作家略歴・代表作

伊井直行(いい・なおゆき)

1953(昭和28)年、宮崎県延岡市生まれ。慶応義塾大学文学部史学科卒業1983年『草のかんむり』第26回群像新人文学賞を受賞
1983年『パパの伝説』第91回芥川賞最終候補作
1989年『さして重要でない一日』第11回野間文芸新人賞・芥川賞候補
1994年『進化の時計』で第22回平林たい子文学賞・小説部門を受賞。作品はほかに『湯微島訪問記』など。

 


「濁った激流にかかる橋」

「服部さんの幸福な1日」以来の作品。
服部さんも好きだったけどこれも負けず劣らずはまる。
最初から最後まで難解で、さらりとなんて絶対に読みこなせない。
今回も家事の合間にちょっと読み出した時には1ページで挫折。
頭を空にして入りこまないとこの世界には入っていけない。

「濁った激流にかかる橋」は8つの連作短編集である。
巨大な川にかかる1本の橋は、繰り返しの増水により改良を重ねられ
右岸と左岸を結んではいるがまったく秩序のない複雑な橋になってしまっている。
この橋にまつわる人たちのこれまた一人よがりの世界が重なって小説の混沌は
とどまることを知らない。

それぞれの短編の人物たちが、違う短編で違う形で登場してくる。
これの結びつきを追っていくうちに、私はどんどん橋の深みにはまって出れなくなって
何度も繰り返し「濁った激流にかかる橋」を読んでいくことになった。
実はいまだに理解できず出れてない..

2001.8.26 図書館

「服部さんの幸福な日」新潮社 2000/1刊

「服部さんの幸福な日」は新刊にもかかわらず人気がないようで棚にあった。
私も予約しないでいたんだから言えはしないけど、これは満足の1冊でした。
(でも同じ意見の人はまわりにいないと思う)

はじめに主人公服部さんが飛行機が墜落する瞬間から始まる。
服部さんは急降下する中失神したいのに失神できないまま海の上に墜落してしまう。
が、運良く助かってしまうのだ。
そしてもう一人服部さんの隣に座った運のいい高木が生き残る。
二人は漂流して、目隠しで歓迎されるような不親切なクルーザーに助けられて、 その後漁船に移らされ無事に奇蹟の生還をはたすが、その後高木や自分のまわりで 不可解なことが起こり始め、財界の元秘書が服部さんを聞きまわっているという。
自分に何のつながりが?服部さんはいったいどうなるのか?

これはミステリーでもなくて、サラリーマンのくせに愛人までいる服部さんをめぐる話なんだけど、 この典型的サラリーマンの服部さんがなんだかすごく普通でいいの。
小説としては何がいいのかわからないし、これは人にすすめてもあんまりおもしろくないと言われそうだから 薦めはしないけれど、その辺のミステリーより最後までどうなるかわからなくて私は拾いものをした気がする。
それと日本なら、赤の他人でも間に7人はいれば繋がりができるんだと書いてあるけど本当かな、ちょっと気になる。

2000.3.22 公民館本