消費サイクル


 日本にはじめてゲームブックが紹介されたのは、1984年のことだった。
 ブームは4年ほど続いたと思う。1990年代になると発行数は激減した。売れなくなったのだ。
 私はこの原因を、家庭用ゲーム機との戦争に敗れたのだと思っている。もちろんこれだけが原因ではないが、今回のコラムは家庭用ゲーム機との競争に絞って展開していこうと思っている。

 昔は、ゲームブックと家庭用ゲーム機は共生していた。もっと詳しくいうならば、棲み分けができていた。
 ゲームブックと家庭用ゲーム機の魅力はそれぞれ違っていて、競争する要因はなかった(ちょっとはあったかもしれない)。私は今でもそう思っている。

 当時の家庭用ゲーム機のソフトの値段は今のゲームソフトとそんなに変わらない。6000円としておこう。
 一方のゲームブックは、600円。まあ10分の1の値段だ。
 小学生から中学生にかけてのこづかいの金額から考えると、家庭用ゲーム機のソフトを買うことはなかなかできないことだ。ところがゲームブックなら月に何冊か買えてしまう。この安さは、ゲームブックが面白い面白くないにかかわらず子どもにとって魅力的だった。ゲームブックのブームの主要な原因ではないかと、私は思っている。

 ゲームソフト制作会社はソフトを安売りするつもりはなかった。ところがこれに敢然と立ち向かう動きが起こった。中古ソフト販売業者である。家にあるいらないゲームを中古ソフト販売業者に持っていけばこづかいが増える。ゲームソフト制作会社に利益がまわらない。これではゲーム業界の発展にならないとして、裁判沙汰にもなっている。

 この中古ソフト販売が是か非かは別として、子どもたちは賢くなっていた。なんと最新作のソフトを売るようになっていたのだ。
 「最新作のソフトを買う→早解きをする→最新作の値段が高い時に売る→そのお金と、こづかい1000円をたして、また別の最新のソフトを買う」
 というサイクルで、次々とゲームを購入していったのである。

 この消費サイクルは、他のゲーム業界や玩具に大打撃を与えた。こういっては何だが、子どもたちは家庭用ゲーム機のソフトにしか、お金を落とさなくなったのだ。特にロールプレイングゲームは、時代の潮流に適合した。ロールプレイングゲームは他のゲームに比べて特に優れているというわけではない。日本のロールプレイングゲームによく見られる、ほぼ一直線のストーリーが早解きに向いていたのだ。

 なんとも不思議な話である。中古ソフト販売業者が、ゲーム業界における家庭用ゲーム機のシェアを飛躍的に上げたのだ。日本のゲーム業界に参入する者は、この消費サイクルを無視してはならない。
 2001年12月、ゲームブックは約10年ぶりに新刊が出版された。当時の支持層は小学生以上であったが、その手法がそのまま通じるかといえば疑問である。しかし最初からこの問題に目を向けてあきらめないで取り組めば、何か打開策が必ず見つかるはずだ。私はそう信じている。


(2002年3月2日)


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