作家略歴・代表作 桐生典子(きりゅう・のりこ)

1956年新潟県生まれ。青山学院大学仏文科卒業。
1996年「わたしのからだ」で作家デビュー

「閃光」「やわらかな針」

「やわらかな針1998年10月刊

帯「家事時間に浮かぶのは日常に浮かぶ黒い闇」
家事につながる心理ホラー8作品。
◆緑の手◆白桃◆ブイヤベース◆洗う女◆いちごの蜜◆賞味期限まで◆遠い泣き声◆やわらかな針
「やわらかな針」
8年前の大学生時代にバンドの手伝いから、武に惹かれつづけてきた万里子。
その武が突然悪性の腫瘍病気をもっているかほりと結婚するという。
病気をたてに結婚を迫った女を憎いとおもいつつ結婚披露パーティに手作りのドレスを着ていった万里子はまったく同じドレスを作ってほしいと愛する男の妻かほりに頼まれ承諾してしまう。
一緒に布を選びに行き、売っていた蚕を無邪気に手にとりながらかほりはこれでドレスの裾をまつって欲しいと頼む。
この世からかほりがいなくなることがわかっているから嫉妬心を我慢してドレスを作り続ける万里子。
そして仮縫いのドレスをができあがり試着させた時に誤って針をさしてしまう。
怒り出して蚕のように武を愛する気持ちが自閉されたまま殺されるんだと嘲笑うかほりに万里子は我慢できず−

唯一書き下ろし作品。嫉妬心を心に秘めて、なにひとつ文句は言わせないようにと丁寧に仕上げる女心。
夫を愛する女がいるのを知りながら死ななくてはならない女の恐怖心。
蚕が作りだすシルクの布をベースに、せつない想いにつつまれていく。

「緑の手」
表紙にもなっている蘭の花は「緑の手」から。
”わたしがわたしを繁殖させたい。そしてわたしという鉢の中でもあなたを無尽に繁殖させたい”
緑の手と呼ばれるほど、植物の上手に育てる従兄弟の公子。
公子のまわりに集まれば、仕事もうまくいくと言われる。
遺産でマンションを相続し居住空間をゆったりとした緑で囲み、園芸は家事にひとつだと言う。
緑が生長してくると家族の心もおだやかになると。
そんな話をきく主人公の比沙美は植物をうまく育てられず不倫の恋にも破れ疲れていたが、新しい恋の成就とともに公子からもらった鉢植えもよみがえってきた。
公子夫婦の家に新しい恋人を連れて行くと新しい蘭の花を公子はくれ、蘭という花は特定の昆虫に合わせた花粉魂をつけているが、その特定の昆虫があらわれない場合は、他の昆虫用に形を買える。
みずからをもっと繁殖させたいという公子は、ある提案を比沙美にもちかける。
官能の心理ホラー
2000.4.11 図書館C


「わたしのからだ」  情報センター出版局 1996年6月刊 

小川洋子・魚住陽子が好きな人にはおすすめの作品。
 作者のプロフィールより、体の各器官に興味をもっているのが伺える。 
体と精神のバランスがとれてるのが、”心身共に健康な体”といえるように、 だんだんと自分で、調整がきかなくなった体を考えてみて思う。 
自分の各器官を、甘く見てると痛い目にあう。 
この本は人間の体を題材にした短編が入っている。 
精神と肉体が分離したり、髪が生きてたり、脳の作用で透視能力ができたりと ホラーなんだけど、そうかもしれないと納得してしまったりする。
 中でも好きな作品が『アクアリウム ベイビー』
 人類が進化し、肉体を持たなくなった21世紀。 子供は、精神が独立した時に分離するようになっている。 熱帯魚飼育のように、人工ケースで胎児飼育がはやりだす。 280日の飼育期間ではあるが、必ずそこまでは育たず途中で枯れてしまう。 
受精から、7ヶ月くらいまでの胎児を育てる高価な遊びである。
 心臓などの器官の関係で最後までは育たないということだが...。
 主人公はこのペットを熱心に育て、とてもかわいい胎児に成長させ、 なぜ途中でペットが枯れてしまうのか?肉体を持つということは どんなに素晴らしいのかを発見して、ついにあることに挑戦する。
1999.5.18 図書館本