
スタートレックにほえろ!
2004/2/7
「スタートレック」は1966年〜1969年にアメリカで放送されたSFテレビドラマで、日本では「宇宙大作戦」又は「宇宙パトロール」の題名で1969年から放映がはじまりました。
「スタートレック」は23世紀を舞台に、惑星連邦宇宙船U.S.S.エンタープライズの5年間に渡る宇宙探査の冒険を描いた作品で、個性豊かな登場人物とSF的センスあふれるストーリーは多くのファンを生み出しました。
その後も「スタートレック」は、アニメーション化されたり、映画化されたり、登場人物を一新した新シリーズが作られたりと、どんどん発展をとげ、現在も新シリーズの製作・放送が続いています。
万省堂主人が「スタートレック」のファンであることは有名ですが(どこで?)、今回は「スタートレック」の主な登場人物に引っかけて新明解の面白語釈・面白用例を紹介してみたいと思います。
内容は「スタートレック」とあまり関係無いので、「スタートレック」を知らない方もご覧いただけます。

U.S.S.エンタープライズNCC‐1701‐A
(フルタの食玩「スタートレックフィギュア」より)
ジェイムズ・T・カーク
U.S.S.エンタープライズ船長。正義感あふれる熱血船長。
「キャプテン・カーク」は正式には「カーク艦長」と訳すのが正しいそうですが、テレビでは「船長」と訳されました。
ということで、まずは「船長」を引いてみましょう。(以下、面倒なので第5版のみ使用します。)
| せんちょう【船長】 @その船を船主から預かり、航海に関する一切の指揮をする人。(第5版) |
「その船を船主から預かり」とあります。
カーク船長が誰からその船を預かっているかはともかく、一般に「船長」という場合、自分の持船の場合もあるのではないでしょうか?
なお、新明解で「船」を引くと、ちゃんと「宇宙船」と書いてあります。
| ふね【船】 @(A)〔木や鉄などで作り〕人や荷物を乗せて水上を運ぶもの。(B)宇宙船。A(A)△水(液体)を入れる箱形の入れ物。水槽。(B)貝のむきみなどを入れる、平底の(小)箱。〔算(カゾ)える時にも使う〕B婦人・妻を指す「仕事師」仲間の通語。(第5版) |
「船」について、あえて突っ込みをいれると、A(B)に「貝のむきみなど」とありますが、「刺身など」のほうが一般的ではないでしょうか。
スポック
副長兼科学主任。ヴァルカン人と地球人のハーフ。極めて論理を重んじる性格。
スタートレックの面白さは、そのSF的アイデアもさることながら、スポックのキャラクターに負うところが大きいと思います。
では、スポックに敬意を表して、「論理」を引いてみましょう。
| ろんり【論理】 @与えられた条件から正しい結論が得られるための考え方の筋道。「…という―〔=論法〕がまかり通る/―性を欠く/―の飛躍/永田町の―」A現象を合理的・統一的に解釈する上に認められる因果関係。「歴史的発達の―」(第5版) |
用例に「永田町の論理」とありますが、さすがのミスター・スポックも「永田町の論理」は理解できないことでしょう。
ドクター・マッコイ
医療主任(船医)。皮肉屋で口が悪い。いつもスポックと口論になる。
「なんて」の用例に、
| なんて(副助) 「彼が医者だなんて!」(第5版) |
とありますが、ドクター・マッコイは、性格はともかく、医者としての腕は抜群です。
さて、新明解で「医者」を引くと、
| いしゃ【医者】 病人を治し、病気を予見し、病気を無くすことを職業とする人。(第5版) |
とあります。「病人を治し」は当たり前として、「病気を予見し」って何でしょうか?最近は予防医学の大切さが重視されているので、「病気を予防し」というのならわかりますが、予見しただけでは意味がありません。また、「病気を無くすことを職業とする」というのもいかがでしょう。病気が無くなってしまったら、医者は飯の食い上げ(死語?)です。
