夢物語
〜imagine story〜



ふと、空を見上げてみた。



話が浮かばない時、よくこれをする。
あの広い空のどこかに話のタネがないのか探すのだ。


ありきたりな話。


しかし、実際これがよく効く。
そう、話が思いつかないときとか、アイディアに詰まったとき等―――


「おじさんスランプ?」
「スランプ?」


そう、人は一般的にこれをスランプという。
しかし、その言葉は今の俺にとって心臓にまるで包丁が刺さったくらい心が痛む言葉でもある。


ちくしょう。

俺だって好きでスランプやってるわけではない。


俺は『キッ』と睨むように、空から彼らに目を向けた。
同じ格好、同じ顔、同じ背、まだ声変わりもしていない二人の子供がそこにはたっていた。
「ゆうき、ゆうやっ!!何してるのっ!?」
名前を呼ばれた二人の少年達は俺に背を向け、母親の元へ走っていった。

双子か、もしくは仲のいい兄弟・・・と言ったところだろう。

彼らは、もう季節は暖かいというのに、赤色と青色のおそろいのマフラーをつけていた。
俺としては、赤に対称するのは黒がいいと思う。

しかし、そんなことはどうでもいい。
今時の子供は失礼だ。
突然、人に向かって“スランプ”だなんて言うのだから。

と、文句を言いに行こうか考えながらも、俺は彼らの会話に耳を澄ませていた。

「知らない人に話し掛けちゃだめでしょ?」
「だって、マンガでよんだんだもん。ねっ」
「うんうん。」
「何を?」

母親が尋ね、俺も心の中で尋ねた。
子供達は飛び跳ねるように元気よく、俺に聞こえるように言ってくれた。


「「公園でベンチに座っている人は“スランプ”の人だって」」



俺はベンチからずり落ちそうになった。


キャハハと子供達は楽しそうに笑っている。
ハハハ。俺は心の中で苦笑した。

そうか、世間ではいつのまにかそういう常識になっていたのか。

めまぐるしく変わる世の中。どんな常識が飛び出してもおかしくはない。
そして、まだ俺は会話を聞いていると、それに対して今度は母親がコメントを言った。


「あのねぇ・・。そういう人は“ホームレス”かもしれないでしょ?」


俺は吹き出しそうになった。
いやいや、ここで笑ってはいけない。
俺は必死に腹筋に力を入れ、笑いをこらえた。
第三者から見れば、突然笑い出した俺をどう見るだろう?
精神病院につれていかれるか、警察につれていかれるか・・・
それこそ普通の人と見られることはない。

「だめよ、近づいちゃ。そろそろ、おやつの時間だから帰りましょ」

そういって彼らは去って行った。


恐ろしい世の中になったもんだ。
公園のベンチに座っているだけで家がないと思われてしまう。
最も――――
もっと恐ろしいことは、ただ運転をしているだけで人が死んでしまうことだが・・・。

俺がこうして仕事もせず、ただボケーっと空を見上げているのも話につまったからだけではないのだ。
俺の担当している奴、名前は住江 通。
その彼女が一週間前死んでしまったから、という理由も含まれている。
彼女に恋心を抱いていた、彼女とは禁断の恋だった、なんていう小説のネタになる関係柄ではない。
一般的に、小説を書くものと小説を受け取るもの。
それだけの関係。
身近な人物だった、ということは事実の話。

小説で人を死なせることはよくあった。
人が悲しむことによって日常から変化する日常へ変わるからだ。
しかし、今実際こうしてその立場に立つとその理屈はよくわからないことにようやく気がついた。


だめだ。物語が書けない・・。


いっそのこと。

この仕事を止めてしまおうか。とも思った。
しかし、彼女は俺の小説を届ける途中で事故にあった。
俺のせいではなくても、俺だけ仕事から逃げるわけにはいかない。

そう心に誓っていも、物語が書けないのだ。締め切りは迫っている。
あぁ、空よ。こんな俺を助けてくれ・・。

俺は祈るようにもう一度空を見上げた。


すると、俺のすぐ後ろにある木から何かが飛び出し、俺の前へ転がった。

―――意味がわからない。

しかし、その意味が分からない状況に
『もし宇宙人だったら小説にかける』と考えてしまった自分が情けない。
どうやら、俺は、『仕事』という鎖が体の芯からへばりついているらしい。

