肉食恐竜をめぐるジレンマ


 「恐竜の王者」とも言われるティラノサウルスを知らない子供はいないでしょう。ところでこのティラノサウルス、草食だったのでしょうか、それとも肉食だったのでしょうか?この一見ささいに思える質問をもしエホバの証人の集会で聴衆に尋ねたら、物知りな小学生のお子さんは「肉食です!」と元気よく答えるかも知れません。しかしお母さん姉妹、注意してください。あなたのお子さんはすでに背教していることになるかもしれません。実は協会の教えからすれば、肉食性の恐竜などは存在していないことになるのです。

 「エッ?そんなはずはないわ。協会は別に恐竜の存在を否定してはいないし…。そうそう、ティラノサウルスの写真が表紙裏に載っていた恐竜の特集号があったはずよ」と、研究熱心な姉妹は「目ざめよ」誌1990年2月8日号を本棚から取り出して調べます。

 「ええと…、草食恐竜の食性については書かれているけど、肉食とされている恐竜の食性についてはふれられていないわね。でもそれに何か深い理由でもあると言うの?」

 実はあるのです。

いるはずのない存在

  ちょっとややこしいので、ここはじっくり読んでください。恐竜は人間以前に出現し、人間以前に絶滅しました。ということは、人間が神に反逆する以前、つまりすべての動物がまだ本来の草食だったはずの期間中に限って存在していたことになります。ですから協会の聖書解釈では、肉を食べる恐竜など、過去のいかなる時代にもいたはずがないのです。

 そのようなわけで協会は、過去のある時代にティラノサウルスのような恐竜がいたとしても、それが肉食であったとは認めるわけにはいかないのです。

本当に肉食だったか

 「なるほどねぇ…。でもどうしてある恐竜が肉食であったと科学者は断定できるのかしら?単にそれが鋭い歯や爪を持ってるから、今の肉食動物と比較して、想像でそう言っているだけのことじゃない?」

 しかし実際はそうではないのです。恐竜の食性は胃の中の内容物や、近くから出る糞石(糞の化石)からも明らかになります。現在の動物界がそうであるように、草食の糞は丸っこい団子状の化石で発見され、肉食のものは細長い紡錘状の化石で発見されます。またニューメキシコ州から発掘されたコエロフィシスという肉食恐竜の胃袋化石からは、食べられた子供恐竜の骨が出て来ました。1987年には、中国雲南省で肉食のディロフォサウルスが草食のユンナノサウルスの尾椎骨に噛みついたままの化石で発見されました。水棲恐竜の歯型がついた大量のアンモナイト化石が出てくることもありますし、発掘される多くの草食恐竜の骨に、肉食恐竜の歯型がついていることは珍しくありません。肉食恐竜が過去のある時期に存在していたことは、否定できない事実です。

いつ存在していたか

 「分かったわ。確かに恐竜の中には肉を食べるものもいたのね…。でもあなたがさっき言った、『恐竜は人間以前に出現し、人間以前に絶滅した』という前提は確かなものかしら?一般的には恐竜は6500万年も前に滅んだとか言われてるようだけど、そんなの分からないじゃない?この『目ざめよ!』には、放射性年代測定法は疑わしいと書いてあるのよ?」

 それでも、肉食恐竜の存在が正当化されるには、恐竜が、アダムとエバが木の実を食べた以降まで絶滅せずに生存していた必要があります。なぜならすべての肉食動物は、アダムとエバの反逆以降に肉食になったと協会は主張しているからです(「目ざめよ」誌1983年1月8日号他)。つまり恐竜はたった6000年前にも存在していて、一定の期間地球上で人間たちと同居していたことになりますが、これはとうてい考えられないことです。なぜでしょう?