モンゴメリー・スコット(日本語吹き替え版ではチャーリー)
機関主任。技術屋としては極めて有能だが、スコットランド訛りが激しい。
| なまる【訛る】 〔その△地域一帯(時代)の人の口にする語形が〕発音の便宜上、伝統的な言い方とは違って、少しくずれた言い方△になる(である)。また、そういう言い方をする。例、質屋を「ヒチヤ」、新宿を「シンジク」、晦日(ツゴモリ)を「ツモゴリ」、柊(ヒイラギ)を「ヒラギ」と言うなど。(第5版) |
「ひちや」と「しんじく」はともかく、「つもごり」と「ひらぎ」は単なる言い間違いじゃないのかという気がしますが、方言のスペシャリストである柴田武先生が編集代表をつとめていますし、ほかにいい訛りの例がなかったのかなどという批判は遠慮させていただきます。
スールー(日本語吹き替え版ではミスター・カトー)
主任ナビゲーター(操舵士)。吹き替え版で「加藤」と呼ばれているので日本人だと思われがちだが、フィリピン人と日本人のハーフという設定。
スタートレックは未来を描いた作品ですが、未来においては人種差別は無くなっているという設定のもと、黄色人種と黒人が一人づつクルーに含まれています。
まずは黄色人種」。
| 【黄色人種】 〔白色人種・黒色人種と違って〕皮膚が黄色の人種。頭髪は黒い。日本人はこれに属する。(第5版) |
「皮膚が黄色の人種」とありますが、私はいまだかつて皮膚が黄色い人間は見たことがありません。
(注:新明解で「黄色」を引くと、「レモンの皮や菜の花のような色」と書かれています。そんな人間がいたら怖いです。)
ウフーラ(日本語吹き替え版ではウラ)
通信士官。アフリカ出身。
かつてキング牧師は「ウフーラは黒人の平等の象徴である」と言ったそうですが、当時のアメリカのテレビ番組において、黒人が(しかも女性が)白人男性と同列の扱いで活躍するというのは非常に画期的だったようです。
| 【黒色人種】 〔白色人種・黄色人種に対して〕皮膚が黒い人種。縮れた黒い髪、厚い唇などが特徴。(第5版) |
私の知り合いで、色が黒くて髪が天然パーマで唇の厚い人がいますが、今わかりました。
彼は黒色人種だったのですね。
チェコフ
ナビゲーター(航海士)。ロシア出身。
「なぜクルーにロシア人がいないのか」というプラウダの記事を受けて途中からレギュラーとして登場したチェコフですが、今一つ目立たない存在です。
| すけ【助】 [二](造語)卑小な存在。奴(ヤツ)。「雲―・露(ロ)―〔=明治時代語で、ロシア人の蔑(ベツ)称〕・でこ―〔=でこ坊〕・飲み―・ちび―〔=背の低い奴〕・ねぼ―」(第5版) |
用例に「露助(ロスケ)」が載っていますが、辞書で「ロスケ」を調べようとした人がこの項目にたどり着くことは不可能だと思います。
まず、「ロスケ」を調べるのに「すけ」を引く人はいません。「ロスケ」か「ロ」で引いて、載っていなければあきらめます。また、「露(ロ)―」という表記を見て、「露助(ロスケ)」だとわかる人も少ないでしょう。カタカナの「ロ(ろ)」が漢字の「口(くち)」と似ているために、非常にわかりにくいからです。当然、電子辞書で検索してもこの表記では出てきません。(私の場合も、以前「ぶすけ」を調べていて偶然見つけたものです。)
では、最後に「人種」ということばを紹介します。
| じんしゅ【人種】 地球上の人類を、皮膚・髪の色や顔の形の共通性などで大きく分けた種別。優劣に関係は無い。〔俗に、生活環境・態度・様式や趣味などによる、人の分類の意にも用いられる。例、「ゴルフをする―/政治家という―/米食―」〕(第5版) |
「優劣に関係は無い」とわざわざ書かれています。読者に人権教育を行なう国語辞典は新明解くらいのものでしょう。