少女A

 

 世紀末、地獄は悪人や罪人でごった返していた。

鬼達は、ほとんど不眠不休で悪人達の対応に追われていた。鬼達の疲労はほとんどもうピークに達していた。疲れがたまると愚痴っぽくなるのは鬼も人間もそう変わりないのだった。

「ちょっとくらいのうそ閻魔さんも見逃したったらええのに。おかげでこっちは仕事が増えていい迷惑や」
 うそつき悪人の舌を抜くためのやっとこを磨きながら赤鬼が言った。
 「ほんまやなあ。あのオッサン融通がきかなすぎるねん。何とかしてくれよ。これかってあまりにようけの悪人が登りよるさかい折れて折れて困っとんねん。」
 針の山に補給する針の数を数える手を止め、ため息まじりに、青鬼が呟いた。
 「それはそうと今度血の池地獄の掃除係になったあのおやじのこと知ってるか?」
 赤鬼が青鬼に尋ねた。
 「ああ、あの頭のてっぺんさきがはげてて、小太りのおやじか?」
 「せやせや。あいつ生きてる間に相当悪い事してきよったらしいで。なんでもどこぞの国の権力者やったそうやが。権力を振りかざしやりたい放題。気にいらんもんはすぐに殺しよるし。国中のうまいもんとべっぴんさんを独り占めしよるし。ごっつえげつない奴やったらしいわ」
 「ほんまか。せやのになんで掃除係くらいで許してもらいよったんや」
 「あいつ金もっとんたんやて」
 それを聞いて、うなずきながら青鬼が言った。
 「やっぱ金か?」
 「せや金や」
 「閻魔のオッサンも融通がきかへんわりには金には弱いからのう」
 「どないもならんオッサンやで。わしらにその金いっこもまわしてくれへんとからに。金くれへんねんやったせめて休みくれっちゅうねん」
 二人は顔を見合わせてため息をついた。
 「それはそうと」
 再び赤鬼が思い出したように言った。
 「ほらあの娘。この間来たばっかりのあの娘。少女A」
 「少女Aがどないしてん?」と青鬼。
 「あの娘やっぱり極刑は免れへんらしいで」と赤鬼。
 「何でや。なんであんなに可愛くて、気立てのええ子が。あの娘わしにもよう声かけてくれるねん。たいへんですねえ。ご苦労様です。がんばってください。てな。ほんまにええ娘や。せやのになんで?」
 青鬼にはかなり興奮気味に声を荒だてて言った。
 「知らん。閻魔のオッサンが独断で決めよんねんから」
 「なんやそれ。少女A金持ってへんかったんやろか?」
 「知らんけど。中学生の小遣いなんて知れてるやん」
 「かわいそうになあ。なんとかならんかったんやろか。」
 と涙ぐみながら青鬼が言った。
 「自殺やさかいなあ。大目に見てもらわれへんみたいやわあ」
 赤鬼がため息まじりに呟いた。

 そのようなわけで少女A十四歳の極刑が今まさに執行されようとしていた。心優しい鬼達はそれだけはなんとかかんべんしてやってほしいと閻魔大王に懇願した。だが閻魔大王は首を縦に振らなかった。年若い娘だからといって容赦はしなかった。やはり閻魔大王は若い娘より金の方が好きだったのかもしれない。おっとこれは蛇足。
 「自殺でさえなければある程度のことはなんとでもなったのだが、こればっかりはわし一人の裁量ではどうすることもできんのじゃ。」と閻魔大王は感慨深げに少女Aに向かって言った。少女Aは黙ってうなずいた。

 「なんて言ってあげたらいいのかようわからんけど。気落さんときや。まだ若いんやし。これからまだまだがんばれるわ」
 極刑執行人に選ばれてしまった青鬼が精一杯少女をはげました。
 「あんじょう、つとめて、くるんやで、陰ながら応援してるし」
 「いろいろありがとう」
 力のない声でそう言うと、少女Aは極刑執行現場に向かったのである。


 ある朝、とある産院で、ひ弱な産声(うぶごえ)が上がった。

 

 

人生のシナリオ

 

 

人生のシナリオはあらかじめ人それぞれすでに決められている。

人は、この世に生まれてくる前に,あの世の役所の「運命管理課」と言う所に赴き、自分のシナリオの登録を、すませておかなければならない。

運命管理課は、登録されたシナリオの筋書き通りに,その人の人生を展開させていく。

そのシナリオについてだが,シナリオは大まかにランク分けされている。

超特上,、特上、上、中の上、中の中、中の下、下、下の下、下下下の下。といった具合だ。

 

超特上のシナリオには、薔薇色の表紙に薔薇の花がちりばめられており、さながら高島屋デパートの包装紙のようなゴージャスな雰囲気を持っている。

そしてその表紙のような薔薇色の人生が、その主に約束されているのである。

超特上のシナリオを手にできる人は、どのような人かというと、ズバリ、「運のいい人」なのであった。

だが、その人たちよりも、さらに運のいい、ウルトラ級の、いわゆるめちゃめちゃラッキーな人たちが

いることもたしかだった。

 

その人たちは、この世に、生まれてこない。