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宮部みゆき




著者 宮部みゆき 書名 パーフェクト・ブルー 出版社 創元推理文庫 評価 ★★★☆
感想

本書の主人公はなんと犬。物語のほとんどが探偵事務所で飼われている元警察犬・マサの一人称で語られていくという一風変わったスタイルの作品である。

ユニークな語り口とはうって変わって、高校野球のスーパースターが焼死体で発見され、その事件の裏に製薬会社の投薬実験が絡んでいるという結構ヘヴィーな内容。事件は意外な、そして哀しい結末を迎えるが、ラスト数ページのエピローグで希望を持った終わり方をしているのが著者らしい。

犬を語り手にさせることで人間社会の諸問題・矛盾を犬の視点から指摘していく著者の試みは見事に成功しているように思う。



著者 宮部みゆき 書名 魔術はささやく 出版社 新潮文庫 評価 ★★★★☆
感想

本書は3人の女性の自殺の謎をめぐる物語であるが、本当の物語は謎が解き明かされた後から始まるように思う。事件が一応の区切りをつけた後、主人公の高校生・守が迫られる決断。これが本書の最も大きな山場になるんじゃないかな。読後感爽やかな作品。



著者 宮部みゆき 書名 我らが隣人の犯罪 出版社 文春文庫 評価 ★★★
感想

全5編の短編集。収録作で個人的に好きなのは『この子誰の子』と『サボテンの花』。どちらもちょっとホロリとさせられる話。

見知らぬ女性がいきなり訪ねてくる『この子誰の子』や自分を殺してくれと頼む男が登場する『気分は自殺志願』の冒頭など読者を物語に引きつけるのが上手い。短編は導入部分が重要だと感じる作品。



著者 宮部みゆき 書名 東京下町殺人暮色 出版社 光文社文庫 評価 ★★★
感想

主人公は刑事を父に持つ中学生・八木沢順。ある日、彼が住む東京の下町でバラバラ殺人事件が起きるという結構陰惨なストーリー。

作中で順の父・道雄が「想像力が欠けている少年が殺人を犯す」と語るシーンがあるが、その通りかもしれない。少年に限らず、罪を犯した後で相手や周囲がどうなるのかという想像が出来ない人間が増えてきているように思う。



著者 宮部みゆき 書名 レベル7 出版社 新潮文庫 評価 ★★★★
感想

前半は、記憶を失って目覚めた男女が自分たちが何者かを調べていく話と失踪した女子高生の行方を捜すカウンセラーの話が並行して描かれる。記憶喪失の男女と行方不明の女子高生に共通するキーワード「レベル7」。ふたつの物語は次第に交錯していき、「レベル7」の言葉の意味が明らかにされていく。

記憶喪失や失踪者の捜索というのはミステリーにはありがちなテーマだが、それを一本の線に結びつけた手腕はお見事。



著者 宮部みゆき 書名 龍は眠る 出版社 新潮文庫 評価 ★★★★☆
感想

他人にはない能力(超能力)を持ってしまった者の苦しみを描いた好作。僕はテレビで見る超能力ってあんまり信用してないんだけど、この作品に出てくる超能力者には素直に感情移入できた。特殊な力を持つことのマイナス面をちゃんと描いているからかな。



著者 宮部みゆき 書名 本所深川ふしぎ草紙 出版社 新潮文庫 評価 ★★☆
感想

著者はミステリーだけでなく、時代小説も多く書いている。これはそのひとつ。本所深川の七不思議を題材にした全7編の短編集。『馬鹿囃子』に出てくる「あんただって馬鹿囃子じゃないか」というセリフが鋭く深い。



著者 宮部みゆき 書名 返事はいらない 出版社 新潮文庫 評価 ★★★
感想

全6編の短編集。

「どうしようもないことはあるのだよ。生まれたときからついてまわる、読みにくい、珍しい名字のように。」(収録作『聞こえていますか』より)。

この例えは身にしみてよく分かる、ホント。それはそれとして「どうしようもないこと」の例えにこういうことを挙げる著者の発想が面白い。



著者 宮部みゆき 書名 かまいたち 出版社 新潮文庫 評価 ★★☆
感想

全4編の短編時代小説集。『迷い鳩』『騒ぐ刀』の連作で人に見えないものが見えてしまう能力を持った少女・お初が登場する。『龍は眠る』といい、著者はこういう超能力ものが好きなのかな。個人的に好きなのは『師走の客』。ご都合主義といわれようと後味良く終わらせてくれる作品の方が僕は好き。



著者 宮部みゆき 書名 今夜は眠れない 出版社 中公文庫 評価 ★★
感想

本書の主人公は中学生の緒方雅男。彼の母親にある男から昔の恩返しという理由で突然5億円の遺贈の話が持ち上がる。これをきっかけに両親の離婚危機、周囲からの嫌がらせ、マスコミの執拗な取材攻勢など様々なトラブルが彼の家族を襲う。確かに一般家庭に5億円ものお金が突如降って湧いたら騒動になるのは間違いない。お金って怖い。母親に5億円の遺贈がなされるのは単に昔の恩を返すためだけなのだろうか。疑問を感じた雅男は本当の理由を探るため、切れ者の親友・島崎と共に真相究明に乗り出す。しかし、事態は雅男も読者も思わぬ方向へ転がっていく。