そして、その“何か”は真っ黒く、ウゴウゴとしたゆっくりな動きでむくっと起きあがった。
どうやら人間らしい・・いや、人間らしい形をした“何か”らしい。
よく観察をすると、その“何か”は真っ黒い色をしているのではなく、真っ黒い服を着ていた。
頭には三角帽子。そしてすぐ隣にはほうき。

まるで魔女ではないか。
この辺りでは仮装パーティでもやっているのか?

不思議なことばかり。
疑問が耐えない俺に対して、更に想像力をためされるようなことを彼女は言った。
「いった〜い・・。着地失敗だぁ・・」
彼女は日本語をしゃべっていた。
とりあえず宇宙人でもなく、日本語を知らない外人でもないらしい。

でも、彼女は恥ずかしくないのだろうか?
ほうきを持っていて、『着地』とも言っている
この二点から見て、彼女は本気で魔女ごっこをしているのかもしれない。
おっと。ここで、笑ってはいけない。
俺だってその昔、鳥になって空を飛べないか?と実験したことがあるんだ。

――――五歳の時の話。

正直、彼女は五歳には見えなかった。
一声だったが、声の感じ、雰囲気からして、一七、十八ぐらいの学生に俺の年齢探知機能は捕らえていた。

そして彼女は帽子をかぶりなおし、こちらを向いた。

一瞬

俺は、彼女が住江であって欲しいと思ってしまった。
何をわけのわからないことを…。
人は死んで魔女になり、その魔女になった住江が俺にあいにきたというのか?

しかし、彼女は俺の予想通り、髪が茶色で少しチャラチャラした女子高生・・というオーラを出していた。


俺は疲れているのだろうか?
彼女はもうここにはいないのだ。


俺はそう自分に言い聞かせている間、どうやら彼女の方はこちらをずっと見ていたようだ。
ふと、俺が彼女をみると、彼女と目があった。
また“スランプ”とでも言われるのだろうか?
しかし、彼女はいつまで経っても話しかけてこない。
重苦しい雰囲気だったので、仕方なくこちらから話かけてみた。

「大丈夫か?」

俺の中で出した、最も一般的で適切な問いかけであった。
しかし、彼女は最も一般的ではない返答をしてきた。

「あなた・・人間?」

どうやら、頭を打っているらしい。
俺は立ち上がり、公園の出口にある公衆電話へと向かおうとした。
あいにく、話を考えるときは誰にも邪魔されたくないので、携帯は持ち歩いていない。

「待ってよ。おいていかないで。ここはどこ?」

彼女に袖を引っ張られた。

困る。朝・・・というより昼に食べた目玉焼きのしょうゆが染み込んだままのはずだ。
そして困った。彼女は頭を打っただけではなく、記憶喪失でもあるようだ。

「あなたは誰?」

こっちが聞きたい。

俺はその気持ちを押さえながら彼女に言った。

「俺は藤原敏行。君は?」

我ながら達者な演技である。

「私はナルシー・ミスト。
 トシユキ・・・?珍しい名前。ということはやっぱりここは地球?」

ナルシストだからナルシーなのか?
しかも、日本語をしゃべっているくせに、彼女はどこの国風でもない名前を言っている。
記憶喪失なのに名前は覚えている?
全くおかしな話だ。
しかも最後の言葉はおかしい。人をばかにしているのか?
俺はだんだんこのわけのわからない少女に対して、腹がたってきた。

「やばいっ!私、空間魔法唱えてたんだっ。やっちゃった・・・」

彼女はがっくり肩を落としていた。
が、俺はそれを聞いて彼女とは関わらないことが一番妥当だと判断した。
そうなれば、話は早い。
さっさとこの場から立ち去ろう。
そして、俺はブンッと、勢いよく腕をフリ、彼女を袖からフリ落とした。

「あっ・・・。」

彼女をその場に残し、俺は公園の出口へ歩き出した。

「私、ただ指輪を探していただけなんですっ!
 あのっ!私がここへ来ちゃったこと・・内緒にしていてくださいねっ!!トシアキ!!」

あぁ、言わないさ。言ったら俺が頭のおかしい人間だと思われる。

俺は心の中で聞こえるはずもない返事を彼女に返した。
そして、彼女は独り言を言っていた。

「私・・・指輪の元へって魔法かけたのに、どうしてこんなところ来ちゃったんだろ。
まぁ、いいや。もう戻らなきゃっ!」

彼女の独り言は、俺にも聞こえた。
本当に独り言なのか・・?

