チョコレートナイト


 念願のチョコレートナイトを手に入れた。
 これは創土社から出ているゲームブックである。
 「ファジィ族」と呼ばれる猫に似た妖精が、冒険をするというストーリーである。

 ゲームブックは普通の小説とは違う点がある。
 普通の小説は、主人公の五感を通して、読者が最も楽しめる筋道を作者が表現する。
 しかしゲームブックは、主人公の五感を通して話が展開するところまでは小説と一緒だが、主人公と読者の距離がもう少し近いものになっている。ストーリーの中で読者は主人公のように、自分の行動を選択することができる。小説の表現力に加えて、過程や結果の変化を楽しむ。これがゲームブックの醍醐味である。
 1990年ぐらいまでゲームブックは出版されていた。だがそれ以降はほとんど出版されなくなってしまう。衰退した理由は何か。私はビデオゲーム機に客層を奪われてしまったのだろうと考えている。折りしもバブル期に最後あたりのころ、まだ子どもの小遣いが豊富にあったころである。

 チョコレートナイトは、およそ10年ぶりに出版されたゲームブックである。
 まず発行者の前書きがある。そのあと、普通のゲームブックならば当然存在するルールが省かれて、いきなり本文に突入する。本文の中に必要なとき、簡単なルールを提示するというスタイルだ。
 また、普通のゲームブックならば当然用意されている専用の冒険記録紙がない。筆記用具とメモ用紙を用意してくれと書かれているだけである。そう、チョコレートナイトは、初心者向けのゲームブックなのだ。

 鈴木作品はコンピュータRPGの良いところを取り入れた作品だと言われている。そして日本の作家の多くは、そういうスタイルに少なからず影響を受けていると思う。チョコレートナイトではアルファベットと数字でフラグ(イベントの開始条件)を立てている。いつ使うかわからないような能力値の類は全く使用していない。

 この作品がいつ書かれたものであるかはわからない。10年前に発表されるはずのものだったのかもしれない。ともかく鈴木氏が狙っていたことは、初心者の開拓であり、いわば原点に立って、ゲームブックの長所を大いにアピールしているのである。私はチョコレートナイトを高く評価する。ひょっとしたら、ゲームブック熱は再燃するかもしれない。


期待しているだけに、アンケートはがきを入れて欲しかった……。
(2002年1月1日)


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