
「お母さん。絶対来てよ」
我が子Hが、目を輝かせながらそう言った。
「ボク、ドッチボール得意なんだよ」
自信たっぷりにまた言った。
クラス対抗のドッチボール大会が
楽しみでしかたがない様子だった。
さてその当日の
熱気に包まれた体育館のコートの中
我が子Hは、
すさまじい勢いで飛んでくるボールを
たじろぎもせず真っ向から
身体を張って受けて止めて
周囲の歓声を一人占めしている
いわゆるヒーローの
ちょうど影に隠れて
逃げていた。
その逃げ方は
半端ではなかった
誰よりも真剣に
誰よりもすばやく
追ってくる敵のボールの行方をキャッチして
逃げて逃げて
逃げまくっていたのだ
あの子はおそらくいつもよりずっとがんばって
逃げているのに違いない
あたしが見ていることを意識して
一生懸命に逃げることによって
あの子はあの子なりに
ドッチボールと闘っているのだ
終わったら駆け寄っていって
よくやった。
よく逃げた
よく逃げきったね
と ほめてやろう
あたしだけは あたしだけは
せいいっぱい
あの子を