化石年代

 協会は放射性年代測定法を「疑わしい」としているので、ここではその測定法は無視しましょう。そのような難しい測定法を使わずとも、生物出現の順序を確かめる方法があります。地層は「地層累重の法則」により、原則的に古い方が下、新しい方が上に形成されていきます。それらの地層に含まれる化石を比較研究することにより、どの生物がどの生物より先かが分かります。こうして導き出された順序づけは相対年代と呼ばれ、11ほどの「紀」に区分されています。

 積み重なる地層によって導かれた生物史は、協会も創造論を裏付ける証拠として積極的に利用しています。『進化か創造か』という青い本の第5章「化石の記録に語らせる」を読めば、協会は化石の記録を否定しているどころか、むしろ自説を裏付ける根拠にしていることが分かります。

  例えば『進化か創造か』の61ページを開いてみましょう。そこには、「カンブリア紀」の初期に、海綿や三葉虫やくらげなどの無脊椎動物が突然、爆発的に出現した現象について書かれています。これはカンブリア・ビッグバンとも呼ばれていますが、協会はここで、この化石の記録上の大事件は、漸進的な進化論を反証し、突発的な創造論を証明するものであると主張しています。

 それでは恐竜についても「化石の記録に語らせ」ましょう。恐竜化石が人骨と同じ地層から出てくることはありません。冒頭の「目ざめよ!」誌が「人間の化石を含む岩層は例外なく恐竜の化石を含む岩層の上にあります」と認めている通りです。地層の証言によると、恐竜は「三畳紀」の地層に現われ、「ジュラ紀」を生き抜き「白亜紀」の地層で絶滅しています。そして人類が出現するのは「第四紀」の地層です。

 ですから、恐竜が人間以前に出現し、人間以前に絶滅したことは歴然としています。最古の「カンブリア紀」の記録が信頼できて中生代(「三畳紀」「ジュラ紀」「白亜紀」)の記録が信頼できないはずはありません。人間以前、すべての動物は草食だったという考えは、明らかに間違っています。

煙りに巻く協会

 しかしながらその「目ざめよ!」誌はこう続けています。「しかし、恐竜の骨と人間の骨が一緒に見つかっていないのは、恐竜が人間の居住地域には生息していなかったからだと言う人もいることに注目しなければなりません。そのような見解の相違は、化石の記録がそう簡単には秘密を明かさないこと、また今日地上にいる人で本当に答えを全部知っている人はいないということを物語っています。」

 さて、「恐竜が人間の居住地域には生息していなかったからだと言う人」、そう言うことによって恐竜と人間の同時存在の可能性を主張したがる人とは誰でしょうか?それはアメリカを中心に根強い勢力を保つ特殊創造論者のことです。彼らは創世記の「一日」を24時間と考えるので、とにもかくにも人間と恐竜が同時に存在していなければならないのです(エホバの証人の場合「一日」を24時間とは考えていませんが、肉食恐竜の存在が正当化されるためにはやはり、恐竜がエデンでの反逆以降まで生存していた必要があります)。

 協会はそのように考える人たちがいることを理由に「分からないこと」にしてしまっていますが、それは正直な態度でしょうか。協会は、カンブリア・ビッグバンのように化石が有利な証言をしてくれる場合には「決定的な証人」と言っているのに、不利な証言をする場合には、(普段は批判している)特殊創造論者しか言っていないような見解を持ち出して話を不透明化させ、「化石の記録がそう簡単には秘密を明かさない」とか「今日地上にいる人で本当に答えを全部知っている人はいない」という元も子もない言い方でごまかしてしまっているように思えます。

 いずれにせよ、創造論擁護のための「恐竜が人間の居住地域には生息していなかったから(恐竜と人間の骨が一緒に見つからない)」という言い訳は、アダムがすべての動物に名前を付けそれらを従えるよう指示されていたという創世記の記述と調和しませんし、「人間の化石を含む岩層は例外なく恐竜の化石を含む岩層の上にある」ことも説明がつきません。

 この記事では主に恐竜の食性について考慮しましたが、恐竜に関し特筆すべきもう一つの点はその「絶滅」です。次の記事では、生物の大絶滅という現象について、聖書と照らし合わせながら考えてみましょう。   

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