小沢俊夫 編
 『世界の民話3 アジア1』
○小沢俊夫編訳
 『世界の民話1 ドイツ・オーストリア・スイス』
 (ぎょうせい、1976)★★★★

 「その国の民の心」とは何か。
 たとえばオーストリア民話に「親指太郎」がある。親指くらいしか背丈のない少年ハンスが、コウノトリにさらわれたり、川で魚に呑み込まれたり、デコレーションケーキの中に閉じこめられたり、さまざまな冒険をする。小さな体にも利点があって、国王暗殺計画を練る陰謀家たちは、親指太郎に気づかなかった。これを報告した国王から、以後庇護を受け、幸福に暮らした・・・・。
 類似の民話は、「親指姫」など、ほかにも例がある。
 グラフィック・デザイナーで障害者運動に活躍する“松葉づえのマキさん”こと牧口一二は、西欧の民話では生まれた時の親指大の身長のままで幸福に暮らす点に注目してほしい、とどこかで述べていた。かたや、わが国の御伽草子のひとつ「一寸法師」の場合、打出の小槌の魔力を借りて普通の人の身長に変じて後、ようやく幸福になる、云々。
 民話も比較文化論の素材となるのだ。

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○小沢俊夫編(笹谷雅訳)
 『世界の民話3 アジア1』
 (ぎょうせい、1971)★★★★

 世界の民話シリーズ全12巻の中の一。中国、モンゴル、シベリア、朝鮮の4か国の民話61編をおさめる。
 民話にはお国柄がもろにあらわれる。たとえばモンゴルは、小沢俊夫の解説によれば、(1)動物や魔法が重要な役割をはたす。(2)知恵、悪知恵、特殊な能力で相手をまかす主人公が多い。(3)主人公には次の2つのタイプがある。すなわち、(a)単純な少年、貧しい親の子、父親のいない子、若い狩人、馬飼い少年で、かつ、いつも正義を愛し、よこしまな領主をこらしめる(領主や長老はつねに悪漢とされる)。(b)人生経験が豊かで知恵に満ちた老人。
 たしかにモンゴル民話には馬、牛といった動物が頻繁に登場し、しかも家族同然の身近さで語られる。たとえば、「馬頭琴はどのようにしてでき上がったか」
 スホーという17才の牧童は人気のある歌手でもあった。スホーは草原で拾った仔馬を育てた。仔馬は雪のように白く美しく丈夫なポニーに成長した。狼退治を契機に、一人と一匹はそれまで以上に親密な友だちとなった。王さまがラマの寺院で競馬を開催した。勝てば王の娘をめとることができる、という。スホーは参加し、真っ先にゴールを駆けぬけた。しかし、王さまはスホーの身分をさげすんで、金貨3枚だけ与えて下がらせようとした。スホーは違約をなじった。王は怒り、家来にスホーを痛めつけさせ、追い出した。ポニーは王さまに奪われた。ある夜、ポニーがスホーの貧しい家に逃げ戻ってきた。7、8本の矢が体に突きささっていた。ポニーは死んだ。嘆いて眠れず、転々とするスホーの枕元にポニーがあらわれて言った。「私の骨で胡弓をつくってほしい」と。翌朝、スホーはポニーの骨を刻んで馬の頭をつくり、その腱で弦をつくって張った。そして歌った。ポニーに乗って走った時のすばらしい気持ちを。悪い王さまに対する怒りを。スホーの胡弓は民の声となった。みんなは、仕事を終えた夜、スホーの胡弓を聞くために集まるようになった・・・・。
 この昔話は、民族になじみ深い道具の起源を説明する。説明は胡弓の構造に及ばず、楽器としての機能からすると副次的な装飾の説明をもっぱらとする。装飾は説明しやすく、音楽は説明しがたい。
 先年、知人の画廊を訪ねたら、モンゴル人の家族連れが馬頭琴を演奏していた。うら寂しい音色だが、底力のある響きで、広大なステップの住民にふさわしい、と思われた。
2002年1月3日(木)

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