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すさまじい二冊:呉智英の講義資料 2003/2/24

久々に呉智英の講義資料を掘り返す。今見てもすげえ衝撃的な資料を使ってたもんだ。さしあたって次の二冊からの引用が目を引いた。

「拝啓マッカーサー元帥様」袖井林二郎(大月書店)
「未来からの遺言−ある被爆者体験の伝記」伊藤明彦(青木書店)

検索してみる。google:拝啓マッカーサー元帥様google:未来からの遺言。「マッカーサー」は去年岩波現代文庫として新たに復刻されてるな。「遺言」は・・・。Yahoo!Booksの取り寄せ不可ってのが凄いな。呉智英本人も授業中に「再版される可能性は極めて低い」とは言ってたが。

NACSIS:未来からの遺言 22件か・・・。相変わらず貴重書ぶりを発揮。愛知県内図書館横断検索:未来からの遺言県立図書館にもないものを春日井と蒲郡がよく持ってたなあ。名古屋市図書館はさすが。

こんなにこだわるのは両方とも本当にすさまじい本だから。普段の評論では見られない、人間の本質、庶民の行動の驚くべき事実が述べられている。


手元にあるのは呉智英が抜粋した部分のみ。ちょっと紹介してみようかしらん。

「拝啓マッカーサー元帥様」
大東亜戦争敗戦後にさまざまな日本人がマッカーサーとその総司令部(GHQ)に送った書簡集。その内容が不思議で、面白く、興味深い。以下その内容例。
「マッカーサーの姓名判断(岐阜県会議長)」「鮎の取れる川への清遊招待状(漁夫)」「昔の英語の教師がミス・マッカーサーだったので、親近感を覚えてお手紙(お嬢様と目される女性、タイプされた英文)」「組立大和スタンド(?)献上」「松茸壱箱献上(農業)」「眉間に十字架の模様のあるカナリヤ献上(医師)」「食糧危機の深刻な時期に自社製のビスケット一箱贈呈(食料会社専務・英文)」「高さ1メートルのハニワ盾献上(60歳男性)」「刺繍で作ったマッカーサー肖像画贈呈(全国留守家族代表)」「日本国憲法の全文を両面に分けて細字書きした扇子贈呈(「閣下の最も忠実なる僕」)」
ハニワとか、訳わかりません。普通に考えて全く意味のない事を彼らはやっている。老若男女、職、学識も一切関係ない。敗戦という衝撃の中で、何とかして新しい現実に適応しようとし、自らを論理的に納得させようとする行動だろうか。政治学者の見識が待たれる。

「未来からの遺言−ある被爆者体験の伝記−」
ジャーナリストである著者が、ある「被爆者」吉野さんにインタビューする。吉野さんはインタビュー当時、重度の障害を抱えていた。著者はインタビューの中で小さな頃からの話や、原爆時の様子、その後の障害を持った生活などを聞き出す。しかし、後に著者は吉野さんが被爆者ではなかったことを知って愕然とする。
被爆者手帳も障害者手帳も、国から受ける補助は変わらない。誰が見てもわかるほどの障害を持つ吉野さんならば被爆者年金と同等の障害者年金が補助されるはずで、被爆していない吉野さんが被爆者と偽る必要は全くない。著者はこの奇妙な行動をこう結論付ける。
「もし人が、生まれながらにこのような条件を背負って人生を歩みはじめたとしたら、その人はいったい、自分のその苦悩の意味づけを、どのようにして得ることができるでしょうか」
障害のある自分の身体の理不尽を、同時代に原爆投下があったということにおきかえ、自分を被爆者にすることで納得しようとしたのだ。

「人」とはこういうおかしなことをする動物なのだ、と、この二冊は教えてくれるのだが。抜粋じゃなくて通して読みたいよう。

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