薔薇色の他人

 

ラッシュ時の地下鉄の中は

あかの他人でごった返していた

その中であたしは

ひときわ目立つ

薔薇色の他人を見つけた

 

 

あかの他人は

冷たい排他色な鎧に覆われていて

どれもみな同じに見えるけれど

 

薔薇色の他人は

温かい薔薇色のベールに包まれているので

すぐにわかる

 

めったにお目にかかれるものではないので

 

出口の手すりにしがみついていた私は

その安全地帯に別れを告げてでも

あかの他人の間をくぐり抜け

薔薇色の他人の傍に行って

そして思いきって

話かけてみるべきだったの

かもしれない

 

「オメニカカレテコウエイデシタ」 と

 

薔薇色の他人は南船場4丁目の駅で降りた

降りる際に出口の手すりに

しがみついているあたしの横を

通りすぎていった(微かに薔薇の香りがした)

 

やがて電車は走り出し

あたしは薔薇色の他人を見送っていた

 

相変わらず出口の手すりに

しがみついたままで

 

薔薇色の他人が

あかの他人にまぎれて

 

遠く見えなく

なってしまうまで