世界の“MIIKE”がいたく御執心な男たち

 
(三池崇史インタビュー 『ピクトアップ』#11号)

 

『アンドロメディア』では揺れる乙女心をと、まるっきり違ったテイストの快作群を変幻自在に生み出し続けている。そんな三池監督がこの度放つのは『天国から来た男たち』。フィリピンの刑務所を舞台にしたディープなヒューマンドラマ。「三池崇史とは何なのか?」。とらえ所のない三池ワールドの核心に迫るべく、マイクを向けてみた。


エストラーダVS
竹内力!?

『天国から来た男たち』――フィリピンの刑務所に無実の罪で放り込まれた男の物語。地獄の沙汰もなんとやらで、ムショでの華麗な(?)な暮らしっぷりが印象に残る。

――さて、『天国から〜』公開に先駆けて(撮影は昨年)、エストラーダ・前フィリピン大統領の豪勢なムショ暮らしの模様が報道されてました。作品中、山崎努演じる吉田の暮らしっぷりをほうふつとさせる様子でしたが、もしや逮捕を撮影時から予想していたとか

「いやあ、偶然ですよ偶然。あの国はいつ何が起こっても不思議ではないから、いろいろあるんです。向こうは今デモやら何やらでホント大変みたいだから。フィリピンで一緒に撮影に関わってくれたスタッフも元気でいるのかどうか。残念ながら2〜3人は死んでいるかもしれませんし」

「それはさておき、エストラーダには捕まっても堂々としていて欲しいなあ。人は捕まったとたんに弱ささらけ出して、犯罪者の顔に成り果ててしまいますから。あいつには、ダメになっても、例え死んでも、堂々としていて欲しいと思いますね」

―あれっ、かなりお気に入りなんですね。監督の好きなキャラなんですか?

「彼は本来、いい『役者』であったわけですから。弟もイイし、役者一家ですから。うまくいったら、Vシネマに出演してもらったりとかね。バリバリの犯罪者が出演したら、映画だといろんな人たちが倫理上マズイというかもしれないけど、オリジナルビデオだったら自由じゃないですか。作品の冒頭から、いきなりエストラーダと竹内力が殴り合いのケンカしたりしてね(笑)」
と、エストラーダへ寄せる意外な思い入れを披露する三池監督は、背筋がピンとまっすぐ。キビキビとした動きはいかにも仕事が早そう。だから多作? 目付きが鋭く、意外にまつげが、長い。

――そのサングラスは、鋭すぎるまなざしを和らげるためのアイテムとお見受けしましたが?

「もともと視力がそんなにいい方じゃないんですよ。それにそんな和らげるほどのものじゃないし。俳優さんと話したり、スタッフと話したりする時、読み取られちゃうような気がするんです。こっちも割と相手の目とか見て、最初に目が触れ合った瞬間に相手のこと、自分勝手に想像するんだけど。自分がそういうタイプなので、逆に相手に想像されたり、読み取られるのがイヤだなと」

――このインタビューでは、監督の人物像に迫ろうと思うのですが

「僕はアレンジャーで、いわば受け皿みたいなもの。迫るほどの中味はないんだけど」

――『天国〜』主演の吉川さんはどんな人でしたか?

「吉川さんは脚本の話しをしながら、役がどういうのかというよりも、『あなたは(監督は)今までどんな生き方をして、何をしようとしているのか』探りを入れてくるんです」

――神経使いそうですね。すごく疲れませんでしたか?

