ゲームブックのバックアップ


 前回のコラムでは、ゲームブックの限界と弱点を書いた。ゲームブックが本である以上、本としての制約が課せられてしまう。本は両手で支えなければならず、万が一手から落としてしまったら強制終了になってしまう。製作者側から何かバックアップする方法はないかということが、今回の主題である。


 パソコンやゲーム機で遊ぶ時に、人間は自分の位置を固定すると以前書いた。ゲームブックを遊ぶ時においても、机上で本を開くのであれば、メモもとりやすい。集中できるか環境であるといえる。これは読者が行う最良の工夫の一つである。
 この他によい方法はないものか。製作者側から何か工夫できないか、考えてみるのも悪くはないだろう。

・読者に、パラグラフの番号をメモさせる。
 この方法はいくつかのゲームブックによってすでに行われている。本を落としても項目の番号・数字がメモされていればたちどころに元に戻れるというわけだ。この方法の弱点はメモの回数が多く、だんだんと面倒になってしまうことだろう。

・ゲームブックを区切る
 例えばゲームブックの内容を四章立てて区切ってしまい、章の最初に目印をつけておけば、コンピュータRPGにおけるセーブポイントのような役割を果たすだろう。強制終了になっても章の最初に戻れば、最初からゲームをやり直す面倒さは幾分なくなるであろう。
 しかし、このやり方はゲームにおける緊張感が失われてしまう危険性がある。間違って未読の章の最初を読んでしまった時、ネタバレになってしまう。

・イラストを多用する。(その一)
 イラストが描かれている項目は、読者の印象を惹きつける。強制終了時に読者のほうから、最後に見たイラストを辿って再開することを期待する。これは読者の記憶をあてにする方法である。イラストが多ければ、ゲームブック自体に興味を持ってもらうきっかけにもなる。
 ただし、イラストレーターの負担は大きくなるだろう。

・イラストを多用する。(その二)
使用するイラストを使いまわせることができれば、イラストレーターの負担は減るだろう。工夫すればできるのである。
もったいぶらずに単刀直入に書こう。キャラクターの顔イラストを組み合わせるのである。ある場面に主人公A、相棒B、敵Cがそろう場面では、ABCの顔イラストをそれぞれ配置する。表情のパターンをいくつか作っておけば、場面描写にも役に立つし、別の場面でABCがそろった時も顔パターンの組み合わせで表現すれば記憶に違いが出てくる。
ただし印象の面から言えば、一枚絵のほうが大きいだろう。

・イラストを多用する。(その三)
 その一で取り上げた一枚絵の応用である。イラストの中でパズル、謎解き、迷路をやってもらう。従来の情景イラストでは、未読の部分を垣間見てしまうことがある。一目して理解できないパズルイラストなら、この危険性はない。また項目数を圧縮することができるだろう。鈴木直人氏の作品や、ドラゴンファンタジーシリーズでその有用性はすでに証明されている。

・特殊なシステムを使用する。
 普通のゲームブックは、展開を変化させることができる小説、というような構成である。「○○へ進め」「話し掛けてみるなら○○へ、無視して通り過ぎるなら××へ進め」という指示によって項目がつながっている。しかしこのような構成でないゲームブックも存在する。シャーロックホームズシリーズがそうである。小説というより、ボードゲームに近い。
 プレイヤーは19世紀ロンドンの探偵である。事件のイントロダクションや新聞を読み、興味を持った人物、会社などを住所録で調べる。住所録には項目番号が書いてあり、そこに行けば調査する、というわけだ。事件のイントロダクションや新聞は判断材料であり、住所録は行動決定である。普通のゲームブックでは一緒になっている部分が、それぞれ分離しているのだ。
 ついでに書くと、シャーロックホームズシリーズでは、読者の意思で捜査を終了し、最後にホームズからいくつかの質問を受けることになる。質問を受けてから再捜査はできない。どの程度答えられたかで得点がきまり、達成度、理解度が点数によって示されるというわけである。最後はホームズによる事件の解説が載っている。このやり方は強制終了に対して再出発が簡単であると言う点で見習うべきところが多い。研究しがいのある素材である。地図と時刻表で遊ぶゲームブックなんてどうだろうか。
 ただし時間が進むと新しい判断材料と行動決定が必要になってくるまた判断材料の中には、読者を迷わせる材料を入れる必要があるため、分量が大きくなってしまう。電車の中で気軽に、という方法は望めないだろう。

・本を使わない。
 本を落とすと閉じてしまうから使わない。
 真ん中をリングで閉じたノートブックがあるが、ああいう形状ならば落としても閉じることはないだろう。
私 は高校生のころ、単語帳でゲームブックを作ろうとしたことがある。手のひらにすっぽり入って、表に英字のスペルを、裏に日本語で意味を書くあの単語帳だ。さすがに単語帳では容量が少なくて途中で断念したが、アイテムを手に入れたときのマーキングが簡単だということに気がついた。90度ずらすのだ。いちいち書かなくてもいい。手のひらサイズより大きいものならば、ある程度の分量も確保できる。
 ただしページ数が多いと分厚すぎて、快適に楽しめるとはいえないだろう。
 余談だが、トレーディングカードゲームが流行したとき、カードでゲームブックができないか考えたことがある。アイデアだけはいくつか出るがそのうち飽きてしまった。こういうものは通信機能のついた携帯ゲーム機のほうが向いているかもしれない。


 ゲームブックのバックアップ方法についていくつか提案した。また思いついたら、追加する予定である。
 次の課題は未定なので、これでいったん終了とする。ここまで付き合ってくれたことに感謝する。ありがとう。

2002年1月15日


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