さっきまで苛立っていた俺は、小説家としての好奇心にかられ、後ろを振り向いた。
すると、そこには全身真っ黒いワンピースを着ている彼女がほうきをこちらにむけいたのだ。

何をするのか

驚きと好奇心が俺の足を止めていた。
彼女は言った。

「delete memory &・・・」

今度は英語だった。
そして、いつの間に書いたのか、トンっと地面に書いてある魔方陣らしきモノにほうきを押し当て、

「retern retern!!」

と、彼女は叫んだ。

もしかして本当に彼女は魔女だったのか・・?
と、いう仮説が俺の頭を過ぎった。
今更、そんなことを思った俺は小説家として、情けない。

ピカッと雷が落ちたように、辺りが光った。まぶしすぎて、思わず俺は目を閉じた。


ピーポーピーポー

気がつけば、俺の頭はその音で埋め尽くされていた。
目を開けると、歩いていたはずの俺はベンチに座っていて、彼女の姿などあとかたもなく
あの親子があるいているのが俺の視界に入った。

夢・・・?

そんな不思議な顔をしている俺の目の前を一人の学生が通りすぎた。
携帯電話で誰かとしゃべっている。
彼は、何か急ぎの用事か小走りだった。
「事故だよ!事故!そこでうちの学校の生徒が事故に死んだらしいぜ?」

事故・・・。

俺は、不思議な気持ちだったのに、その言葉をきいたとたん胸がムカムカしてきた。
自然と自分が苛立っているのがよくわかる。
そして、足は自然と立ち上がりその場から去ろうとしていた。

もう気分転換などどうでもいい。
疲れた・・・。そうだ、俺は疲れているんだ。
だから話も浮かばないんだ。

そんなことを考えていた俺だが、何故か耳はさっきの学生の会話を聞き取っていた。
これは一種の『癖』というものかもしれない。
彼はこう言っていた。
「それが、その女子、指輪を転がしちゃってそれを取ろうとしたら事故にあったらしいぜ?かわいそうだよなぁ。」

ドックン

俺の心臓が一回大きな鼓動を起こした。
何か背筋の下からゾクゾクとする感触。手には汗を握っていた。

あれは夢・・・?それとも・・・

俺は空を見上げた。


死んだモノはどこへいくのだろうか
魔女になるのだろうか

住江も魔女になって、今ごろ魔法を使っているのだろうか


空から答えはない。


全ては幻
全ては夢物語



そうだな
続きの物語は―――


俺はいつの間にか口元に笑みを浮かべていた。


―――俺が書くことにしよう



俺は空を見上げて思いついた。





End



****
あとがき

一次創作小説同盟で行っている企画の作品デスv
お題があって、「ふと、空を見上げてみた」から始めるんですよ〜☆

ってか、お恥ずかしい話、初めて短編っぽい短編、それと一人称で小説書きましたっ(笑)
ちゃんと、読みやすいのか、文がしっかりしているのか・・
とても心配ですが、こんな感じになりましたv

現代風なのに、少しファンタジーっぽいこんな話v
そんな話の主人公はスランプで悩んでいる小説家
彼は彼なりにちゃんと答えを出せた『夢物語』ですが、
満足していただけたでしょうか?

ここまで読んでいただきまして、ありがとうございますv

一次創作小説同盟
『魔法世界〜Wichtig Ding〜』をtopからみたいという人は下にあるアイコンからどうぞv

※もっと詳しく内容を読みたいって人は裏話でまたお会いしましょうv

それではv  by 鴫琉 智香

裏話
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