
D-1
最強国語辞典決定戦
第2回
2002/9/21
新明解国語辞典第5版(三省堂) VS 三省堂国語辞典第5版(三省堂)
| 【三省堂国語辞典プロフィール】 1960年初版、2001年第5版。希代のワードハンター見坊豪紀の膨大な用例カードにもとづく手作りの国語辞典。新語を多く登載することが特徴。 もともと新明解国語辞典と三省堂国語辞典は、明解国語辞典という1つの辞書だったが、いろいろな経緯があって、2つの系統に分かれた。 元読売新聞用語幹事・金武伸弥氏による国語辞典比較調査で、使いやすい辞書の第1位とされた。 |
対決テーマ
「いやらしい視線対決」
試合開始
まずは新明解で、「ビキニ」を引いてみます。
| ビキニ〔bikini=中部太平洋マーシャル諸島中の環礁名に由来〕 乳の部分と下腹部をそれぞれ申しわけ程度におおっただけの、セパレーツ型の女性の水着。「ビキニスタイル」 |
新明解の語釈の中でも有名なものの1つですが、「申しわけ程度に」おおっただけというのが実にそそられます。
「申しわけ程度」って、どの程度なんでしょうか。
「申しわけ」を引くと、「申しわけばかりの〔=何とか、するにはしたという程度の。形式だけの〕」とありました。
ここから類推すると、ビキニとは、
「乳の部分と下腹部を、形式的に、何とか隠したことは隠した程度の水着」
ということになります。
これは、いやらしい。
さて、三省堂国語辞典には何と書いてあるでしょうか。
| ビキニ(名) 〔米bikini=もと、地名〕 @ごくみじかいパンツとブラジャーだけの、女性用海水着。「ビキニスタイル」 A〔←ビキニパンツ〕ごくみじかい女性用のパンツ。 |
三省堂国語辞典の語釈の特徴は、簡潔かつシャープなこと。
ある意味、説明過剰な新明解より分かりやすいときがあります。
しかし、新明解の「申しわけ程度」の水着を見てしまったあとでは、「ごくみじかい」はあまりにも物足りない感じがします。
ということで、まずは、新明解に1本。
次、「ミニスカート」を見てみます。
| ミニ〔←miniskirt〕 たけがごく短い、ひざの出るスカート。 |
新明解国語辞典、 いまどき「ひざが出る」というだけでは、ミニとはいえないでしょう。
せめて、「たけがごく短い、パンツの・見えそうな(見える)スカート」くらいは書いてもらいたいものです。
(と、友人のS君が言ってました。)
三省堂国語辞典に期待しましょう。
| ミニスカート(名) 〔miniskirt〕 〔服〕ひざ上十センチぐらいのたけの、ひじょうに短いスカート。 |
「ひざ上十センチくらい」と、具体的に長さを示しているところが新鮮です。
女の子のスカートを、「ひざから何センチくらいだろうか」と、じっと見つめている姿が目に浮かびます。
スカートを見つめるのは、いやらしい。
三省堂に1本。
ただし、「ひざ上十センチくらい」というのも、やっぱりちょっと物足りない。
第6版では、「股下十センチくらい」にしてもらいたいものです。
(と、友人のK君が言ってました。)
どんどん、いきましょう、次は「トップレス」。
| トップレス〔←topless bathing suit〕 乳房をおおう部分の無い、婦人用の水着。 |
トップレスというのは、上半身裸のことかと思っていました。
トップレスは服飾用語で、「乳房をおおう部分の無い、婦人用の水着」だそうです。
しかし「乳房をおおう部分の無い」というのは、いまひとつ分かりにくいです。
この説明では、「胸の部分だけ布地が切り取られていて、乳房が露出している水着」というふうにも読めます。
そういうことであれば、いやらしい。
三省堂国語辞典には、どう書いているでしょうか。
| トップレス(名) 〔topless〕 〔服〕(女性の)胸の部分をまる出しに・すること(した水着)。 |
胸をまる出し!
胸をおおう部分が無いなどといった消極的表現でなく、胸を惜しげもなくばーんと見せているという積極的表現です。
胸まる出しは、いやらしい。
三省堂にもう1本。
胸といえば、三省堂の「ふくよか」の用例にこんなものがあります。
| ふくよか(形動ダ) やわらかにふくれているようす。「ふくよかな胸」 |
「ふくよか」の唯一の用例が「ふくよかな胸」。
「ふくよかな顔」でも、「ふくよかな体つき」でもいいのに、わざわざ、「ふくよかな胸」です。
やわらかにふくれた胸は、いやらしい。
新明解は、どうなっているでしょうか。
| ふくよか 柔らかそうにふくらんでいて、感じのいい様子。 「ふくよかな胸」 |
なんと用例は全く同じ「ふくよかな胸」。
しかし、さすがは一言多い新明解、「柔らかそうにふくらんでいる」胸が「感じのいい様子」なんだそうです。
感じのいい様子って、どんな様子なんでしょう?
