
「爽やかなエロティシズム」に自縄自縛で、キーを打つ手が暫く動かなったのであった。で、これからは私の守備範囲の一つでもある「食うこと、作ること」についても、気の向くまま書こうと思う。ちょ、ちょっと、あなた、いきなりカーソルを「戻る」ボタンに持ってかないの! お下劣にならない程度に、あなたの好きなエッチな内容もちょっとは盛り込むからってば。で、スパゲッティである。まず、デュラム・セモリナのものを1人分100gぐらいづつ、太目のものを用意する。1.6〜1.8mmがよい。ペンネ・リガーテ等、マカロニみたいなのでもよいが、お楽しみが減る。パスタは透明がかった、健康的なイタリア娘の肌をイメージするものがよい。で、できるだけ大きい鍋に湯を沸かす。イタリア娘たちをお風呂に入れるのだ。
イタリア娘は非常に積極的である。私は学生時代、ロンドンのサマースクールに行かせてもらったことがある。今思えば何と贅沢なことか。英語を母国語としないヨーロッパの良家の子女の、夏の行事の定番である。世界公用語としての英語を学ぶため、夏休みを利用してロンドンに英語を勉強しに行くのだ。行く先はパブリックスクール。殆どが名門校である。夏の間、空室となる寮に寝泊まりし、英語を学ぶのだが、当然男子は男子寮、女子は女子寮に分宿である。でも、良家の子女とは言え、バカンスである。ロンドンの夏は結構涼しいのに、こーんな短いスカートを穿いた女の子や、こーんなパツパツの短パンを穿いた女の子や、おい、へそ出てるよ、肩紐落ちてるよ、透けてるよ、等々、特に南欧系の女子には、東洋のみに住んでいては一生味わえない、フェロモンの嵐を感じるのである。そんな若い男女の集団に、言葉の壁も、寮の壁も無く、私はイタリア娘達と懇意になり、誘われるまま夜の女子寮に忍び込み・・・という話しは、これだけでスパゲッティの話しでなくなってしまう。また別の機会ということで。で、小さいエピソードを一つ。寮生活、当然衣服を洗濯せねばならない。寮では週2回、袋に汚れ物を入れておくと、掃除婦のオバサンが洗濯をしてくれるのだが、ある夜、私は片方行方不明の靴下を捜索していた。と、廊下の端にランドリーバッグが転がっている。私はそれを手に凍り付いた。心臓だけ、ばくばくしている。中には、女子寮に行くべき内容物がたくさん詰まっていたのだ。周囲には誰もいない。監視カメラが無いか、思わずあたりを見回した。もう一度袋を覗き込む。世界各国の色鮮やかな花園が。フェロモンの出所を柔らかく包む薄布たちが。鼻血が出そうであった。だが、私の理性は私の欲望に勝った。というより、人の足音にどうすることも出来なかった、というのが真相である。廊下を近づいて来た男性教師に、"I found this bag. It'll be a big problem. Take it to the girls' house now." と説明した。かの若き教師は中をちらっと覗くと私にウィンクして、"OK."と言うと、そのままその宝袋を持ってすたすた行ってしまったのであった。「山分け」って、英語で何て言うんだろう、"mountain divide"かなぁ、などと、それだけ暫く考えていた。その後、女子寮で騒ぎがあったとは聞いていないので、彼の理性が勝ったのか、彼は小娘共のぱんつぶらじゃー如きでは劣情を催さなかったかのどちらかであろう。
で、思わず脱線したが、湯が沸く前にソースを作る。分量は2〜3人分見当である。
まずフライパンを火にかけ、オリーブ油から薄く煙が上がったら火を弱め、大蒜の香りを油に移すように軽く、じんわり炒める。大人だけが食するのであれば、ここで赤唐辛子も一緒に炒める。次に火を強め、玉葱と人参をぶち込み、一気に炒める。焦がさぬようよく混ぜる。もし肉っ気が欲しければ、ベーコンかウィンナソーセージを少々刻んでこれに足すが、無くともよい。玉葱が半透明になれば、随分水気も飛んでいる筈なので、赤でも白でもロゼでもワインを、無ければ日本酒でも料理酒でも、とにかく酒をぶち込む。フライパン内がひたひたになるぐらいに思い切って入れる。料理酒以外は必ず飲みながら入れる。そしてフランベ。キッチンの照明を落とし、フライパンを傾げ、アルコールを燃やす。傍らに恋人か愛人を呼び寄せ、仄かな青白い炎を眺めつつワインを飲る。もし恋人も愛人もいなければ・・・、古女房なら、呼ばない。一人で飲む。子供なら、科学の実験と称して燃焼の様子を観察させる。炎が落ち着いたら、トマト缶を汁ごとフライパンにいれ、適当にぐしゃぐしゃ潰す。トマトの果汁が飛ぶので、恋人や愛人の服に付着すれば脱がせる。自分も脱ぐ。そして火を弱め、黒胡椒、オレガノ、バジルを適当に加え、よく煮込むのだ。
- 玉葱半玉、微塵切り
- 大蒜3〜4片、包丁の腹で潰して粗刻み
- 人参1/3〜半本ぐらい(好みで)、すりおろし
- トマト缶、1缶
- プレーンヨーグルト少々、お好きなワインをお好きなだけ
- オリーブ油、バジル、オレガノ、パセリ、粗塩、赤唐辛子
さて、この頃には湯も沸いて来た頃だ。粗塩を、パスタ一人分につき一つまみ。親、人さし、中指の三本でぐっとつまむ程度でよい。精製塩は駄目。また、間違えても小匙がどうのと、とはやってはいけない。パスタを数本残してばらばらと入れ、湯に少しオリーブ油を垂らし、パスタ同志がくっつかぬよう回しつつ、吹きこぼれない程度に沸騰状態を保つ。フライパンのソースも時々よく返し、煮詰まって来ればその都度、パスタの茹で湯で割る。
ここで、お楽しみである。とは言っても、あまりエッチではない。これはマカロニではやれない。茹でずに取っておいたスパゲッティを、軽く鍋の下の炎で炙るのだ。すぐ焦げるし、すぐ燃えるが、決して焦ってはならない。イタリア娘の肌が、白いあられの如くになるよう、カリカリになるまで丁寧に炙る。これがまた旨いのだ。ポリポリやりながら、下着姿の恋人若しくは愛人とワインを楽しむ。二人でやればまさに火遊びの雰囲気が味わえる。どんなに二人がいいムードになっても、鍋のパスタとフライパンのソースを混ぜるのを忘れてはならない。古女房なら、呼ばない。一人で噛り一人で飲み一人でかき混ぜる。子供なら、科学の実験と称して燃焼の様子を観察させる。
トマトソースの仕上げに、プレーンヨーグルトを入れる。くすんだ赤が鮮やかな朱色になる程度に加減しつつ入れる。赤鉛筆の朱色をイメージして頂ければ良い。濃ければ茹で湯で調整し、粗塩を少しずつ入れ塩味を整える。ベーコン類が入っている場合は、その分の塩味も頭に入れて塩を振る。最後にアルデンテに揚がったパスタをフライパンに移し、パスタとソースがよく馴染めば、パセリの微塵切りを少々振り、皿に盛って出来上がりである。間違っても皿にパスタを盛ってからソースをかけてはならない。
しかし、あのランドリーバッグ、惜しかった。