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使徒言行録
しとげんこうろく Acts of the Apostles


1.プロローグ

新約聖書の5番目の書。「ルカによる福音書」の続編となる歴史書である。聖霊の降臨によって教会が生まれ、発展していく経過をしるす。

2.作者

 「使徒言行録」の著者は「ルカによる福音書」の著者と同一人物だと考えられている。しかし本書には題名も作者名もつけられていなかったため、著者がどのような人物だったのか、まったく明らかにされていない。2世紀には、パウロの同行者ルカの作とされていた。

最近の研究では、著者はパウロの同行者がつけていた旅日記を勝手につかっただけだという意見にかたむいている。結局、匿名作品の執筆者として後世に知られるだけの、数ある初期キリスト教徒のひとりだったのだろう。研究者は便宜上、作者の名を今も「ルカ」とよんでいる。

3.編集の時期

 本文によれば、作者はパウロといっしょに旅をしている「わたしたち」のひとりだが、パウロの処刑にも彼の手紙にもふれていない。そのため、本書はパウロの死(61年ころ)以前に、またパウロの手紙が2世紀になって収集される以前に書かれたと判断する研究者もいる。しかし、「使徒言行録」は「ルカによる福音書」の続編としての性格をもっているため、少なくとも同福音書の成立直後のものにちがいない。さらに、同福音書は「マルコによる福音書」ののちに書かれていることから、「ルカ」の2書は1世紀最後の20年間のある時点に書かれたものとみられている。

4.内容

 「使徒言行録」は、冒頭で「ルカによる福音書」の最後をくりかえし、次の内容をしるしていく。エルサレムでの教会の誕生(1〜5章)、殉教者ステパノとパウロの回心(6〜9章)、異邦人を教会にうけいれるという神の意志にペトロがきづいたこと(10〜12章)、パウロの伝道旅行(13〜19章)、パウロの最後のエルサレム行き(20〜21章)、彼の逮捕、投獄、エルサレムとカエサレアでの弁明(21〜26章)、そして最後にイタリアへの航海とローマでの投獄。ここでパウロは、皇帝の前でおこなわれる裁判をまつことになる(27〜28章)。この書にのべられる出来事は、教会がエルサレムで誕生し、ローマ帝国じゅうにひろまり、ついにローマにまでひろがっていくという大きな枠組みの中に位置づけられている。

およそ30年間をえがく本書は、ペトロとヤコブがひきいるパレスティナのユダヤ人キリスト教会をくわしく知るための貴重な資料になっている。しかし記述の重点は、パウロの実践した異邦人への伝道のめざましい広がりと、彼が人間として最大の「英雄」である点におかれている。とくに注目すべきことは、すぐれた人物たちのおこなった多くの説教である。パウロがアテネのアレオパゴスでおこなった説教(17章)は、作者が異邦人社会に福音をつたえる模範とするよう意図したものであろう。

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