感じのいい胸って、どんな胸なんでしょう?
感じのいい胸を、見てみたい。
(・・・と、友人のY君が言ってました。)
新明解に1本。
なお、新明解は「ふくらみ」の用例で、駄目押しのようにこんな用例を書いています。
| ふくらみ【膨らみ】 ふくらんだ・所(程度)。「胸のふくらみ」 |
新明解は胸フェチなんでしょうか。
試しに、「ボイン」を比較してみましょう。
| ぼいん(名) 〔俗〕大きなおっぱい。 |
ボイン=大きなおっぱいです。
他に言いようが無いと思いますが、新明解だと、こうなります。
| ぼいん 〔口頭〕(若い女性に多く見られる)豊かな乳房(の隆起)。 |
その差は歴然です。
新明解は若い女性の胸の部分をじっくり観察したのです。そしたら、豊かな隆起が多く見られることを発見したのです。
若い女性の胸を観察するのは、いやらしい。
間違いありません。
新明解は胸フェチです!
最後に視線を下半身へ移して、「バタフライ」を引いてみます。
| バタフライ(名) 〔butterfly=昆虫のチョウ〕 @ ストリッパーが局部につける小さい布。 A 泳ぎ方の一種。両手をいっしょに水からぬき、足はドルフィンキックを用いる。 |
水泳のバタフライより、ストリッパーのバタフライの方が先に書かれています。
三省堂国語辞典の編集者にとって、こっちのほうが馴染みが深かったんでしょうか。
新明解はどうでしょう。
| バタフライ〔butterfly=チョウ〕 @ 〔水泳で〕両手と両足を左右対象に動かしてイルカのようにからだ全体をくねらせて進む泳法。 A ストリッパーの前あて。 |
水泳のバタフライの方が先に書かれています。
Aですが、「ストリッパーの前あて」と書いてあるので、続けて「前あて」を引いてみます。
| まえあて【前あて】 ストリッパーが、恥毛が見えない程度に付ける、小さい布。バタフライ。 |
恥毛が見えない程度!
そんな言い方、ありですか?
もしかして、「ビキニ」の「申しわけ程度」も「恥毛が見えない程度」だったんでしょうか!?
そもそも「恥毛が見えない程度」なんて表現、国語辞典に書いていいんでしょうか?
恥毛を気にする新明解は、
圧倒的にいやらしい。
試合終了
新明解国語辞典の勝ち
三省堂国語辞典も健闘はしましたが、そもそも簡潔な表現が持ち味の三省堂国語辞典が、過剰な表現が持ち味の新明解に勝負をいどむということに無理があったようです。
新明解のユニークさを実感するためには、他の辞書と比較をするのが一番なので、こういう形でネタにしてしまいました。三省堂国語辞典には、慣れない戦いを強いることになってしまい、申しわけないことをしました。
最後に、優勝者・新明解国語辞典のいやらしい視線の極めつけの用例を紹介します。赤瀬川原平の本でもネタになっていた、「ねばねば」の用例です。
| ねばねば 「ねばねばした暑熱と、たえまない靴音と、汗ばむ倦怠にひたって、すれちがうイタリア娘の腰と足を鑑賞していると・・・」 |
「イタリア娘」 の 「腰と足」 を 「鑑賞」・・・!
こんないやらしい辞書に、三省堂国語辞典が勝てるわけがありませんよね。
【追記】 新明解の「はだける」の用例にこんなものが…。
| はだける (一) 〔着物の前△が(を)開いて〕からだの一部△が見える(を現わす)。「胸がはだける」「胸をはだける」(第4版・第5版) |
やっぱり胸が好きなんだ・・・。
【追記2】 新明解の「まくる」の用例にこんなものが…。(2002年12月13日「む」さんの書き込みより)
| まくる【捲る】 隠れている部分が見えるように、端の方から(身に着けている物を)折り返す。「スカートを腰まで捲り上げた」 (第3版〜第5版) |
スカートを腰まで捲り上げたら、パンツが丸見えだ!