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幻の廃墟探険 〜西伊豆編〜
私がその存在を知ったのは、今から十余年ほど前、 大学に入学して間もない頃だったでしょうか…。
知り合いの漫画家さん夫婦が、某青年誌の企画で日本の名所(迷所?)案内と称して足を踏み入れた、西伊豆・松崎町にほど近い山奥の廃墟。
元々そこは温泉が出ることを当てこんで、ホテル・プール・オートキャンプ場等を備えた一大レジャーランドになるはずが、肝心の温泉が出ないことが土壇場で判明し計画は頓挫。以来、工事が中断されたままの状態で放置され、
知る人ぞ知る超絶ミステリースポットと化してしまった場所でした。
「いやぁ、とにかく奇っ怪なトコでさぁ〜」
後日、漫画家さん夫婦が開口一番にこう言いながら語ってくれた土産話によれば 、廃墟内の施設は恐ろしく悪趣味で、中でも極めつけがホテルを見下ろす位置に聳え立つ巨大な不動明王像! この大仏は胎内巡りができるようになっていて、そこには地獄と極楽の様子をリアルに表現した不気味な人形群が陳列されているのだとか。
「たとえ温泉が出て無事に経営に踏み切れていたとしても、あんなトコ誰も寄りつかないって、絶対」
お二人は散々こき下ろしてましたが、逆に私のモノ好き魂には火が点いてしまいました。 “み、見たい、その方向性が思いっきりズレたレジャーランドの跡とやらを、この目で確かめたい!”
…こうして同じ年の秋に、親友を一人巻き添えにして廃墟探険旅行を決行したのでした。
その日は朝から強い雨に見舞われていました。自動車の免許は持っていたものの、 悪天候の中山道を運転する自信のなかった私たちは、投宿先の松崎町から、
一日数本しかないバスを利用して目的地へ向かいました。バス停を降りて歩くこと数分、鬱蒼とした木々の間から見えてきました、
問題の巨大不動明王像が!
「うわ〜、本当にあったよ〜」
親友と二人で歓声をあげ、その大仏を目印にしながら急坂を降りていくと……

不動明王像:胎内巡りが楽しめます
当時はデジカメなんて便利なモノがなく、また私のカメラの腕自体が最悪なので、 場の雰囲気がうまく伝わっているかどうかちょっと心配ですが、どうです? この脱力感。
リアルを追求したものの製作者の腕が未熟だったせいか、えらく中途半端でショボイ存在になってしまった恐竜の滑り台や、 酸性雨で溶けた笑顔が痛々しい首だけ象さんの噴水。
普通のチビッコはまず喜びませんって。

恐竜の滑り台(顔が曲がってるゾ!)

あまり可愛くない象さんの噴水
ホテルの内部は材木や工具などが置きっ放しで、荒れるがままの状態。 そして真打・不動明王の胎内はと言うと…。 外の光線が届かない闇の中(雨の日なので余計に暗い)、懐中電灯を頼りに中を進んでいくと、居るわ居るわ、まるで生きてるかのような苦悶の表情で、
地獄絵図を表現する人形の群れが! 度胸にはソコソコ自信のある私と親友が、思わず逃げ出したくなったぐらい怖かったです。

ホテルとなるはずだった建物
(暗すぎて現像が危ぶまれるという理由もありましたが)こんな所で写真を撮ったら何が写るか分かったものじゃないし、長居でもした日には自分まで人形にされそうな気がして、内部の写真は撮らずに早々に引き揚げてしまいました。
“…しかし、一応レジャーランドにおける、この胎内巡りに一体どんな存在意義が…?” そんな疑問を残しながら、雨が小止みになってきた昼下がりに、かの地を後にしたのでした。
◇
この文章を読んで、件の廃墟を探索したくなった酔狂な方へ。 誠に残念なのですが、今では大仏も恐竜の滑り台も撤去され、ホテルの建物と鮎の養殖池と化したプールだけが残されているそうです。
(だから今回アップした写真は、とっても貴重なんですよ!)
敷地内には管理人さんが常駐していて、見学には許可をもらった方が良いとのこと。 また番犬も多く飼われていて、見知らぬ人間が入り込むと、 凄い剣幕で一斉に吠え立てるとか。
それでも行ってみたいという方は、上記の私のメアドまでご連絡下さい。 詳細をお知らせ致します(ちなみに、私が行った当時には管理人さんはいらっしゃらなかったのですが、
廃墟の持ち主の方に事前に連絡をして、ちゃんと見学の許可を取りました) 。
平成15年(2003)卯月の6日
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