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ないものねだり

 

クルミがナシオさんを連れてきた。

でもあたしには、彼が見えなかった。やはり彼は、正真正銘の透明ボーイらしかった。

「いやあ。お会いできて光栄です。クルミからお噂は、かねがね伺っています」

そう言いながら、何も無い空間を見つめた。妙な感じだった。

「ボクノホウコソ。オアイデキテコウエイデス。だって」と、クルミが通訳する。

ふうん。とますます妙な感じになった。

 

 

透明ボーイを恋人に持つことが、巷の女の子達のステイタスになって久しい。

誰でも簡単に、彼らを、手に入れられるわけではない。なんでも相当の演技力を必要とするそうだ。

街では、透明ボーイを連れて歩いている女の子達が、目に付くようになった。彼女たちは、普通の男の子達を連れて歩いている

女の子達に、ちょっと得意げなまなざしを送る。

「ふん。何よ、あの男。丸見えでやんの。ダサいわ抜いまどき。流行らないわよ。そのてん私の彼氏は最高よ。

なんてったって。バリバリの透明ボーイなのだから。いいでしょう。うらやましいでしょう 悔しかったらあなたも演技力を身につけることね。ほほほ」

とでも言いたげな感じで、いわゆる普通のカップルの前を通りすぎてゆく。

 

あたしだって、透明ボーイの恋人が欲しい。

でもわからないのだ。彼らとお近づきになる方法。いったい彼らは、どこにたむろしているのか?

クルミに尋ねるのも、しゃくなので、いまだに聞けずじまい。

 

できれば特集組んで欲しいものだ。「ああんああん」とか「ぜいぜい」とか「きゃいんきゃいん」とかのファッション雑誌でさ。

例えばこんな特集。

「町で見かけたすてきな透明ボーイ」「あなたが選ぶ透明ボーイベスト10」「透明ボーイご用達の店」「まずは透明ボーイとメル友になろう!」などなど。

毎回立ち読みで、探して見るけれど、そんな特集どこの雑誌も組んでくれていないので、がっかりする。

やっぱ企画に無理があるのかなあ。だろうな。企画さえ上手く行けば、爆発的に売れるだろうに、その雑誌。

あああ。ならせめて、「透明ボーイの、お好みの女の子のヘアスタイル、メイク、ファッションetc 」くらいの特集は

組んで欲しいなあ。そのくらい想像力でカバーできそうものなのに。残念だ。

そんな記事がもしあれば立ち読み返上して買うのになあ。

 

などなどあれこれ一人で考えていたら、クルミとナシオさんは、勝手に二人で盛りあがっていた。

ていうか私には、クルミが一人で、はしゃいでいるようにしか見えなかった。けど。

 

つづく