ラストには遺贈の真の目的が明かされるが、少々手が込みすぎている気がするなぁ。ここまでするのは現実離れし過ぎのようにも思うけど。

ちなみに本書のページの左下にはパラパラマンガが収録されている。これが真相究明のヒントになっている………………わけではない。



著者 宮部みゆき 書名 スナーク狩り 出版社 光文社文庫 評価 ★★★☆
感想

本書はひとりの女性が元恋人の結婚式にショットガンを持って現れるという冒頭から始まる。こんなシーンから書かれたら続きが気になるのは当然。出だしの吸引力は今まで読んだ宮部作品の中で一、二を争うんじゃないかな。

タイトルの「スナーク」とはルイス・キャロルの詩に出てくる正体不明の怪物のことらしい。読後に「なるほど」と思わせてくれる。



著者 宮部みゆき 書名 火車 出版社 新潮文庫 評価 ★★★★★
感想

傑作。物語の中心となる人物をラストまで登場させないという大胆な試みを見事に成功させた作品。物語後半はページをめくるのももどかしいぐらいだった。



著者 宮部みゆき 書名 長い長い殺人 出版社 光文社文庫 評価 ★★★☆
感想

本書で注目すべき点は財布が物語の語り手であるということ。著者の作品『パーフェクト・ブルー』では犬が語り手であったが、それを上回る設定である。刑事の財布、目撃者の財布、死者の財布といった事件に関係する人物の財布が入れ替わり立ち替わりに物語を進行させていく。もちろん語り手が財布ということでそれなりの制約を受ける。財布が勝手に動き回ることはできないし、バックやポケットに入れられている場合は外の様子を見ることはできない(この場合は音や会話などで察する)。こうした多くの制約の中で物語を描いた著者の技量はお見事と言うしかない。

事件の方は陰惨な展開を見せるが、最後にちらりと希望を持った終わり方をしているのがいかにも著者らしい。



著者 宮部みゆき 書名 とり残されて 出版社 文春文庫 評価 ★★★
感想

全7編の短編集。どの話も超常現象、もしくはそれに類するものをテーマにしており他の短編集に比べると異色な作品集。



著者 宮部みゆき 書名 ステップファザー・ステップ 出版社 講談社文庫 評価 ★★☆
感想

全7編の連作短編集。プロの泥棒と中学生の双子の兄弟がひとつ屋根の下で暮らすというコメディ・クライム調の作品。軽い話が多く、短編ということもあってスラスラ読めた。



著者 宮部みゆき 書名 震える岩 出版社 講談社文庫 評価 ★★☆
感想

『かまいたち』で登場した不思議な力を持つ少女・お初を主人公にした時代小説。著者の時代小説としては初の長編(多分)で、短編よりもかなり凝った造りになっている。忠臣蔵に対する著者の新解釈もあり。



著者 宮部みゆき 書名 淋しい狩人 出版社 新潮文庫 評価 ★★★
感想

全6編の連作短編集。いずれも本をめぐる事件を描いたユニークな趣向の作品集。しかし、内容はどちらかというと重め。

児童虐待を扱った『うそつき喇叭』の読後には何ともやり切れない感じが残った。最近の幼児虐待に関する記事などを読んでいると現実にこういうことがあってもおかしくはない。イヤな世の中だなぁ。



著者 宮部みゆき 書名 地下街の雨 出版社 集英社文庫 評価 ★★★★
感想

全体的にホラーっぽい展開の話が多い短編集。特に人間の持つ心の暗部を扱った『ムクロバラ』にはゾクリとした。また、一家心中の疑いのある事件の真相を関係者の話だけで描く『不文律』の試みも面白い。



著者 宮部みゆき 書名 幻色江戸ごよみ 出版社 新潮文庫 評価 ★★★
感想

怪異を題材にした全12編の短編時代小説集。どの作品も好編といえる。特に『庄助の夜着』が哀しくて良し。ホント上手いよなぁ、この人は。



著者 宮部みゆき 書名 夢にも思わない 出版社 中公文庫 評価 ★★☆
感想

『今夜は眠れない』に登場した中学生コンビ・雅男と島崎がクラスメイト・クドウさんの従姉が殺された事件を調査する。雅男の軽妙な語り口とは裏腹に事件の背後には少女売春組織があったりしてなかなか重い話。

作中で病んだ心が生む輪郭のない犯罪について述べている箇所があるけどホントそうだよなぁ。もちろん輪郭がある犯罪ならいいというわけではないけど、実体のつかめない幻のような犯罪の方がはるかに怖いと思う。

ラストの雅男とクドウさんの会話が哀しい。