新明解国語辞典の魅力(入門編その1)


 新明解国語辞典の魅力は、時として出てくる過剰なまでの説明にあることは異論がないでしょう。 私の場合、第4版の「動物園」という言葉で新明解の魅力にとりつかれました。


どうぶつえん【動物園】
 生態を公衆に見せ、かたわら保護を加えるためと称し、捕らえて来た多くの鳥獣・魚虫などに対し、狭い空間での生活を余儀なくし、飼い殺しにする、人間中心の施設。 (第4版)



 私は、これを読んで、高村光太郎のダチョウの詩(→こちら参照)を思い出し、涙しました。


 普通の辞書はここまで書かないでしょう。 ずいぶん思いきったことを書くなあと思いました。
 ※なお、この語釈はどこかからクレームがついたのか、すぐに変更されました。
  (第4版でも上のように書いていないものがあります。)


 (管理人より:その後、「動物園」については1章設けました。→先に読みたい方は





 次に、新明解を語る際、必ず引用される「恋愛」という言葉を見てみましょう。


れんあい【恋愛】 
 特定の異性に特別の愛情をいだき、高揚した気分で、二人だけで一緒にいたい、精神的な一体感を分かち合いたい、出来るなら肉体的な一体感も得たいと願いながら、常にはかなえられないで、やるせない思いに駆られたり、まれにかなえられて歓喜したりする状態に身を置くこと。(第5版)



 妙に具体的です。

 「常にはかなえられない」「まれにかなえられる」って、体験談でしょうか?


 それより問題は、「出来るなら肉体的な一体感も得たい」の部分。 第5版のこの書き方でもけっこう露骨な感じがしますが、第4版では、次のようになっていました。


れんあい【恋愛】 
 特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態 (第4版)



 「合体」って、テレビのアニメや特撮ものでしょうか?


 そこで「合体」を引いてみると・・・


がったい【合体】
 @起源・由来の違うものが新しい理念の下に一体となって何かを運営すること。
 A「性交」の、この辞書でのえんきょく表現。  (第4版)



 「この辞書でのえんきょく表現」って、そんな語釈、反則です。


 それに、第5版の書き方ならまだ「抱擁」とか「接吻」とか解釈の余地がありますが(=肉体的な一体感)、第4版のように「合体したい」などとずばり書かれたのでは身もふたもありません。(新明解って、一応学習用辞典のはずなんですが・・・。)








 最後に、「食べ物ネタ」から、「はまぐり」を紹介します。


はまぐり【蛤】 〔浜栗の意〕
 遠浅の海にすむ二枚貝の一種。食べる貝として、最も普通で、おいしい。殻はなめらか。〔マルスダレガイ科〕  [数え方] 1枚 (第5版)

 

 新明解は、けっこう食べ物の好みがはっきりしていて、好きなものは「うまい」とか「美味」とか必ず書いてあって面白いのですが、ここでのポイントは「食べる貝として、最も普通」の部分。


 食べる貝で最も普通なのは、「あさり」か「しじみ」ではないのでしょうか?




 このように、独断と偏見に満ちていて、説明が妙に具体的でリアルなのが新明解国語辞典の魅力なのです。



【補足】
 2005年1月10日発行の第6版で、恋愛の語釈は次のように変更されました。

れんあい【恋愛】 特定の異性に対して他の全てを犠牲にしても悔い無いと思い込むような愛情をいだき、常に相手のことを思っては、二人だけでいたい、二人だけの世界を分かち合いたいと願い、それがかなえられたと言っては喜び、ちょっとでも疑念が生じれば不安になるといった状態に身を置くこと。


 第5版までは体が目的だったのに、ずいぶん真剣になってきました。


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