかし、『新明解国語辞典』のいう「老人語」は、けっして「お年寄りが使うことば」という意味ではありません。



 新明解国語辞典で「老人語」と引くと、次のように書いてあります。



【老人語】
 すでに青少年の常用語彙(ゴイ)の中には無いが、中年・高年の人ならば日常普通のものとして用いており、まだ死語・古語の扱いは出来ない語。例、日に増し〔=日増しに〕・平(ヒラ)に・ゆきがた・よしなに・余人(ヨニン)など。(第3版〜第5版)
注:初版・第2版は「まだ文章語・古語の扱いは出来ない語。」となっている。



 すなわち老人語とは、昔は一般に使われていたが、最近はあまりそういう言い方をしなくなったため、結果として若い人が使っていないことばという意味なのです。




 武藤康史『明解物語』〔三省堂、2001年〕の109ページに、山田主幹のライバル見坊豪紀が「老人語」について解説した文章が載っていますので、紹介したいと思います。



 "老人語"とは、『新明解国語辞典』が、ことばの使用相のレッテルとして、女性語(例、おせん)、学生語(例、ゲル)などと並んで設けたものの一つ。"老人語"というレッテルはこの辞書の独創であるが、このレッテルは、発売と同じに各方面で話題となった。発売(昭和47年1月24日)後まもなく「朝日ジャーナル」(昭和47年4月14日号、「文化ジャーナル」欄)は、"老人語"のレッテルにかみつき、お茶の水女子大学教授・外山滋比古氏も「言語生活」(昭和47年7月号)で論及した。

 最近では英文学者・朱牟田夏雄氏がことし三月の中央大学退官講義の中で自分の常用語「言下(ごんか)」「黙然(もくねん)」などが『新明解国語辞典』では"老人語"とレッテルを貼ってある、と二度活字にし(「不死鳥」〔年4回〕〔南雲堂発行〕昭和52年3月号2−4ページ、「学士会会報」〔年4回〕昭和52年4月号36−40ページ)、一部マスコミの話題になった。(「言語生活」昭和52年7月号71ページ、「ことばのくずかご」欄参照) 自分がまったくふつうの言葉だと思っていることばが意外にも"老人語"だと知ったときの驚きを表明している。

 『新明解国語辞典』をものさしに使えば、自分のことばの"老人度"が測定できる。現代語辞書の持つ意外な効用は目下のところ『新明解国語辞典』だけのものである。 (見坊豪紀『辞書と日本語』)




 老人語は、もともと新明解国語辞典が使い始めた用語らしいですが、最近は国が発行しているような冊子でも使われているようです。




 いま、若い人が使っている「超○○」とか「マジ○○」という表現も、いつか「老人語」と呼ばれる日がくるかもしれませんね。


 (「ナウい」や「チョベリグ」のように、老人語になる前に死語になってしまう言葉もありますが…。)







 

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