「いや、単に俳優と探り合うわけじゃなくて、結局は自分がどれだけ作品に向き合っていけるかということに行き着きます。だから苦ではないんです。むしろ主演の俳優だけに限らず、脚本でないがしろにされている俳優たちも交えて互いに胸のうちを探り合う期間というのを、楽しむようにしています」

はかなさとせつなさに
ああぐっと

――監督の作品では、脇役陣が魅力的で、時には主役を喰ってしまうほどなんですよね

「この人はあんな素晴しい演技しているけど、幸せになることができないんじゃないかなと。その瞬間って一過性のもので、『はかなさ』があるじゃないですか。役者として成功できないんじゃないかというニュアンスを引きずりながら、イイ芝居をするというのがせつなくてイイ」

さきどり
三池作品情報

――ライフワークとおっしゃる『DEAD OR ALIVE』の3作目も公開が待たれていますが

「いやいや、あれはこんどでファイナル。違うカタチでやれればなあとは思いますけど。長く続いたシリーズの成れの果てっていうのは、出演者ともども分かっているので。哀川翔さんも『これが最後で、もう満足だ』っていうモノにしようと考えているようだし。内容的には、今度のはもうダメですね。世間から激しくヒンシュクかって終わるっていう(笑)」

――そんなにヤバイしろものですか。じゃあ、封切りされたら打ちきりにならないうちにスグ行くべしと

「そうそうそう、ホントそう(笑)」

クリストファー・
ウォーケンVS力!?

――監督に対する注目は今やワールドワイドですよね。ご自身はどのように感じていますか?

「自分にとっては悲しむべきことではないので、単純に子供のように『ヤッター』という思いはあります。そういう評価を利用して、現実的に考えているのは、もっと広いスケールでありながらオリジナルビデオ的な身軽さで、いろんな人たちを組み合わせていくということ。面白いものが作れるかなと思うんだけど。例えば、フランスに行って、『お金4000万円出してよ、返さないけどね』とか言って(笑)。それで3500万円ぐらいスタッフみんなで分けて、500万円で作った作品が劇場でヒットしたりしたら、笑えるし、夢があっていいなと思いますね」

――世界的評価を利用して、いろんなことがやりやすい環境になっていくと

「そうですね。こっちが高く望まないからやりやすいと思うんですよ。1000万円でもいいわけだから。日本の少数のスタッフと現地のスタッフとのジョイントでとんでもないことをしちゃうとか」

――そうなるとキャスティングも先に出たエストラーダじゃないけど、国際展開ということに?

「ずーっと、クリストファー・ウォーケンにオファーをしています。向こうにヘンチクリンなオリジナルビデオを送り付けて。彼、一本ぐらい観てくれたかなあ。クリストファー・ウォーケンが『突風! ミニパト隊』(監督のデビュー作品)観たりしたらオカシイだろうなあという(笑)」

――アレを送りましたか!

「ハイ(笑)。彼は『(出演しても)イイよ』とか言っているらしいんですけどね。すごくドキドキするんですよ。あの人が映画に出てくると。ああいう俳優と香港テイストのアクションと、日本の映画人と組み合わせると結構面白いかなあと考えています」

 先ごろ、三池監督が『座頭市』のメガホンを執ることが発表された。話しだけは以前からあったものの、「ホントかなあ」と話し半分に聞いていた矢先の実現だ。だから、エストラーダやクリストファー・ウォーケンとの熱いセッションも大いに脈アリの話しとして、記憶に留めておきたい。


あとがき

 その後三池作品『殺し屋1』を取材することになる。
 このインタビューの当日、ICレコーダーを購入したので、インタビュー場所に付くまでにマニュアルを眺める始末であった。今、手元のMacのHDの中に、三池監督と私の声がデジタルで保存されている。 
 担当のトツカ女史、カメラマン富田さんと、写真撮影のロケハンで道路の周辺をあれこれ歩いたのがなぜか記憶に焼き付いている。
 なお、当初タイトルを「オリジナルビデオ魂を心に秘め」でサブタイトルを「世界の“MIIKE”がいたく御執心な男たち」としたのだが、サブタイトルがメインに昇格というカタチとなった。編集サイドの手直しなのだが、このほうが確かによかったみたい。
 記事にするしないは別として、個人的にもっとくだらない話(女性観や下ネタ等)を伺いたかったが、時間が30分ちょいしかなかったので、それはかなわなかった。

 

 
 
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